吉祥寺おおさき内科・脳神経内科 院長
大﨑 雅央
東京大学医学部卒神経内科専門医総合内科専門医
プロフィール
60秒でわかるパーキンソン病の初期症状
パーキンソン病の初期症状は、手のふるえや動作の遅さだけではありません。匂いがしない(嗅覚低下)、慢性的な便秘、睡眠中の異常行動(レム睡眠行動障害:RBD)など、動き以外の変化が何年も前から現れることがあります。
嗅覚低下、便秘、寝言、ふるえは、どれも単独ではよくある症状です。大切なのは、いつから続いているか、複数の変化が重なっているか、ご本人やご家族が生活の変化に気づいているかを一緒に確認することです。
院長・神経内科専門医 大﨑 雅央
パーキンソン病の初期症状:受診の目安
結論複数当てはまる、日常生活に影響する、睡眠中にけががある場合は受診を考える目安です。以下はセルフチェックの目安で、1つ当てはまるだけでパーキンソン病と決まるわけではありません。
嗅覚低下、便秘、睡眠中の大きな寝言や動き、ふるえ、歩幅の変化などは、いずれも単独ではよくある症状です。ただし、複数のチェックが重なるほど、初期のサインとして注意して見る必要があります。
| 項目 | こんなとき注意 | 目安の強さ | チェック |
|---|---|---|---|
| 匂いがしない/弱い | 数年以上続く・両鼻・風邪や鼻づまりがない | 強い | □ |
| 便秘が続く | 週3回未満・硬く出にくい・いきむ/腹部不快 | 中 | □ |
| 睡眠中の大きな声や激しい動き | 寝言・叫び声・手足をバタバタさせる・ベッドから落ちる、睡眠中の受傷や同室者の被害がある | とても強い | □ |
| 手のふるえが軽く出る | じっとしている時/道具を使う時のどちらかに出る | 中 | □ |
| 片方の腕の振りが減る・歩幅が小さい | 動画で以前と比べて、腕の振り、歩幅、左右差に変化がある | 中 | □ |
| 字が小さくなる/声が小さい | 家族からの指摘が増えた | 中 | □ |
| 立ちくらみ・尿の悩み | ふらつく・失神しそう・夜間頻尿 | 中 | □ |
詳しく読む(チェックの考え方)
チェックが複数重なる場合、初期のサインの可能性が高まります。ただし、鼻の病気、薬の影響、甲状腺の病気、加齢変化などでも似た症状は起こるため、診察で一つずつ確認します。
まとめ複数のチェックが重なるほど初期のサインの可能性が高まります。
パーキンソン病の初期症状:家族ができる観察のコツ
結論動画・記録・同じ条件で変化を見ると、診察で状況を伝えやすくなります。ご本人が気づきにくい歩き方や睡眠中の動きは、ご家族の観察が大切な手がかりになります。
- 歩行の様子を動画で記録します。腕の振り、歩幅、左右差がわかるように、普段どおり歩いている様子を撮ります。
- 寝室の安全対策を行い、睡眠中の行動をメモします。日時、内容、けがの有無、同室者への影響を書いておくと診察に役立ちます。
- 便通をカレンダーで見えるようにします。回数、便の硬さ、薬の有無を簡単に残します。
- 嗅覚は同じ物で月1回チェックします。コーヒー豆、石けん、オレンジ皮など、毎回同じ条件で確認します。
詳しく読む(受診時に持参するとよいもの)
- 歩き方やふるえの動画
- 睡眠中の大きな寝言や動きのメモ
- 便通カレンダー
- お薬手帳
- 他院の検査結果
まとめ動画・記録・同じ条件で変化を追うと、診察に役立ちます。
パーキンソン病の初期に出やすいサイン
結論レム睡眠行動障害、においの低下、便秘、DAT-SPECTの変化などは、前駆期の手がかりになります。ただし、単独で診断が決まるわけではなく、症状の組み合わせと診察が重要です。267
症状がはっきり出る前の「前駆期」から、いくつかの手がかりが集まると将来の発症リスクを見積もることができます。専門的には尤度比という指標を使いますが、ここでは分かりやすく強さで示します。2
詳しく読む(DAT-SPECTの注意点)
DAT-SPECTはIoflupane(123I)SPECT(DaTSCAN)とも呼ばれます。保険適用、検査の必要性、読影は医師にご相談ください。検査だけで診断を決めるものではなく、診察所見や経過と合わせて判断します。
まとめRBD・嗅覚低下・DAT-SPECT異常など強い手がかりが重なるほど、将来の発症リスクを考える材料になります。
Braak仮説とBody-first/Brain-firstの考え方(どこから病気が始まるの?)
