PARKINSON EARLY SIGNS

パーキンソン病の初期症状と自己チェック|嗅覚低下・便秘・RBDの見つけ方

手のふるえだけでなく、嗅覚低下、便秘、レム睡眠行動障害(RBD)など、動き以外の変化から受診を考える目安を神経内科専門医が解説します。

最終更新 2026.04.12

This Article's Reviewer 院長 大﨑雅央 吉祥寺おおさき内科・脳神経内科 院長 大﨑 雅央 東京大学医学部卒神経内科専門医総合内科専門医 プロフィール

60秒でわかるパーキンソン病の初期症状

パーキンソン病の初期症状は、手のふるえや動作の遅さだけではありません。匂いがしない(嗅覚低下)、慢性的な便秘、睡眠中の異常行動(レム睡眠行動障害:RBD)など、動き以外の変化が何年も前から現れることがあります。

  • 初期症状は手のふるえだけではありません。匂いがわかりにくい、便秘が続く、睡眠中に大きく動くなどの変化が先に出ることがあります。12
  • 1つの症状だけでは決まりません。複数のサインが重なるか、変化が続くときに受診を考えます。
  • レム睡眠行動障害(RBD)は重要な手がかりです。睡眠中のけがや同室者への影響がある場合は早めの相談が安心です。345
  • 迷ったら脳神経内科へ。診察に加え、必要に応じて画像検査や核医学検査を組み合わせて判断します。67

嗅覚低下、便秘、寝言、ふるえは、どれも単独ではよくある症状です。大切なのは、いつから続いているか、複数の変化が重なっているか、ご本人やご家族が生活の変化に気づいているかを一緒に確認することです。

院長・神経内科専門医 大﨑 雅央
CHECKLIST

パーキンソン病の初期症状:受診の目安

結論複数当てはまる、日常生活に影響する、睡眠中にけががある場合は受診を考える目安です。以下はセルフチェックの目安で、1つ当てはまるだけでパーキンソン病と決まるわけではありません。

嗅覚低下、便秘、睡眠中の大きな寝言や動き、ふるえ、歩幅の変化などは、いずれも単独ではよくある症状です。ただし、複数のチェックが重なるほど、初期のサインとして注意して見る必要があります。

項目こんなとき注意目安の強さチェック
匂いがしない/弱い数年以上続く・両鼻・風邪や鼻づまりがない強い
便秘が続く週3回未満・硬く出にくい・いきむ/腹部不快
睡眠中の大きな声や激しい動き寝言・叫び声・手足をバタバタさせる・ベッドから落ちる、睡眠中の受傷や同室者の被害があるとても強い
手のふるえが軽く出るじっとしている時/道具を使う時のどちらかに出る
片方の腕の振りが減る・歩幅が小さい動画で以前と比べて、腕の振り、歩幅、左右差に変化がある
字が小さくなる/声が小さい家族からの指摘が増えた
立ちくらみ・尿の悩みふらつく・失神しそう・夜間頻尿
詳しく読む(チェックの考え方)

チェックが複数重なる場合、初期のサインの可能性が高まります。ただし、鼻の病気、薬の影響、甲状腺の病気、加齢変化などでも似た症状は起こるため、診察で一つずつ確認します。

まとめ複数のチェックが重なるほど初期のサインの可能性が高まります。

FAMILY CHECK

パーキンソン病の初期症状:家族ができる観察のコツ

結論動画・記録・同じ条件で変化を見ると、診察で状況を伝えやすくなります。ご本人が気づきにくい歩き方や睡眠中の動きは、ご家族の観察が大切な手がかりになります。

  • 歩行の様子を動画で記録します。腕の振り、歩幅、左右差がわかるように、普段どおり歩いている様子を撮ります。
  • 寝室の安全対策を行い、睡眠中の行動をメモします。日時、内容、けがの有無、同室者への影響を書いておくと診察に役立ちます。
  • 便通をカレンダーで見えるようにします。回数、便の硬さ、薬の有無を簡単に残します。
  • 嗅覚は同じ物で月1回チェックします。コーヒー豆、石けん、オレンジ皮など、毎回同じ条件で確認します。
詳しく読む(受診時に持参するとよいもの)
  • 歩き方やふるえの動画
  • 睡眠中の大きな寝言や動きのメモ
  • 便通カレンダー
  • お薬手帳
  • 他院の検査結果

まとめ動画・記録・同じ条件で変化を追うと、診察に役立ちます。

PRODROMAL SIGNS

パーキンソン病の初期に出やすいサイン

結論レム睡眠行動障害、においの低下、便秘、DAT-SPECTの変化などは、前駆期の手がかりになります。ただし、単独で診断が決まるわけではなく、症状の組み合わせと診察が重要です。267

