TRANSIENT ISCHEMIC ATTACK

TIA(一過性脳虚血発作)とは?

症状が治まっても、脳梗塞の前触れとして扱います。症状・原因・検査・治療・再発予防を神経内科専門医が解説します。

最終更新 2026.05.31

This Article's Reviewer 院長 大﨑雅央 吉祥寺おおさき内科・脳神経内科 院長 大﨑 雅央 東京大学医学部卒神経内科専門医総合内科専門医 プロフィール

まず確認したいTIAの要点

  • 今も症状がある、またはさっきまであった場合は救急相談を優先してください。顔のゆがみ、片側の脱力・しびれ、ことばの異常、片目の見えにくさは、数分で治っても様子見にしない症状です。12
  • TIAは脳梗塞の警告サインです。症状が消えても、とくに発症直後から48時間は脳梗塞へ進むリスクに注意が必要です。342
  • 症状が落ち着いた後は、原因確認と再発予防が次の焦点です。当院では必要に応じてMRI/MRA、血管評価、心電図、血圧・脂質・血糖を確認し、再発予防の方針を一緒に整理します。156
TRIAGE

あなたが今すべきこと(受診の目安)

結論いま症状がある、またはさっきまであった場合は、Web予約ではなく救急相談を優先してください。症状が落ち着いている場合は、下の目安で受診先を選びます。

状況まず考える対応ポイント
いま症状が出ている救急相談を優先顔のゆがみ、片側の脱力、ことばの異常、片目の見えにくさがあれば、救急相談を優先します。
症状が治まった後(24時間以内)救急外来または当日受診を強く考える発症直後、とくに48時間以内は脳梗塞リスクが高い時間帯です。34
数日〜数週間以内で、症状は落ち着いている脳神経内科外来で原因確認・再発予防を考える急性期治療が落ち着いた後、MRI・血管・心臓・生活習慣病を確認します。

まとめ発症時の救急対応は基幹病院が中心です。症状が落ち着いた後の原因確認や再発予防は、脳神経内科外来で一緒に考えていきます。

ABOUT

一過性脳虚血発作(TIA)とは?

結論TIAは「軽い脳卒中」ではなく、脳梗塞の前触れとして扱うべき状態です。症状が消えていても、早めの評価が再発予防につながります。

詳しく読む(定義・脳梗塞との違い)
  • 多くは数分〜1時間以内に症状が消えます。
  • MRIで新しい脳梗塞の跡が残っていないことが条件です。残っている場合は脳梗塞と診断されます。71
  • TIAと軽い脳梗塞は連続した状態で、どちらも緊急性が高いと考えます。

一過性脳虚血発作(TIA)は、脳や網膜の一部に行く血の流れが一時的に悪くなることで起こる神経症状を指します。

国際的には、MRI(DWIという特殊な撮影法)で新しい脳梗塞の跡が見つからないことを条件とする定義が使われています。7 一方で臨床的には「24時間以内に消失した虚血症状」という時間定義が用いられることもあります。2

重要なのは、TIA=安心ではないことです。時間定義でTIAとされるケースの一部は、MRIで小さな梗塞が見つかることもあり、ごく軽い脳梗塞に近い状態として早期評価が必要です。12

項目一過性脳虚血発作(TIA)脳梗塞
血流の状態脳や目の血管が一時的に細くなる、または詰まりかけますが、再開通します。血管の閉塞や高度狭窄が続き、脳細胞がダメージを受けます。
症状片側の脱力、顔のゆがみ、言葉の障害、視野障害など、脳梗塞とほぼ同じです。TIAと同じような症状が長く続き、後遺症を残しやすくなります。
症状の持続時間多くは数分〜1時間以内、遅くとも24時間以内に消失します。124時間以上続くことが多くなります。
MRI(DWI)国際的な定義では、新しい梗塞の跡が残らないことが条件です。多くで新しい梗塞が見つかります。
緊急度TIAも脳梗塞も緊急性が高い状態です。時間との勝負になる病気です。

まとめ症状が消えても「原因を調べるチャンス」です。早めの評価が再発予防につながります。

CAUSE

一過性脳虚血発作(TIA)の原因は?

