脳梗塞の予防 ― 一次予防と再発予防を専門医が解説【吉祥寺おおさき内科・脳神経内科】

最終更新:2026-04-27 / 監修:大﨑 雅央 院長(神経内科専門医・指導医)

60秒でわかる脳梗塞の予防

  • 脳梗塞の予防は「一次予防(未発症者)」と「再発予防(既往者)」で考え方が異なります。共通基盤は 血圧・脂質・血糖・心房細動・喫煙・運動・食事 の最適化です。
  • 修正可能な10因子で全脳卒中リスクの約90%を説明できる(INTERSTROKE 試験、Lancet 2016)[1]。最大寄与は 高血圧 で、人口寄与危険度(PAR)47.9%。
  • 再発予防では薬の継続が決定的に重要です。原因に応じて抗血小板薬(アスピリン・クロピドグレル等)または抗凝固薬(DOAC: アピキサバン・リバーロキサバン・ダビガトラン・エドキサバン)を選択します[13][14][15][16]
  • 食事は地中海食(PREDIMED)・DASH 食を基本とし、減塩(目標 6g/日未満)を継続します。「食べてはいけないもの」より「バランスを整える」が現実的[8][9]
  • 当院は神経内科専門医による予防外来(保険診療)と認知症・脳卒中ドック(自由診療)で対応します。急性期治療(rt-PA・血栓回収療法)とリハビリテーションは当院では行わず、必要時は基幹病院・回復期施設と連携します。

脳梗塞の予防とは ― 一次予防と再発予防の違い

結論脳梗塞の予防は 「一次予防」=これまで脳梗塞を起こしたことがない方の予防 と、「二次予防(再発予防)」=既に脳梗塞や TIA を起こした方の再発予防 に分けて考えます。

  • 一次予防: 高血圧・脂質異常症・糖尿病・心房細動・喫煙・運動・食事 の管理が中心。介入対象は数千万人規模。
  • 二次予防: 一次予防の項目に加え、抗血小板薬または抗凝固薬の継続が必須。再発リスクは未発症者の約9倍[30]
  • 修正可能な10因子(高血圧・身体活動・脂質比・食事・腹囲・心理社会因子・喫煙・心臓病・飲酒・糖尿病)で 全脳卒中の人口寄与危険度の90%以上を説明できる(INTERSTROKE 試験、32か国26,919例)[1]

脳梗塞は脳の血管が詰まって脳組織が壊死する疾患で、発症後の治療には急性期治療(発症4.5時間以内の血栓溶解療法、最大24時間以内の血栓回収療法)があります[29]が、最も重要なのは そもそも発症させない・再発させないことです。AHA/ASA(米国心臓協会・米国脳卒中協会)の予防ガイドラインでも、「修正可能なリスク因子の包括的管理が脳卒中予防の中核」と明記されています[20][21]

本ページでは、一次予防(リスク因子の最適化)再発予防(薬剤+リスク因子)の双方について、当院神経内科専門医の臨床経験と国際的なエビデンス(NEJM・Lancet・Stroke 等)に基づいて解説します。

まとめ:未発症者は 7つのリスク因子の管理、既往者は 薬剤継続+リスク因子管理 がベースラインです。

一次予防(未発症者)で抑えるべき7つのリスク因子

結論INTERSTROKE 試験で同定された修正可能な10因子のうち、特に重要な 7つ(高血圧・脂質異常症・糖尿病・心房細動・喫煙・運動不足・食事)を整えることで、脳梗塞リスクを大きく下げられます[1]

①高血圧 ― 最大の修正可能因子

高血圧は脳梗塞・脳出血の 最大の単独危険因子です。INTERSTROKE 試験では、高血圧の人口寄与危険度(PAR)は 47.9%と全因子中最大[1]。SPRINT 試験(NEJM 2015)では、収縮期血圧目標を 120 mmHg 未満(従来 140 未満)に厳格化することで、心血管イベント(脳卒中含む)が 25%減少、全死亡が 27%減少しました[2]。日本のガイドラインでは降圧目標は基本 家庭血圧 125/75 mmHg 未満、外来 130/80 mmHg 未満が推奨です[29]