結論αシヌクレインというタンパク質が神経細胞にたまり、神経の回路に沿って広がるという考え方があります。最近は、腸管・自律神経から始まるBody-firstと、脳から始まるBrain-firstという2つの見方も提案されています。1213
パーキンソン病では、神経細胞の中にαシヌクレインというタンパク質がたまり(レビー病理)、神経の回路に沿って広がっていくと考えられています。その出発点についての考え方は、研究の進展とともに変わってきました。
詳しく読む(Braak仮説と2つのスタート地点)
① 以前の主流:Braak(ブラーク)仮説
2003年、Braakらは、においの回路(嗅球)や迷走神経の核(延髄)から変化が始まり、下から上へ脳の広い範囲へ進むという段階説を提案しました。ただし、その後の研究で、すべての人がこの順番に当てはまるわけではないことも示されています。121415
② 最近の考え:Body-first と Brain-first
Brain-first(脳から下行)では、嗅球や扁桃体(鼻から入るにおいの経路など)で先に変化が始まり、そこから体の自律神経へ広がると考えられます。Body-first(腸管・自律神経から上行)では、腸・自律神経(迷走神経など)から始まり、のちに脳へ登っていくと考えられます。1613
まとめ出発点が「体」か「脳」かで、早期の症状(RBD・便秘・嗅覚低下など)の出方に違いが見られるという最新の見方です。
匂いがしない(嗅覚低下)の見方とよくある原因
結論匂いがしないときは、まず鼻の病気やウイルス感染がないかを確認します。鼻症状が乏しい持続する嗅覚低下に、便秘やRBDなどが重なる場合は脳神経内科での相談が目安です。81819
匂いがしないと感じたら、まずは鼻の病気やウイルス感染(副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、感冒、COVID-19など)がないか確認します。一方で、パーキンソン病の初期サインとして嗅覚低下が目立つことがあるため、鼻の原因が乏しく、便秘やレム睡眠行動障害など他のサインが重なる場合は脳神経内科での相談をおすすめします。
| 原因 | 特徴 | まずの受診先 |
|---|---|---|
| 副鼻腔炎・鼻ポリープ/アレルギー | 鼻づまり・鼻水・においの通りが悪い | 耳鼻科 |
| ウイルス感染(感冒・COVID-19など) | 急に匂いがしない/味が薄い | 内科・耳鼻科 |
| パーキンソン病の初期 | 鼻症状が少ないのに匂いが弱い/長く続く | 脳神経内科 |
| 頭部外傷後 | 事故や転倒の後から匂い低下 | 耳鼻科・脳神経外科・脳神経内科 |
詳しく読む(家庭での嗅覚チェック)
家庭では、同じ香り(コーヒー豆、石けん、オレンジ皮など)で月1回、左右の鼻を別々に確認します。毎回違う香りを使うと比較しにくいため、同じ条件で記録することが大切です。
まとめ鼻の病気が主因かをまず確認し、鼻症状が乏しい持続する嗅覚低下は脳神経内科へご相談ください。
手のふるえ(振戦)の原因と見分け方
結論ふるえは、安静時か動作時か、左右差があるか、他の症状を伴うかが見分けの手がかりです。原因はパーキンソン病だけでなく、本態性振戦、薬剤、甲状腺、カフェインや睡眠不足などさまざまです。20
振戦(しんせん)は「リズミカルなふるえ」の総称で、原因はさまざまです。じっとしている時に目立つ静止時(安静時)振戦はパーキンソン病で多く、手を伸ばす・コップを持つなどの姿勢・動作時に目立つ場合は本態性振戦などが考えられます。甲状腺機能亢進、薬剤(気管支拡張薬・一部の抗うつ薬・リチウム・バルプロ酸など)、アルコール離脱などでも起こります。
| タイプ | 特徴 | 家庭でのヒント | 相談先 |
|---|---|---|---|
| 本態性振戦 | 両手の姿勢・動作時に左右対称のふるえ。家族歴があることもあります。 | コップ・箸・字を書くときに増える/アルコールで一時軽減することがあります。 | 脳神経内科 |
| パーキンソン病 | 安静時優位。片側から始まりやすく、動作の遅さ・腕振り低下を伴うことがあります。 | 座って膝に手を置いた時に出やすいふるえ。 | 脳神経内科 |
| 生理的振戦の増強 | 緊張・カフェイン・睡眠不足で一時的に増えることがあります。 | 休息・カフェイン量の調整。 | かかりつけ |
| 薬剤性・内分泌 | β刺激薬・一部向精神薬・甲状腺機能亢進など。 | お薬手帳を確認し、必要に応じて採血で確認します。 | 内科・脳神経内科 |
詳しく読む(受診時に伝えるポイント)
- ふるえが出る場面(安静時、動作時、緊張時)
- 左右差の有無
- いつから始まったか
- 薬の変更やカフェイン摂取の変化
- 歩きにくさ、声の小ささ、字の変化の有無
まとめ安静時か動作時か、左右差、随伴症状が見分けの手がかりです。
レム睡眠行動障害(RBD)— 特徴・受診の目安・対策
結論夢の内容に合わせた大きな寝言・叫び声・手足の激しい動きは、RBDを考えるサインです。けがにつながることがあり、パーキンソン病などのαシヌクレイノパチーの前駆サインとしても注目されています。345
