【専門医監修】もの忘れと認知症の違い|MCI・検査・治療・受診の目安

60秒でわかるもの忘れ・認知症

  • もの忘れがあっても、すぐに認知症とは限りません。加齢による変化、MCI(軽度認知障害)、認知症は、日常生活への影響と検査結果を合わせて見分けます。
  • MCIは「認知機能は落ちているが、日常生活はほぼ自立している段階」です。この時期に気づいて原因を整理すると、その後の対策を立てやすくなります。
  • 認知症にはいくつか種類があります。アルツハイマー病だけでなく、血管性認知症、レビー小体型認知症、正常圧水頭症など、治療や対応が異なります。
  • 確認は問診・認知機能テスト・血液検査・MRIが基本です。必要に応じて脳血流SPECTやアミロイドPETなどを追加します。
  • 治療は早期からの生活習慣病管理と支援が土台です。病型に応じて標準薬や、早期アルツハイマー病での抗アミロイドβ抗体を検討します。

早めに確認を考えたいサイン

  • 同じことを何度も聞く、約束や服薬を忘れる頻度が増えた
  • 買い物・金銭管理・段取り・運転で以前より不安が増えた
  • 歩きにくさ、幻視、急な性格変化、昼夜逆転など「もの忘れ以外」の変化もある
  • ご本人は軽い自覚でも、ご家族がはっきり変化に気づいている
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もの忘れは年齢とともに増えることがありますが、すべてが認知症ではありません。一方で、出来事そのものを忘れる、同じことを何度も聞く、家事や金銭管理に支障が出るといった変化は、MCI(軽度認知障害)や認知症のサインであることがあります。

このページでは、もの忘れと認知症の違い、認知症の主な種類、検査、治療、早めに相談したい目安を、脳神経内科専門医の立場から整理します。脳の状態や将来のリスクを早めに確認したい方には、認知症・脳卒中ドックという選択肢もあります。

もの忘れと認知症の違い

結論「もの忘れがある」こと自体は珍しくありませんが、出来事そのものを忘れる日常生活に支障が出るといった変化は、MCIや認知症を考えるきっかけになります。

  • 年相応のもの忘れは、ご本人が思い出せないことに気づけることが多いです。
  • MCIでは検査で低下が見つかっても、日常生活はおおむね保たれています。
  • 家事・仕事・金銭管理に支障が出てくると、認知症の可能性が高まります。

もの忘れは加齢でどなたにも起こり得ます(例:鍵の置き場所を思い出せない)。
一方、軽度認知障害(MCI)は「検査で認知機能の低下が確認できる」段階ですが、日常生活(ADL)は自立しています。さらに進んで、仕事・家事・金銭管理などに支障が出ると認知症と診断されます。

また、高血圧・脂質異常・糖尿病・睡眠時無呼吸・難聴・喫煙・運動不足対策できるリスクです。早期から整えることが将来の認知症リスク低減につながります。[10]

年相応のもの忘れ・MCI・認知症の比較

年相応のもの忘れ軽度認知障害(MCI)認知症
ご本人の自覚「あ、忘れてた」と気づく自覚あり、不安を感じることも自覚が薄れることがある
ご家族の気づきあまり気にならない「最近忘れっぽい」と感じ始める明らかな変化に気づく
日常生活への影響支障なし基本的に自立(一部非効率になることも)仕事・家事・金銭管理に支障が出る
検査での認知機能年齢相当同年代より低下がみられる明らかな低下
確認の目安気になれば相談早めの評価をおすすめできるだけ早く専門的な評価を
まとめると:「物の置き場所を忘れる」は加齢でも起こりますが、出来事自体を忘れ生活に支障が出るのは要注意。早期から修正可能因子(血圧・脂質・糖代謝・睡眠・聴こえ・禁煙・運動)を整えるのが近道です。

まだ日常生活は保たれているものの、MCIかどうかを早めに確認したい方は、認知機能評価を含む認知症・脳卒中ドックもご検討ください。

早期の状態確認をご希望の方はこちら

認知症リスクの低減(修正可能因子)