②脂質異常症 ― LDL コレステロール管理

SPARCL 試験(NEJM 2006)では、TIA・脳梗塞既往患者にアトルバスタチン 80mg を投与すると、再発が 16%減少(HR 0.84)[6]。一次予防でもスタチン使用で脳卒中リスクが約20%低下します[21]。Treat Stroke to Target 試験(NEJM 2020)では、虚血性脳卒中・TIA 既往者で LDL コレステロール 70 mg/dL 未満を目標とすることで、再発・心血管イベントが 22%減少しました[7]

③糖尿病 ― 血糖と血管のダブル管理

糖尿病があると脳梗塞リスクは約2倍になります[1]。HbA1c 6.5〜7.0%程度を目標とした血糖管理に加え、近年は SGLT2阻害薬・GLP-1受容体作動薬が心血管イベント・脳卒中の二次予防にも有効と報告されています[19]。糖尿病・高血圧・脂質異常症のいずれかをお持ちの方は、これらを 並行管理することで効果が加算されます。

④心房細動(AF) ― 抗凝固療法の対象

心房細動があると脳梗塞リスクは 約5倍(Framingham 研究)[22]。心原性脳塞栓症は重症化しやすく、致死率・後遺症率が高いため、AF 検出後は CHADS₂ または CHA₂DS₂-VASc スコアで抗凝固療法の適応を判定します。直接経口抗凝固薬(DOAC: アピキサバン・リバーロキサバン・ダビガトラン・エドキサバン)はワルファリンと比較して、脳卒中・全身塞栓症リスクを 19%減少(メタ分析、Lancet 2014)、頭蓋内出血リスクを 52%減少と報告されています[17]

⑤喫煙 ― 即時の禁煙が最も効果的

喫煙者の脳梗塞リスクは非喫煙者の約2倍。INTERSTROKE 試験では PAR 18.9%[1]。禁煙後 5年以内に脳梗塞リスクは非喫煙者と同等まで低下します。受動喫煙も独立したリスク因子であり、家庭・職場での受動喫煙曝露の最小化も重要です。

⑥運動不足 ― 週150分の有酸素運動

身体活動不足は脳卒中の独立危険因子。Lee CD et al. のメタ分析(JAMA 2003)では、活発な身体活動を行う人は虚血性脳卒中リスクが 21〜27%低い[27]。AHA は 週150分以上の中強度有酸素運動(早歩き・水泳・自転車等)または75分以上の高強度運動を推奨しています[21]

⑦食事 ― 地中海食・DASH食の実践

後述の「食事」セクションで詳述しますが、地中海食(オリーブオイル・ナッツ・魚・野菜・果物中心、加工肉・赤肉・甘味飲料を控える)は一次予防で 主要心血管イベントを30%減少(PREDIMED 試験、NEJM 2018)[8]。DASH 食(減塩+果物・野菜・低脂肪乳製品)も収縮期血圧を 8〜14 mmHg 低下させます[9]

まとめ:7因子のいずれか1つに当てはまる方は、神経内科外来または内科外来での評価をおすすめします。複数該当する方は、脳卒中リスクが乗算的に上昇します。

再発予防(二次予防) ― 再発率と薬の継続

結論脳梗塞・TIA の 5年累積再発率は20〜30%、特に 最初の30日以内が最もリスクが高い(EXPRESS試験で2倍以上)[22][30]。再発予防の柱は (1)抗血小板薬または抗凝固薬の継続(2)リスク因子の徹底管理です。

脳梗塞の病型別・薬剤選択

抗血栓薬は 病型(TOAST分類)に応じて選択されます[29]:

  • アテローム血栓性脳梗塞・分類不能型: 抗血小板薬単剤(アスピリン 75〜100 mg/日、またはクロピドグレル 75 mg/日)。CAPRIE 試験(Lancet 1996)ではクロピドグレルがアスピリンより心血管イベントを 8.7%相対減少[24]
  • ラクナ梗塞(小血管病変): 抗血小板薬単剤。SPS3 試験(NEJM 2012)では、慢性期の二剤併用(アスピリン+クロピドグレル)は単剤と比較して 再発抑制効果は同等で、出血リスクは2倍のため非推奨[5]
  • 心原性脳塞栓症(AF合併): 抗凝固薬(DOAC または ワルファリン)。DOAC はワルファリンと比較し、頭蓋内出血リスクが大幅に低い(メタ分析で52%減)[17]