レム睡眠行動障害(RBD)は、夢の内容に合わせた大きな寝言・叫び声・手足の激しい動きなどが現れ、ベッドから落下・同室者への打撲などのけがにつながることがある睡眠障害です。パーキンソン病などのαシヌクレイノパチーの前駆サインとして注目されています。
詳しく読む(家庭で気づくポイントと安全対策)
家庭で気づけるポイント
- 寝言・叫び声、殴る/蹴る/手足を振り回すなどの動きが反復する。
- 本人は夢見の生々しさを覚えていることがある。
- 受傷(打撲、裂創、落下)や同室者の被害がある。
- アルコール、睡眠不足、一部薬剤で悪化することがある。
まずの対策(安全確保)
- ベッド周囲の角の保護、床にマットを敷く、割れ物や障害物の撤去。
- 同室者と合図を決め、危険を感じたら声掛けや距離を取る。
- 就寝前の飲酒を控え、睡眠不足を減らす。
受診の目安・医療での確認
まとめRBDはけがを伴いやすい重要サインです。安全対策と専門医受診で、合併症や将来リスクを見据えた対応が大切です。
パーキンソン病と便秘 — 特徴と治療の考え方
結論便秘はパーキンソン病で多い自律神経症状で、運動症状より早い段階から始まることもあります。硬く出にくい、強くいきむ、回数が少ないなどが長く続く場合は、他のサインと合わせて確認します。1011
便秘はパーキンソン病で非常に多い自律神経症状で、運動症状より早い段階から始まることもあります。胃腸の動きの低下、排便協調の乱れ、一部薬剤(抗コリン薬など)の影響が絡み合い、硬く出にくい・強くいきむ・回数が少ないなどとして現れます。
詳しく読む(便秘の特徴と治療選択肢)
パーキンソン病で見られる便秘の特徴
- 長期に持続しやすく、腹部不快や食欲低下など生活の質に影響することがあります。
- 便が硬い、出し切れない感覚、トイレ時間が長くなることがあります。
- 夜間頻尿や立ちくらみなど他の自律神経症状を伴うことがあります。
- 抗コリン薬、鉄剤、オピオイドなどで悪化することがあります。
家庭でできる対策(基本)
- 十分な水分と、合う範囲での食物繊維を考えます。慢性の強い便秘では繊維が合わない場合もあります。
- 毎日同じ時間の排便習慣づくり、足台で前傾する姿勢の工夫、軽い運動を試します。
- 整腸薬・浸透圧性下剤(例:ラクツロース、マクロゴール製剤)などは医師や薬剤師に相談します。
医療での主な治療選択肢
| カテゴリ | 例 | ポイント |
|---|---|---|
| 浸透圧性/便を柔らかくする薬 | 酸化マグネシウム、マクロゴールなど | 水分を腸へ引き込み排便を促します。腎機能や電解質に注意します。 |
| 分泌促進(上皮機能) | ルビプロストン、リナクロチド、エロビキシバットなど | 腸液分泌や胆汁酸経路を利用します。慢性便秘で有効な例があります。 |
| 刺激性/頓用 | センノシド、ピコスルファートなど | 連用で効きにくくなる、腹痛が出ることがあります。頓用で使い分けます。 |
| 薬剤見直し | 抗コリン薬、鉄剤などの調整 | 悪化因子を減らします。自己判断での中止は避けてください。 |
まとめ便秘はよくある前駆・併存症状です。生活習慣と薬物療法を段階的に組み合わせ、無理なく改善を目指します。急な強い腹痛、嘔吐、発熱、血便、体重減少がある場合は早めに受診してください。
受診をお考えの方へ
結論チェックリストに複数当てはまる方や、このふるえや歩きにくさが心配と感じる方は、一度ご相談ください。ご家族の方からのご相談も歓迎しています。動画・メモ・他院の検査結果はそのままご持参いただけます。
「パーキンソン病の初期症状:受診の目安」のチェックリストに当てはまる方や、「このふるえや歩きにくさがパーキンソン病なのか心配」と感じておられる方は、お一人で抱え込まず、どうぞ一度ご相談ください。
吉祥寺駅南口から徒歩1分の当院で、神経内科専門医が現在の状態を丁寧に確認し、今後の見通しや治療の選択肢について分かりやすくご説明いたします。
「まずは話だけ聞きたい」「精密検査が必要かどうか知りたい」「薬を使ったほうが良いか相談したい」といった段階でも、遠慮なくご相談ください。
当院には、武蔵野市・三鷹市・杉並区だけでなく、その他東京23区、調布市・小金井市や都外などからも、パーキンソン病やその疑いで多くの方が受診されています。
パーキンソン病の初期症状のよくある質問(FAQ)
Q1. 嗅覚低下だけでパーキンソン病と決まりますか?
決まりません。嗅覚低下は鼻の病気やウイルス感染でもよく起こります。鼻の原因を確認した上で、便秘やレム睡眠行動障害など他のサインが重なる場合は脳神経内科でご相談ください。
Q2. レム睡眠行動障害(RBD)の治療はありますか?
Q5. 家でできる嗅覚チェックは?
同じ香り(例:コーヒー豆・石けん・オレンジ皮)で月1回、左右の鼻を別々に確認します。
参考文献
参考文献を表示
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