結論認知症のリスクは完全には防げませんが、血圧・脂質・血糖・睡眠・聴こえ・禁煙・運動など、早めに整えられる要因が少なくありません。

  • 「年齢のせいだから何もできない」とは限らず、生活習慣病の管理が大切です。
  • 難聴や睡眠時無呼吸など、見逃されやすい要因にも介入の余地があります。
  • 複数の要因をまとめて評価すると、再現性のある対策につなげやすくなります。

当院はLancet Standing Commission 2024に基づき、次の項目を系統的に評価・介入いたします。[10]

  • 高血圧:生活改善+お薬で厳格に血圧を管理します。[12]
  • 脂質異常症(高LDLコレステロール):スタチン等で動脈硬化の進行を抑える治療を行います。※Lancet 2024で独立した危険因子として新たに追加されました。[10]
  • 糖尿病:血糖コントロールと合併症予防を行います。
  • 視力低下:未矯正の視力低下は認知症リスクを高めます。眼鏡や白内障手術などによる適切な矯正が大切です。※Lancet 2024で新たに追加されました。[10]
  • 難聴補聴器の適切な使用を耳鼻科と連携して進めます(大規模試験の成果あり)。[7]
  • 睡眠時無呼吸CPAP等で睡眠の質と血圧を改善します。
  • 喫煙・過量飲酒・運動不足:禁煙支援、節酒、有酸素運動+筋力・バランス訓練を勧めます。
  • 社会的孤立・抑うつ:活動や交流の機会づくり、必要に応じて心のケアをご提案します。
まとめると:まず血圧、次いで脂質・血糖・睡眠(無呼吸)・聴こえ・見え方の是正が柱。禁煙と運動の積み上げが、将来の認知機能低下を減らす土台になります。

軽度認知障害(MCI)

結論MCIは、認知機能の低下はあるが、日常生活はほぼ自立している段階です。認知症ではありませんが、原因を整理して経過を見ることに意味があります。

  • 全員が認知症へ進むわけではなく、改善したり安定したりする方もいます。
  • 背景にアルツハイマー病があるかどうかで、今後の説明や治療の考え方が変わります。
  • 運動、睡眠、聴こえ、生活習慣病の管理を早めに整える価値があります。

MCIのポイント

  • ご本人・ご家族が「前より物忘れが増えた」と感じ、検査でも同年代より低い成績がみられます。
  • 日常生活(ADL)は自立しています(買い物や家計管理などで少し非効率になることはあります)。
  • 認知症の基準は満たしません(うつ病や薬の影響、内科疾患など他の原因を確認します)。[11]

アルツハイマー病が背景のMCIでは、アミロイドやタウの検査が陽性になることがあります。[9]

MCIと認知症の違い

MCIでは検査上の認知機能低下が確認できますが、日常生活は基本的に自立しています。認知症は仕事・家事・金銭管理などに支障が出る段階です。
MCIの方が全員認知症に進むわけではなく、適切な対策を行うことで改善する方もいらっしゃいます。そのため、MCIの段階で気づき、評価を受けることが大切です。[11]

MCIは治療できるのか

MCIそのものを治す確立されたお薬はまだありませんが、以下の総合的な対策が推奨されています。[11][10]

  • 運動:中等度の有酸素運動を中心に、筋力・バランス訓練を組み合わせます。
  • 認知刺激:会話・学習活動などにより認知機能の維持を目指します。
  • 生活習慣病の管理:高血圧・脂質異常症・糖尿病・睡眠時無呼吸の是正が認知機能低下のリスク低減につながります。
  • 補聴器の活用:難聴がある場合、補聴器の使用が認知機能の低下を緩やかにする可能性があります。[7]

背景にアルツハイマー病がある場合は、抗アミロイドβ抗体(レカネマブ・ドナネマブ)の対象となることがあります。[4][5]