急性期 DAPT(二剤併用抗血小板療法) ― 短期戦略

軽症脳梗塞・高リスク TIA(ABCD2 4点以上)では、発症 24時間以内からアスピリン+クロピドグレルの DAPT を21〜90日間行うことで、再発が大きく減少します:

  • CHANCE 試験(NEJM 2013): 中国で実施。21日間 DAPT で90日再発が 32%減少(HR 0.68)[10]
  • POINT 試験(NEJM 2018): 国際多施設。90日 DAPT で主要虚血イベントが25%減少(HR 0.75)[11]。ただし出血合併症は2倍に。
  • THALES 試験(NEJM 2020): チカグレロル+アスピリンで30日複合転帰が17%減少[12]

これらの結果から、現在は 軽症脳梗塞・高リスクTIAでは21日間 DAPT、その後単剤継続が国際的標準です[20]

長期 LDL 目標 ― より低く、より早く

Treat Stroke to Target 試験では、虚血性脳卒中・TIA 既往者を対象に LDL <70 mg/dL vs 90〜110 mg/dL で比較し、主要心血管イベントが22%減少(HR 0.78)[7]。当院ではスタチン+(必要時)エゼチミブ・PCSK9阻害薬を組み合わせて目標達成を図ります。

血圧管理は「再発予防の最前線」

PROGRESS 試験(Lancet 2001)では、ペリンドプリル+インダパミドによる降圧で再発が 43%減少[3]。SPS3 試験(NEJM 2013)では、ラクナ梗塞既往者で収縮期血圧 130 mmHg 未満を目標とすると、脳出血が63%減少しました(統計的に有意)[4]

まとめ:再発予防は 「薬剤継続+血圧+脂質+生活習慣」 の包括的アプローチで、再発を半減できます。

脳梗塞予防のための食事 ― 何を食べる/避ける

結論脳梗塞予防の食事の核心は 「地中海食」「DASH食」「減塩」の3つ。「食べてはいけないもの」を強調するより、食生活全体のパターンを整えることが現実的です[8][9][28]

推奨される食事パターン ― 地中海食・DASH食

PREDIMED 試験(再解析、NEJM 2018)では、地中海食(エクストラバージンオリーブオイル+ナッツ追加)を5年以上継続した群で、主要心血管イベント(脳卒中・心筋梗塞・心血管死)が 30%減少(HR 0.69)[8]。とくに脳卒中の単独評価で 39%減少と、心筋梗塞より大きな効果が観察されました。

DASH-Sodium 試験(NEJM 2001)では、DASH食 + 減塩(ナトリウム 2.3g/日 → 1.2g/日)で収縮期血圧が 11.5 mmHg 低下(高血圧群)[9]。これは降圧薬単剤と同等の効果です。

食べていいもの(積極的に)

  • 魚(週2回以上): サバ・イワシ・サンマ・サケ等の青魚は EPA・DHA を多く含み、虚血性脳卒中リスクを 12%低下[28]
  • 野菜・果物(1日5サービング以上): 食物繊維・カリウムが豊富。1日400g 以上で脳卒中リスク 26%低下
  • 全粒穀物: 玄米・全粒粉パン・オートミール
  • ナッツ類(1日 30g 程度): アーモンド・くるみ・ピスタチオ等。PREDIMED 試験で有効性確認済
  • オリーブオイル: 加熱・サラダ両方で。エクストラバージンが推奨
  • 低脂肪乳製品: ヨーグルト・低脂肪牛乳
  • 豆類・大豆製品: 納豆(ただしワルファリン服用中は要注意)・豆腐・枝豆

控えたほうがよいもの

  • 食塩(目標 6g/日未満): 日本人の平均摂取量は10g前後で過剰。加工食品・漬物・ラーメン汁が主な原因
  • 加工肉・赤肉: ソーセージ・ハム・ベーコン等は週 150g 以下。WHO は加工肉を発がん性物質グループ1に分類
  • トランス脂肪酸: マーガリン・ショートニング・揚げ菓子に含まれる。可能な範囲で避ける
  • 過剰な砂糖・甘味飲料: 清涼飲料・スポーツドリンク・果糖含有飲料の常用は2型糖尿病リスクを高める
  • 過剰な飲酒: 純アルコール換算で 男性 20g/日(ビール中瓶1本相当)、女性 10g/日を超えると脳卒中リスク上昇[26]