結論TIAの主な原因は、首や脳の血管の動脈硬化、心臓にできた血栓(心房細動など)、脳の細い血管の変化です。原因により治療が変わるため、どこで何が起きたかを調べることが再発予防のカギです。

詳しく読む(主な原因のタイプ)
  • 首の血管(頸動脈)の動脈硬化、心臓の不整脈(心房細動)、脳の細い血管の傷みなどを考えます。
  • 原因により、使う薬(血液サラサラの薬の種類)や追加の治療が変わります。

TIAは、脳や網膜の血管のどこかで血の流れが一時的に悪くなることで起こります。代表的な原因は次の通りです。

  • 首の太い血管(頸動脈など)の動脈硬化:血管の壁にコレステロールなどがたまった部分(プラーク)に血の塊ができて、血管が狭くなる、または詰まりかけます。一過性黒内障(片目が暗くなる)もこのタイプで起こることがあります。
  • 心臓の不整脈(心房細動など)が原因:心臓の中にできた血の塊が飛んで、脳の血管を一時的に塞ぎます。脳梗塞の原因としても重要です。
  • 脳の細い血管の動脈硬化:高血圧や糖尿病などで脳の細い血管が傷み、詰まりかけます。
  • その他:首や脳の血管が裂ける動脈解離、血管の炎症、血液の病気などを考えることがあります。

まとめ「TIAかどうか」だけでなく、原因まで特定できると、再発予防がより的確になります。

FAST

一過性脳虚血発作(TIA)の症状は?めまい・しびれ・見えにくさ

結論TIAの症状は、片側の脱力・しびれ、顔のゆがみ、ことばの異常、片目の見えにくさが突然出て、数分〜数十分で治まるのが典型です。回転性めまいやふらつきが単独で続く場合はTIA以外の原因も多く、症状の組み合わせと「突然」がサインです。

詳しく読む(FASTの具体例・その他の症状)
  • 可能なら、発症した時刻、または最後に普段どおりだった時刻をメモしてください。
  • 突然出たこと、複数の症状が組み合わさったことは、受診時の重要な手がかりになります。

TIAの症状は脳梗塞とほぼ同じです。「突然起こる」「体の一部に出る」ことが特徴で、まずはFASTで考えると分かりやすいです。

FASTに当てはまらなくても注意(BE-FAST)

脳幹・小脳など後方循環の脳卒中では、めまい・ふらつき・複視などが主症状になることがあります。そのため、最近はBalance・Eyesを加えた「BE-FAST」として覚えることもあります。

  • 突然の激しいめまい・ふらつき(立てない/歩けない)
  • 物が二重に見える、視野が急に欠ける、片目が暗くなる
  • 飲み込みにくい、むせる、ろれつが回らない
  • 意識がおかしい、強い眠気、まっすぐ座れない

まとめ「突然の神経症状」は、治っても要注意です。受診の目安に沿って緊急性を判断します。

合図具体的な症状ポイント
F:Face(顔)顔の片側が下がる、笑顔がゆがむ数分で戻っても注意します。左右差の写真があると診察の助けになります。
A:Arm(腕)片腕・片脚に力が入らない、しびれる、上げた腕が落ちる歩けても安心できません。初めての片側脱力は要注意です。
S:Speech(ことば)ろれつが回らない、言葉が出ない、理解できない周囲が気づきやすい症状です。可能なら短い動画が役立つこともあります。
T:Time(時間)これらが突然出る発症時刻、または最後に普通だった時刻をメモします。
RISK

TIA後に脳梗塞になるリスクはどのくらい?

結論TIA後は最初の48時間〜1週間がとくに重要で、早期評価と治療が再発を減らします。発症直後にリスクが集中するため、症状が消えても早めに原因を確認します。348

詳しく読む(期間別リスクの目安)
  • 研究では、TIA後90日以内に脳梗塞になる方は約10人に1人で、発症直後に集中すると報告されています。34
  • 近年は早期治療の普及でリスクが下がった報告もありますが、ゼロではありません。9
  • 急いで評価して治療を始めることで、早期再発を減らせることが示されています。8

古典的研究やメタ解析では、TIA後の脳梗塞リスクは2日以内3〜5%、7日以内5〜8%、90日以内10%前後などと報告されてきました。3104

近年は迅速評価・治療の普及により、前向き登録研究で短期リスクが低下した報告もあります。9

期間頻度(目安)コメント
0〜2日約1〜5%最も危険な時間帯です。早期評価が重要です。34
〜7日約2〜8%この1週間で原因を特定し、予防治療を整えます。
〜90日約3〜20%近年は数%台まで低下した報告もありますが、油断は禁物です。9