MCIの段階で確認しておきたいこと

  • 認知機能の現在地:検査でどの領域(記憶・注意・言語・視空間など)に低下があるかを把握します。
  • 脳の状態:MRIで海馬の萎縮や血管の変化がないかを確認します。
  • 修正可能なリスク:血圧・脂質・血糖・睡眠・聴力など、介入できる要因を整理します。
  • 背景の病態:必要に応じてアミロイドPETや髄液検査で、アルツハイマー病の有無を評価します。[9]

MCIの評価で行う検査

  • 問診:ご本人・ご家族から、いつから・どのように変化したかを伺います。
  • 認知機能テスト:HDS-R・MMSE・MoCA-Jなどで総合的に評価します。
  • 血液検査:甲状腺・ビタミンB12・葉酸など、治療可能な原因を除外します。
  • MRI:脳の萎縮パターンや血管性の変化を確認します。
  • 核医学検査:必要に応じて脳血流SPECT・DaT-SPECTなどを追加します。

MCIの経過と定期フォロー

  • 進む方もいれば一時的に改善する方もいらっしゃるため、定期的なフォローが大切です。[11]
  • 当院はLancet 2024に準拠し、高血圧・脂質異常症などを認知症の修正可能因子として治療いたします。詳しくは「認知症の修正可能な危険因子」をご参照ください。[10]
まとめると:MCIは自立は保たれつつ認知が下がる段階。原因検索と定期フォロー、そして運動・睡眠・聴こえ・生活習慣病治療の総合対策が鍵です。

MCIの段階で認知機能や脳画像、血管リスクを早めに確認したい方には、認知症・脳卒中ドックで包括的な評価を受けることができます。

認知機能評価を含む認知症・脳卒中ドック

認知症の主な種類

結論認知症は1つの病気ではなく、原因ごとに症状の出方・検査・治療方針が異なります。まずはどのタイプが背景にありそうかを整理することが大切です。

  • アルツハイマー病は「最近のことを忘れやすい」変化から始まることが多いです。
  • レビー小体型認知症は幻視や注意の波、歩きづらさなどが手がかりになります。
  • 正常圧水頭症のように、治療で改善が期待できるタイプもあります。

疾患の概要:脳にアミロイドβリン酸化タウがたまり、神経細胞の働きが少しずつ弱っていく病気(神経変性疾患)です。現在はA/T/N(A=アミロイド、T=タウ、N=神経の萎縮・機能低下)という生物学的な考え方で病態を評価します。[9]

  • 主な症状:最近の出来事を忘れやすくなることから始まり、進行すると言葉・視空間認知・段取りの力も下がります。
  • 画像/検査MRIで海馬の萎縮、脳血流SPECTで頭頂部〜後部帯状回の血流低下などが参考になります。アミロイドPET髄液検査は、抗アミロイドβ抗体の適用判定目的に限り保険適用です。[9]
  • 治療認知機能と生活機能を保つことを目的とした標準薬(ドネペジル等)に加え、早期の段階では抗アミロイドβ抗体の選択肢があります。[8][4][5]
まとめると:ADはA/T/Nで評価し、標準薬+必要に応じ抗アミロイドβ抗体を検討。画像・バイオマーカーで裏づけます。

2. 血管性認知症(VaD)

疾患の概要:脳の血管の病気(脳梗塞・小さな出血・白質の傷み など)が原因で起こる認知症です。注意力や計画を立てる力の低下、歩きにくさ、階段状に悪くなる経過がみられることがあります。

  • 診断:認知機能の低下に加え、画像で原因となる血管性の変化が確認できることが大切です。
  • 対策血圧を厳格に管理すると認知機能低下の予防につながる可能性があります。糖尿病や脂質異常症の治療、禁煙、心房細動の治療も重要です。[12]
  • 治療の考え方:再発予防(抗血小板薬・抗凝固薬)と生活習慣の改善が中心です。認知症薬は第一選択ではありません(混合型では検討します)。
まとめると:VaDでは二次予防+血圧厳格化が要。糖・脂質・不整脈対策と禁煙も同時並行で進めます。

3. レビー小体型認知症(DLB)