注意: 「食べてはいけない」と表現されることがある食品(納豆など)は、特定の薬剤(ワルファリン)服用中に限定された制限です。DOAC(アピキサバン等)では食事制限はほとんどありません。個別の食事制限については処方医にご確認ください。

まとめ:「何を食べないか」より 「全体としてバランスを整える」が現実的。地中海食・DASH 食は科学的根拠が最も強い予防食です。

退院後の生活で大切なこと

結論脳梗塞退院後の最初の 3〜6ヶ月は再発リスクが最も高い期間です[22](1)処方薬の継続、(2)定期通院、(3)リハビリ継続、(4)生活習慣の調整の4つが柱です。

処方薬の継続 ― 自己中断は最も危険

急性期病院で処方された抗血小板薬・抗凝固薬・降圧薬・スタチンは、原則として生涯継続です。出血傾向や副作用がある場合は自己中断せず、必ず処方医に相談してください。DOAC は半減期が短く、1〜2回の飲み忘れで脳梗塞リスクが急上昇します[13]

定期通院・血液検査

退院後は1〜3ヶ月ごとの外来通院が基本。血圧・血液検査(LDL コレステロール・HbA1c・腎機能・肝機能)で薬剤調整を行います。AF 患者では INR(ワルファリン使用時)や腎機能(DOAC 用量調整)のモニタリングが必須です。

リハビリテーションの継続(当院非対応)

当院は外来クリニックのため、回復期リハビリテーション(理学療法・作業療法・言語聴覚療法)は 行っておりません。回復期病院・リハビリ専門施設・通所リハビリ等との連携で対応します。維持期・生活期の 運動継続(自主トレ)・嚥下体操・認知トレーニングは、再発予防と機能維持の両面で重要です。

復職・運転・日常生活

復職時期は仕事内容と機能回復度で個別判断。運転再開は機能・認知・視野・てんかん発作の有無を総合評価し、必要時は脳神経内科医・精神科医・運転リハビリ専門医の意見書が必要です(道路交通法 第90条)。意識消失発作・重度の片麻痺・視野欠損がある間は運転を控えてください。

まとめ:退院後3〜6ヶ月は 薬剤継続+定期通院を最優先。生活習慣の修正は焦らず段階的に。

生活習慣 ― 運動・睡眠・体重・飲酒の整え方

運動 ― 中強度有酸素運動を週150分

AHA/ASA 一次予防ガイドラインは 週150分以上の中強度有酸素運動(早歩き・サイクリング・水泳)または週75分以上の高強度運動を推奨しています[21]。再発予防でも軽〜中強度の運動継続で再発が約25%減少します[27]。1日 30分×週5回 が目安。

睡眠 ― 7〜8時間、睡眠時無呼吸症候群の検出

睡眠時間が 6時間未満または9時間以上では脳卒中リスクが約20%上昇。閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は脳梗塞の独立危険因子で、いびきが大きい・日中の眠気が強い方は無呼吸検査を検討してください。CPAP 治療で脳卒中・心血管イベントが減少することが報告されています[19]

体重管理 ― 適正 BMI を維持

BMI 18.5〜24.9 を目標。腹部肥満(男性 ウエスト 85cm 以上、女性 90cm 以上)はメタボリックシンドロームの基準で、脳卒中リスクを 1.5〜2倍に高めます[1]。減量目標は 3〜6ヶ月で体重の5〜10%程度がリバウンドしにくいとされています。

飲酒 ― 節度ある適量を

少量〜中量の飲酒(純アルコール 12〜24g/日)は虚血性脳卒中リスクを若干下げる可能性があるとの報告もありますが、過剰飲酒(60g/日以上)は脳出血リスクを2.18倍に上昇させます[26]。飲酒のメリットは限定的でデメリットが大きいため、現在禁酒している方が予防目的で飲酒を始める根拠はありません。

禁煙 ― 補助薬・カウンセリングの活用

ニコチン置換療法・バレニクリン・ブプロピオン等の禁煙補助薬と専門カウンセリングを組み合わせると、自力よりも禁煙成功率が 2〜3倍高くなります。当院でも禁煙外来をご案内しています。