まとめ「早く調べて、早く整える」ほど再発を減らしやすいことが示されています。8

ABCD2

ABCD2スコアによるリスク評価

結論ABCD2は早期リスクを見積もる参考になりますが、点数だけで安全/危険を決めません。画像や原因の評価の方が重要な場合があります。112

ABCD2スコアの採点表(合計0〜7点)です。A・B・C・D・D2の5項目を確認し、当てはまる点数を合計します。11

  • 年齢・血圧・症状・持続時間・糖尿病の5項目で0〜7点です。
  • 点数が高いほどリスクが高い傾向ですが、点数だけで安全・危険を決めることはできません。
ABCD2の評価項目当てはまる内容点数
A:Age(年齢)60歳以上1点
B:Blood pressure(血圧)初診時血圧が140/90mmHg以上1点
C:Clinical features(症状)片側脱力2点
C:Clinical features(症状)脱力なしの言語障害のみ1点
D:Duration(持続時間)60分以上2点
D:Duration(持続時間)10〜59分1点
D2:Diabetes(糖尿病)糖尿病あり1点
詳しく読む(合計点とリスク目安)

採点後は合計点を目安に早期リスクを考えます。ただし、ABCD2はTIA後のごく早期リスクを簡便に見積もるための指標で、診断や緊急度を単独で決めるものではありません。112

代表的研究での2日以内の脳梗塞リスク

代表的研究では、ABCD2スコアごとの「2日以内の脳梗塞リスク」は、100人中何人くらいかで見ると次のように理解しやすくなります。11

区分点数2日以内の目安
低リスク0〜3点100人に約1人(約1.0%)
中等度リスク4〜5点100人に約4人(約4.1%)
高リスク6〜7点100人に約8人(約8.1%)

まとめ点数が高いほどリスクは上がる傾向がありますが、点数だけで安全・危険は決めません。画像検査や原因の評価もあわせて判断します。

まとめABCD2はあくまで参考で、ガイドラインでも点数のみで判断しないことが強調されています。2 ご自身で点数だけを見て受診を控えないでください。

REPEAT

一過性脳虚血発作を繰り返すのはなぜ?

結論TIAを繰り返すのは、原因(血管の狭窄や心臓の血栓など)が残っているサインで、短期間に繰り返すほど脳梗塞に進むリスクが高くなります。「数日で何回も同じ症状」は様子見に向きません。4122

詳しく読む(どんなときに危険?)
  • 数日〜1週間で同じような症状を2回以上繰り返す場合は注意が必要です。
  • 繰り返す場合は様子を見ずに、受診先を早めに確認してください。

短い期間に何度も発作を繰り返すタイプ(いわゆる「クレッシェンドTIA」など)は注意が必要です。頻回発作、症状が長い、MRIで新しい梗塞がある、頸動脈の高度狭窄などは高リスクのサインになりえます。4122

  • 数日〜1週間で同じような症状を2回以上繰り返す
  • 1回の症状が10分以上続く、とくに60分以上続く
  • 症状が強く、ほとんど動けない/話せない
  • 心房細動や頸動脈狭窄を指摘されている

まとめ繰り返す発作は「様子見」に向きません。早めに受診先を確認してください。

TESTS

TIAの検査は?MRIで異常がないこともあります

結論TIAは症状が消えるうえ、MRIで異常が写らないこともあります。そのためMRIに加え、首や脳の血管・心臓(心電図・ホルター)を組み合わせて原因を評価します。目的は再発を防ぐために原因を特定することです。12

詳しく読む(各検査の目的)

TIAは病院に着いたときに症状が消えていることも多いため、検査で手がかりを集めます。2

  • 脳MRI(DWI):症状が消えていても、DWIで新しい梗塞が見つかることがあります。1
  • MRA/CTA・頸動脈エコー:頸動脈や脳血管の狭窄を評価し、治療(内服/手術・ステント)の判断材料にします。
  • 心電図・ホルター心電図・心エコー:心房細動など心原性を評価し、抗凝固薬の適応を判断します。
  • 血液検査:脂質、血糖値、凝固関連、炎症などを確認し、危険因子を整えます。

まとめ検査の目的は、症状が消えた後に原因を見つけ、脳梗塞を防ぐ方針を立てることです。

HOSPITALIZATION

一過性脳虚血発作の入院日数は?

結論日本ではTIA入院は4〜9日程度が一般的ですが、危険度や検査内容で変わります。頸動脈治療や心臓の治療が必要な場合は、長くなることがあります。1314

詳しく読む(入院日数の目安)
  • 日本脳卒中データバンクでは、TIA入院の在院日数は中央値6日でした。
  • 4日以内が25%、9日以内が75%と報告されています。13
  • 施設・時代により平均入院日数は異なり、研究では平均13日程度の報告もあります。14

まとめ多くは数日〜1週間前後ですが、必要な検査と治療を安全に終える期間として個別に決まります。

PREVENTION

TIAの治療・再発予防は?