疾患の概要αシヌクレインというたんぱく質が脳にたまり、注意や覚醒の波が大きく変動する実際にはないものがはっきり見える(幻視)手足のふるえやこわばり(パーキンソン症状)夢の内容に合わせて体が動く睡眠障害(RBD)などが出やすい病気です。起立性低血圧や便秘などの自律神経症状がみられることもあります。[1]

  • 検査の目安DaT‑SPECT(ドパミントランスポーター)低下、MIBG心筋シンチ低下、レム睡眠行動異常症があると診断を後押しします。[1]
  • 画像の特徴MRIでは内側側頭葉の萎縮が比較的軽いことがあり、脳血流SPECTでは後頭葉優位の血流低下が参考所見です。[1]
  • 治療コリンエステラーゼ阻害薬(例:ドネペジル)が中心。抗精神病薬は副作用が出やすく最小限に。パーキンソン症状が強い場合はレボドパ等を少量から慎重に。[8]
まとめると:DLBは幻視・注意変動・RBD・パーキンソン症状が鍵。画像/核医学を組み合わせ、コリンエステラーゼ阻害薬中心で慎重に治療します。

4. 前頭側頭葉変性症(FTLD)

疾患の概要:脳の前頭葉・側頭葉が主に影響を受ける病気で、性格や行動の変化(脱抑制・無関心・常同行動など)ことばの障害が目立ちます。比較的若い世代(50〜60代)で発症することもあります。

  • 臨床型行動変異型FTD原発性進行性失語(非流暢/文法障害型・意味変化型・ロゴペニック型)があります。[14]
  • 支援の考え方:お薬の効果は限定的なことが多いため、環境調整行動・言語のリハビリご家族のサポートを重視します。[8]
まとめると:FTLDは行動と言語の問題が前面に。環境調整とリハビリ、家族支援が治療の中心です。

5. 特発性正常圧水頭症(iNPH)

疾患の概要:脳脊髄液の流れがうまくいかず脳室が広がることで、歩幅が小さくなる/すり足になるもの忘れ尿がもれる三つの症状が出やすい病気です。治療可能な認知症の代表であり、正確に診断して適切な治療へつなげることがとても重要です。[15]

  • 画像所見DESH(脳室の拡大+頭頂部のすき間が狭く見える形)などを確認します。[15]
  • 診断手順タップテスト(腰から少量の髄液を抜いて歩きやすさ等が改善するか確認)や持続排液で反応をみます。[15]
  • 治療:反応が確認できれば、シャント手術で歩行・認知・排尿の改善が期待できます。[15]
まとめると:iNPHは治療で良くなる可能性があるタイプ。DESHの確認とタップテスト→シャント手術まで一連の流れが重要です。

認知症の診断の進め方と評価

結論診断は問診だけでも画像だけでも決まりません。ご本人・ご家族からの情報、認知機能テスト、血液検査、MRIを組み合わせて総合的に判断します。

  • 「いつから」「どのように」変わったかは診断の手がかりとしてとても重要です。
  • 治療できる内科的な原因や薬の影響が隠れていないかも確認します。
  • 病型に応じて核医学検査やアミロイドPETなどを追加します。
  • 問診(ご本人・ご家族):いつから・どのように変化したか、睡眠やお薬、気分の変化などを丁寧に伺います。
  • 認知機能テストHDS‑R・MMSE・MoCA‑Jなどで記憶・注意・言語・視空間などを評価します。
  • 血液検査:貧血・甲状腺・ビタミンB1/B12・肝腎機能など、他の原因がないか確認します。
  • 画像検査MRIを基本に、必要に応じて脳血流SPECT・DaT‑SPECT/MIBGなどを追加します。[1]
  • バイオマーカーアミロイドPET髄液検査抗アミロイドβ抗体の適用判定目的に限り保険適用)。[9]
  • 睡眠睡眠時無呼吸の有無を評価するため、必要に応じて在宅での簡易睡眠検査を行います。
まとめると:問診+認知テスト+血液・画像を基本に、必要時は核医学・バイオマーカーまで。睡眠評価も見逃しません。