症状がはっきり出る前の「前駆期」から、いくつかの手がかりが集まると将来の発症リスクを見積もることができます。専門的には尤度比という指標を使いますが、ここでは分かりやすく強さで示します。2

手がかり(代表的な定義)パーキンソン病の可能性をどれくらい強める?解説・備考
レム睡眠行動障害(夜間の寝言・手足のバタバタ)とても強い将来、パーキンソン病などへ進む強い手がかりとされています。34
においの低下強いにおいがわかりにくくなるのは初期サインの一つです。89
便秘中くらい非特異的で、単独では決め手になりません。長く続く場合や他のサインが重なる場合に確認します。1011
DAT-SPECTで線条体取り込み低下強いドパミン神経機能を反映する画像検査です。鑑別に役立つ一方、パーキンソン症候群と明確に弁別できない、早期陰性のことがあるなどの制約があります。67
詳しく読む(DAT-SPECTの注意点)

DAT-SPECTはIoflupane(123I)SPECT(DaTSCAN)とも呼ばれます。保険適用、検査の必要性、読影は医師にご相談ください。検査だけで診断を決めるものではなく、診察所見や経過と合わせて判断します。

まとめRBD・嗅覚低下・DAT-SPECT異常など強い手がかりが重なるほど、将来の発症リスクを考える材料になります。

MECHANISM

Braak仮説とBody-first/Brain-firstの考え方(どこから病気が始まるの?)

結論αシヌクレインというタンパク質が神経細胞にたまり、神経の回路に沿って広がるという考え方があります。最近は、腸管・自律神経から始まるBody-firstと、脳から始まるBrain-firstという2つの見方も提案されています。1213

Body-first / Brain-first
Body-first と Brain-first の概念図Body-firstは腸・自律神経から上行し、Brain-firstは嗅球・扁桃体から下行するという考え方を示す図。Body-first腸管・自律神経から始まり上行出発:腸・自律神経経路:迷走神経 → 脳幹 → 中脳早期:RBD、便秘、立ちくらみ脳へ「のぼる」Brain-first脳から始まり下行出発:嗅球・扁桃体経路:大脳辺縁系 → 中脳早期:嗅覚低下、片側の動かしにくさ体へ「おりる」研究上の分類であり、個人差があります。診断は症状、診察、検査を合わせて判断します。
Body-first と Brain-first の概念図。RBD・便秘・嗅覚低下など、早期に気づきやすい変化の違いを示しています。

パーキンソン病では、神経細胞の中にαシヌクレインというタンパク質がたまり(レビー病理)、神経の回路に沿って広がっていくと考えられています。その出発点についての考え方は、研究の進展とともに変わってきました。

詳しく読む(Braak仮説と2つのスタート地点)

① 以前の主流:Braak(ブラーク)仮説

2003年、Braakらは、においの回路(嗅球)や迷走神経の核(延髄)から変化が始まり、下から上へ脳の広い範囲へ進むという段階説を提案しました。ただし、その後の研究で、すべての人がこの順番に当てはまるわけではないことも示されています。121415

② 最近の考え:Body-first と Brain-first

Brain-first(脳から下行)では、嗅球や扁桃体(鼻から入るにおいの経路など)で先に変化が始まり、そこから体の自律神経へ広がると考えられます。Body-first(腸管・自律神経から上行)では、腸・自律神経(迷走神経など)から始まり、のちに脳へ登っていくと考えられます。1613

項目Body-first(腸管・自律神経から始まり上行)Brain-first(脳から始まり下行)
初期に出やすいレム睡眠行動障害(寝言・叫び声・手足の激しい動き)、便秘、立ちくらみなど自律神経症状嗅覚低下、片側の動きにくさ(左右差が目立つこと)
運動症状の出方診断時点では左右差が小さい・進行がやや速いとする報告もあります。17片側優位に始まりやすいとする報告があります(個人差あり)。17
注意どちらのタイプも最終的には似た症状がそろう傾向があり、あくまで研究上の分類です。個人差が大きく、診断や治療は症状・診察・検査を合わせて判断します。13

まとめ出発点が「体」か「脳」かで、早期の症状(RBD・便秘・嗅覚低下など)の出方に違いが見られるという最新の見方です。

SMELL

匂いがしない(嗅覚低下)の見方とよくある原因

結論匂いがしないときは、まず鼻の病気やウイルス感染がないかを確認します。鼻症状が乏しい持続する嗅覚低下に、便秘やRBDなどが重なる場合は脳神経内科での相談が目安です。81819

匂いがしないと感じたら、まずは鼻の病気やウイルス感染(副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、感冒、COVID-19など)がないか確認します。一方で、パーキンソン病の初期サインとして嗅覚低下が目立つことがあるため、鼻の原因が乏しく、便秘やレム睡眠行動障害など他のサインが重なる場合は脳神経内科での相談をおすすめします。