結論TIAの治療と再発予防の中心は、原因に合った抗血栓薬と、血圧・脂質・血糖の管理、生活習慣の改善です。薬と生活習慣の両輪で、長く続けられる形を考えます。8256

詳しく読む(薬・危険因子・生活のコツ)
  • 動脈硬化が原因のTIAには血液サラサラの薬(抗血小板薬)、心房細動が原因の場合は別の血液サラサラの薬(抗凝固薬)が基本です。
  • リスクが高いTIAや軽い脳梗塞では、短期間だけ2種類の薬を併用することがあります。1516
  • 禁煙・運動・減塩などの生活習慣は、長期リスクを下げる基盤です。

薬(抗血栓薬)

動脈硬化が原因のTIAでは、アスピリンやクロピドグレルなどの血液サラサラの薬(抗血小板薬)が中心です。リスクが高いTIAや軽い脳梗塞では、発症早期から短期間だけ2種類を併用する方法が有効な場合があります。1516 ただし出血リスクがあるため、開始・期間は医師が個別に判断します。25

心房細動が原因のTIAでは、血液をサラサラにする別のタイプの薬(抗凝固薬:DOACやワルファリン)が中心です。腎臓の機能や出血リスクを考慮して薬を調整します。5

危険因子のコントロール

  • 血圧:多くの方で130/80mmHg未満を目標に個別化します。56
  • コレステロール:コレステロールを下げる薬(スタチンなど)で動脈硬化のリスクを減らします。5
  • 糖尿病・喫煙・体重:血糖値の管理、禁煙、体重管理が重要です。

生活のコツ(続けやすく)

  • 塩分は「かける」より小皿で「つける」
  • 主菜は揚げ物中心から、焼き魚・蒸し料理を増やす
  • 薬の飲み忘れ対策に、一包化・ピルケース・スマホ通知を活用する
  • 運動は「いきなり頑張る」より、週合計150分の早歩きなどを目安にする

TIA後の再発予防を検査で確認したい方へ

急性期の治療が落ち着いたら、「いまの脳の状態」と「将来の脳卒中・認知症リスク」をまとめて評価する選択肢があります。

当院の認知症・脳卒中ドック(脳ドック)では、MRI、採血、認知機能、心電図を組み合わせて確認します。

まとめ吉祥寺駅 南口(公園口)徒歩1分の立地で、急性期後の再発予防を継続して考えやすい環境です。

まとめ再発予防は「薬」+「生活習慣」の両輪です。原因に合わせて方針を考え、長く続けることが大切です。

FAQ

よくあるご質問(TIA)

一過性脳虚血発作(TIA)とは何ですか?

TIAは、脳や網膜の血流が一時的に悪くなることで起こり、片側の脱力・しびれ、顔のゆがみ、ことばの障害、視野・視力の異常など、脳梗塞と同じような症状が突然現れます。多くは短時間で自然に改善しますが、脳梗塞の前触れとして扱い、早めの評価が大切です。2

症状がすぐ治った場合でも受診は必要ですか?

はい、必要です。古典的研究ではTIA後90日以内の脳梗塞が約10%前後と報告され、リスクは発症直後に集中するとされています。34 近年は短期リスク低下の報告もありますが、ゼロではありません。9 迷う場合は、まず救急相談を利用してください。

一過性脳虚血発作を繰り返しています。危険ですか?

短期間に同じような発作を繰り返す場合は、脳梗塞の早期発症リスクが高い可能性があります。「数日で何回も」「1回が長い」「症状が強い」などのときは、早めに救急相談を利用してください。

一過性脳虚血発作の入院日数はどのくらいですか?

危険度や必要な検査で変わります。日本脳卒中データバンクでは入院中央値6日(4日以内25%、9日以内75%)と報告されています。13

TIA後に脳ドックを受ける意味はありますか?

急性期治療が落ち着いた後、「いまの脳血管の状態」と「将来の脳卒中・認知症リスク」をまとめて評価することで、再発予防の計画をより具体的に立てられます。当院の認知症・脳卒中ドック(脳ドック)では、MRI・採血・認知機能検査・心電図を組み合わせた総合評価を行っています。

REFERENCES

参考文献

参考文献を表示
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