まとめ:運動 週150分 + 睡眠 7〜8時間 + 適正体重 + 節度ある飲酒 が4本柱です。

健康診断・脳ドックで見つけるべき項目

結論脳梗塞の 無症候性危険因子は健康診断と脳ドックの組み合わせで早期発見できます。健診=保険診療の範囲、脳ドック=自由診療で MRI/MRA まで踏み込む、と役割を分けて活用するのが効率的です。

健康診断で押さえる5項目

  1. 血圧(毎回測定。家庭血圧記録があると診断精度が上がります)
  2. 血糖・HbA1c(空腹時血糖・HbA1c)
  3. 脂質(LDL・HDL・中性脂肪)
  4. 心電図(無症候性心房細動の検出)
  5. 頸動脈エコー(ABI)(動脈硬化の評価。職場健診のオプションで選択可能)

健診で「要精査」が出た場合、当院神経内科外来(保険診療)で精査・治療開始が可能です。

脳ドックで分かること(MRI/MRA・血液検査・認知機能)

無症状の段階で 未破裂脳動脈瘤・無症候性脳梗塞・大脳白質病変・脳微小出血・頸動脈狭窄などを画像で評価できます。家族に脳卒中の既往がある方、高血圧・脂質異常症・糖尿病をお持ちの方、40歳以上で一度も MRI を撮ったことがない方は、脳ドックの対象です。

無症候期に発見された病変(白質病変・微小出血・無症候性梗塞)は、それ自体が将来の脳卒中・認知症リスクの指標となるため、見つけた段階から血圧管理を強化することで進行を抑えられる可能性があります[23]

役割分担:健診=保険診療で年1回ベース、脳ドック=自由診療で 家族歴・リスク因子複数の方が3〜5年に1回が目安。

家族歴 ― 遺伝とライフスタイルの両輪

結論第一度近親(親・兄弟姉妹・子)に脳卒中既往がある方は、ない方と比較して脳梗塞リスクが 1.3〜1.7倍。多くは 多遺伝子+共有環境の組み合わせで、適切なリスク因子管理で多くは予防可能です。

単一遺伝子疾患(まれ)

若年発症や特殊な家族集積パターンを示す場合は、CADASIL(NOTCH3 遺伝子変異による脳小血管病)、MELAS(ミトコンドリア病)、ファブリー病、Marfan 症候群、Ehlers-Danlos 症候群(血管型)など 単一遺伝子疾患の可能性があります[23]。当該疾患が疑われる場合は、専門医療機関で遺伝学的検査を含む精査が必要です。

多くの家族集積は「多遺伝子+生活習慣」

大部分の家族集積は、高血圧・脂質代謝・糖代謝の遺伝的素因食事・運動・喫煙の家族間共有の組み合わせで説明できます。「遺伝だから防げない」ではなく、遺伝的にリスクが高いからこそ早期からのリスク因子管理が効くと考えるのが正しい理解です。

家族歴がある方への一次予防アプローチ

  • 30代から家庭血圧測定を習慣化(高血圧の早期発見)
  • 40代以降は1年に1回の健診 + 5年に1回の脳ドック検討
  • 食事・運動・禁煙の3点セットを可能な範囲で実践
  • 家族の発症年齢が 50歳未満の場合は、より早期からの介入を推奨
まとめ:家族歴は「警告」ではなく「早期介入の指標」と捉えてください。

当院での予防診療(神経内科外来・脳ドック)

神経内科外来(保険診療) ― 既往者・リスク因子保有者向け

  • 初診: 問診(発症経過・既往歴・家族歴・服薬内容)、神経学的検査、必要時の血液検査
  • 再発予防: 抗血小板薬・抗凝固薬の処方と用量調整、血圧・脂質・血糖の管理
  • 退院後フォロー: 急性期病院からの紹介を受け、長期管理を引き継ぎます
  • 合併症管理: 高血圧・脂質異常症・糖尿病・心房細動を一括で管理

認知症・脳卒中ドック(自由診療) ― 未発症の家族歴・リスク因子保有者向け

3テスラMRI/MRA・頸動脈MRA・採血(動脈硬化マーカー含む)・認知機能評価・心電図を統合評価します。詳細・費用は 認知症・脳卒中ドックLP をご参照ください。