原因特徴まずの受診先
副鼻腔炎・鼻ポリープ/アレルギー鼻づまり・鼻水・においの通りが悪い耳鼻科
ウイルス感染(感冒・COVID-19など)急に匂いがしない/味が薄い内科・耳鼻科
パーキンソン病の初期鼻症状が少ないのに匂いが弱い/長く続く脳神経内科
頭部外傷後事故や転倒の後から匂い低下耳鼻科・脳神経外科・脳神経内科
詳しく読む(家庭での嗅覚チェック)

家庭では、同じ香り(コーヒー豆、石けん、オレンジ皮など)で月1回、左右の鼻を別々に確認します。毎回違う香りを使うと比較しにくいため、同じ条件で記録することが大切です。

まとめ鼻の病気が主因かをまず確認し、鼻症状が乏しい持続する嗅覚低下は脳神経内科へご相談ください。

TREMOR

手のふるえ(振戦)の原因と見分け方

結論ふるえは、安静時か動作時か、左右差があるか、他の症状を伴うかが見分けの手がかりです。原因はパーキンソン病だけでなく、本態性振戦、薬剤、甲状腺、カフェインや睡眠不足などさまざまです。20

振戦(しんせん)は「リズミカルなふるえ」の総称で、原因はさまざまです。じっとしている時に目立つ静止時(安静時)振戦はパーキンソン病で多く、手を伸ばす・コップを持つなどの姿勢・動作時に目立つ場合は本態性振戦などが考えられます。甲状腺機能亢進、薬剤(気管支拡張薬・一部の抗うつ薬・リチウム・バルプロ酸など)、アルコール離脱などでも起こります。

タイプ特徴家庭でのヒント相談先
本態性振戦両手の姿勢・動作時に左右対称のふるえ。家族歴があることもあります。コップ・箸・字を書くときに増える/アルコールで一時軽減することがあります。脳神経内科
パーキンソン病安静時優位。片側から始まりやすく、動作の遅さ・腕振り低下を伴うことがあります。座って膝に手を置いた時に出やすいふるえ。脳神経内科
生理的振戦の増強緊張・カフェイン・睡眠不足で一時的に増えることがあります。休息・カフェイン量の調整。かかりつけ
薬剤性・内分泌β刺激薬・一部向精神薬・甲状腺機能亢進など。お薬手帳を確認し、必要に応じて採血で確認します。内科・脳神経内科
詳しく読む(受診時に伝えるポイント)
  • ふるえが出る場面(安静時、動作時、緊張時)
  • 左右差の有無
  • いつから始まったか
  • 薬の変更やカフェイン摂取の変化
  • 歩きにくさ、声の小ささ、字の変化の有無

まとめ安静時か動作時か、左右差、随伴症状が見分けの手がかりです。

REM SLEEP BEHAVIOR DISORDER

レム睡眠行動障害(RBD)— 特徴・受診の目安・対策

結論夢の内容に合わせた大きな寝言・叫び声・手足の激しい動きは、RBDを考えるサインです。けがにつながることがあり、パーキンソン病などのαシヌクレイノパチーの前駆サインとしても注目されています。345

レム睡眠行動障害(RBD)は、夢の内容に合わせた大きな寝言・叫び声・手足の激しい動きなどが現れ、ベッドから落下・同室者への打撲などのけがにつながることがある睡眠障害です。パーキンソン病などのαシヌクレイノパチーの前駆サインとして注目されています。

詳しく読む(家庭で気づくポイントと安全対策)

家庭で気づけるポイント

  • 寝言・叫び声、殴る/蹴る/手足を振り回すなどの動きが反復する。
  • 本人は夢見の生々しさを覚えていることがある。
  • 受傷(打撲、裂創、落下)や同室者の被害がある。
  • アルコール、睡眠不足、一部薬剤で悪化することがある。

まずの対策(安全確保)

  • ベッド周囲の角の保護、床にマットを敷く、割れ物や障害物の撤去。
  • 同室者と合図を決め、危険を感じたら声掛けや距離を取る。
  • 就寝前の飲酒を控え、睡眠不足を減らす。

受診の目安・医療での確認

  • 受傷を伴う、同室者の被害がある、頻度が増えている場合は受診を考えます。
  • 問診、睡眠中の動画やメモ、合併症薬の確認、必要に応じて睡眠ポリグラフ検査を検討します。
  • 治療は睡眠衛生指導と薬物療法(例:クロナゼパム)が検討されます。高齢者ではふらつきや日中の眠気に注意し、症状や生活背景に合わせて調整します。521