当院では行わない医療(連携対応)

  • 急性期治療(rt-PA・血栓回収療法・SCU管理): 急性発症時は救急要請(119/#7119)、その後の長期フォローで当院が関わります
  • 回復期・維持期リハビリテーション: 専門施設(回復期リハ病院・通所リハビリ)と連携
  • 外科治療(頸動脈内膜剥離術 CEA・ステント留置術 CAS): 適応がある場合は基幹病院(武蔵野赤十字病院・杏林大学病院等)へ紹介
  • 遺伝学的検査: 専門医療機関(大学病院遺伝診療部等)へ紹介

「自分はどの段階で、どこに相談すべきか分からない」という方は、まず神経内科外来でご相談ください。状況を整理し、当院対応・紹介先を含めた次の一歩をご提案します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 脳梗塞の予防に最も効果的な薬は?

A: 一次予防では「最も効果的な薬」というより、個別のリスク因子に応じた薬(降圧薬・スタチン・血糖降下薬・抗凝固薬)の組み合わせが効きます。再発予防では 抗血小板薬または抗凝固薬の継続が決定的に重要で、自己中断は最大の再発リスクです[20]

Q2. アスピリンを毎日飲めば脳梗塞は予防できますか?

A: 既往者(二次予防)ではアスピリン継続で再発が約20%減少しますが、未発症者(一次予防)に対するアスピリン投与のメリットは限定的で、出血リスクとの兼ね合いで慎重に検討します[20][21]。一次予防目的での自己判断によるアスピリン服用は推奨されません。担当医にご相談ください。

Q3. 親が脳梗塞でした。自分の発症リスクは?

A: 第一度近親に脳卒中既往があると 脳梗塞リスクは1.3〜1.7倍。ただし、これは「絶対に発症する」という意味ではなく、リスク因子(高血圧・脂質・血糖・喫煙)を整えることで多くは予防可能です。家族歴がある方は 30代から家庭血圧測定、40代以降に脳ドック検討をおすすめします。

Q4. 脳梗塞の再発率はどのくらい?

A: 一般的に 1年以内の再発率は約7〜10%、5年累積では20〜30%とされています(EXPRESS 試験・日本脳卒中データバンク等)[22][30]。最初の30日が最もリスクが高く、薬剤継続+リスク因子管理で再発率を大幅に下げられます。

Q5. 食事で「これだけは絶対避けるべき」というものはありますか?

A: 「絶対避けるべき」というより、過剰摂取を避けるという考え方が現実的です。とくに気をつけたいのは 食塩(目標 6g/日未満)、加工肉、トランス脂肪酸、過剰飲酒。完全排除より頻度・量のコントロールがストレスなく続きます[8][28]

Q6. ワルファリンと DOAC、どちらを選ぶべきですか?

A: 心房細動による脳梗塞予防では、原則として DOAC(アピキサバン・リバーロキサバン・ダビガトラン・エドキサバン)が第一選択です(機械弁・中等度以上の僧帽弁狭窄症等を除く)。DOAC はワルファリンと比較して 頭蓋内出血リスクが52%低い(メタ分析、Lancet 2014)[17]。食事制限・INR モニタリングが不要なのも大きな利点です。腎機能や薬価等を考慮して個別に選択します。

Q7. 高血圧の薬を飲み始めたら一生やめられないのですか?

A: 多くの場合は継続が望ましいですが、大幅な減量・運動・減塩で血圧が改善した場合は減量・中止できることもあります。ただし自己判断による中断はリバウンドや脳卒中リスク上昇につながるため、必ず担当医と相談してください。

Q8. 何歳から脳ドックを受けるべきですか?

A: 一般的には 40歳以上が目安。家族歴(50歳未満発症の親・兄弟)、長期間の高血圧・喫煙、複数のリスク因子保有者は 30代後半からの検討も合理的です。健診で異常がない方も、5〜10年に1回の評価で長期トレンドを把握できます。

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この記事の監修者

院長大﨑 雅央(Masao Osaki)

吉祥寺おおさき内科・脳神経内科
日本神経学会 神経内科専門医・指導医/日本内科学会 総合内科専門医

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参考文献

参考文献を開く/閉じる(主要英語論文+ガイドライン)
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