まとめRBDはけがを伴いやすい重要サインです。安全対策と専門医受診で、合併症や将来リスクを見据えた対応が大切です。

CONSTIPATION

パーキンソン病と便秘 — 特徴と治療の考え方

結論便秘はパーキンソン病で多い自律神経症状で、運動症状より早い段階から始まることもあります。硬く出にくい、強くいきむ、回数が少ないなどが長く続く場合は、他のサインと合わせて確認します。1011

便秘はパーキンソン病で非常に多い自律神経症状で、運動症状より早い段階から始まることもあります。胃腸の動きの低下、排便協調の乱れ、一部薬剤(抗コリン薬など)の影響が絡み合い、硬く出にくい・強くいきむ・回数が少ないなどとして現れます。

詳しく読む(便秘の特徴と治療選択肢)

パーキンソン病で見られる便秘の特徴

  • 長期に持続しやすく、腹部不快や食欲低下など生活の質に影響することがあります。
  • 便が硬い、出し切れない感覚、トイレ時間が長くなることがあります。
  • 夜間頻尿や立ちくらみなど他の自律神経症状を伴うことがあります。
  • 抗コリン薬、鉄剤、オピオイドなどで悪化することがあります。

家庭でできる対策(基本)

  • 十分な水分と、合う範囲での食物繊維を考えます。慢性の強い便秘では繊維が合わない場合もあります。
  • 毎日同じ時間の排便習慣づくり、足台で前傾する姿勢の工夫、軽い運動を試します。
  • 整腸薬・浸透圧性下剤(例:ラクツロース、マクロゴール製剤)などは医師や薬剤師に相談します。

医療での主な治療選択肢

カテゴリポイント
浸透圧性/便を柔らかくする薬酸化マグネシウム、マクロゴールなど水分を腸へ引き込み排便を促します。腎機能や電解質に注意します。
分泌促進(上皮機能)ルビプロストン、リナクロチド、エロビキシバットなど腸液分泌や胆汁酸経路を利用します。慢性便秘で有効な例があります。
刺激性/頓用センノシド、ピコスルファートなど連用で効きにくくなる、腹痛が出ることがあります。頓用で使い分けます。
薬剤見直し抗コリン薬、鉄剤などの調整悪化因子を減らします。自己判断での中止は避けてください。

まとめ便秘はよくある前駆・併存症状です。生活習慣と薬物療法を段階的に組み合わせ、無理なく改善を目指します。急な強い腹痛、嘔吐、発熱、血便、体重減少がある場合は早めに受診してください。

CONSULTATION

受診をお考えの方へ

結論チェックリストに複数当てはまる方や、このふるえや歩きにくさが心配と感じる方は、一度ご相談ください。ご家族の方からのご相談も歓迎しています。動画・メモ・他院の検査結果はそのままご持参いただけます。

「パーキンソン病の初期症状:受診の目安」のチェックリストに当てはまる方や、「このふるえや歩きにくさがパーキンソン病なのか心配」と感じておられる方は、お一人で抱え込まず、どうぞ一度ご相談ください。

吉祥寺駅南口から徒歩1分の当院で、神経内科専門医が現在の状態を丁寧に確認し、今後の見通しや治療の選択肢について分かりやすくご説明いたします。

「まずは話だけ聞きたい」「精密検査が必要かどうか知りたい」「薬を使ったほうが良いか相談したい」といった段階でも、遠慮なくご相談ください。

当院には、武蔵野市・三鷹市・杉並区だけでなく、その他東京23区、調布市・小金井市や都外などからも、パーキンソン病やその疑いで多くの方が受診されています。

FAQ

パーキンソン病の初期症状のよくある質問(FAQ)

Q1. 嗅覚低下だけでパーキンソン病と決まりますか?

決まりません。嗅覚低下は鼻の病気やウイルス感染でもよく起こります。鼻の原因を確認した上で、便秘やレム睡眠行動障害など他のサインが重なる場合は脳神経内科でご相談ください。

Q2. レム睡眠行動障害(RBD)の治療はありますか?

まずは寝室の安全対策が基本です。薬物療法としてクロナゼパムなどが推奨されることがあります。年齢や合併症により副作用(眠気・ふらつき等)に注意します。521

Q3. DAT-SPECTは受けるべきですか?

DAT-SPECTは診断を補助する検査で、典型例では不要なこともあります。早期の一部では正常に見えることもあり、結果と診察の総合判断が大切です。67

Q4. 便秘はどれくらい続けば相談した方がよいですか?

数週間以上続く、生活の質に影響する、腹痛・体重減少・血便を伴う場合は受診ください。パーキンソン病の前から長く続く例もあります。1011

Q5. 家でできる嗅覚チェックは?

同じ香り(例:コーヒー豆・石けん・オレンジ皮)で月1回、左右の鼻を別々に確認します。

REFERENCES

参考文献

参考文献を表示
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