検査についてお考えの方へ

認知機能や脳の状態が気になる方には、当院の認知症・脳卒中ドックで包括的な評価を受けることができます。

認知症・脳卒中ドックでわかること

  • 認知機能の現在地:神経内科専門医による認知機能検査で客観的に評価
  • 脳の状態:MRIで海馬の萎縮や血管の変化を確認
  • 将来のリスク:血圧・脂質・血糖など修正可能な危険因子をまとめて評価
  • ご家族に認知症の方がいて、早めの状態確認を希望される方にも

認知症・脳卒中ドックについて詳しく見る

治療(非薬物+薬物+病態修飾薬)

結論治療は「薬だけ」ではなく、生活習慣病の管理・運動・睡眠・環境調整を土台に、病型に応じた標準薬や病態修飾薬を組み合わせて考えます。

  • まずは進行を早める要因を減らし、生活機能を保ちやすくすることが大切です。
  • アルツハイマー病やレビー小体型など、病型で使う薬と注意点が異なります。
  • 早期アルツハイマー病では、抗アミロイドβ抗体を検討できる場合があります。

1)薬を使わない支援

  • 運動:中等度の有酸素運動に、筋力・バランス訓練を組み合わせます。
  • 認知刺激(CST):会話や学習活動により、気分や生活の質の改善も期待できます。[8]
  • 聴こえ・見え方の最適化:補聴器の活用は認知の低下を緩やかにする可能性があります。[7]
  • 睡眠時無呼吸の管理CPAPなどで睡眠の質と血圧を整えます。[10]
まとめると:運動・認知刺激・聴こえの最適化・睡眠管理はすべて効果が見込める土台療法です。

2)認知症リスク低減のための治療(修正可能因子への薬物介入)

  • 高血圧:個別目標を定め、必要に応じて併用療法で厳格に降圧します。[12]
  • 脂質異常症:スタチン等で心血管リスクを低減します。
  • 糖尿病:生活指導+薬物療法で血糖を管理します。

当院の方針は「認知症の修正可能な危険因子(Lancet 2024準拠)」をご参照ください。[10]

まとめると:血圧・脂質・血糖の薬物介入は、将来のイベントと認知低下の両面で意義があります。

3)認知機能・生活機能の維持を目的とした標準薬物療法

  • アルツハイマー病ドネペジル・リバスチグミン・ガランタミンメマンチン(状態に応じて選択)。[8]
  • レビー小体型ドネペジルが基本(日本でDLBの効能あり)。抗精神病薬は最小限に。[8]
  • 血管性:認知症薬は第一選択ではなく、まずは血管リスクの是正を重視(混合型は検討)。[8]
  • 前頭側頭葉変性症:薬効は限定的。環境調整と家族支援を重視。[8]
まとめると:標準薬は維持と安定が目的。疾患ごとに適応と注意点を確認します。

4)病気の進みを遅らせる治療(抗アミロイドβ抗体)

対象軽度認知障害(MCI)または軽度のアルツハイマー病で、アミロイド陽性が確認できた方。
国内承認レカネマブ(レケンビ®)/ドナネマブ(ケサンラ®)。[4][6]
アミロイドPET/髄液検査適用判定目的で保険適用。最適使用推進ガイドラインに準拠します。

安全に使うための準備

  • アミロイド陽性の確認(PET/髄液検査)。
  • ApoE ε4の説明と検査ARIA(アミロイド関連画像異常)のリスクに関与。[4][5]
  • MRIモニタリング:開始前に基準画像、レカネマブは5・7・14回目前、ドナネマブは2・3・4回目前に確認。[4][5]
  • 併用薬の確認:抗凝固薬・抗血小板薬の出血リスクに配慮。[4][5]

治療の進め方(概要)

  • レカネマブ2週ごとに点滴。まず18か月しっかり行い、その後は状況に応じて調整。[4]
  • ドナネマブ4週ごとに点滴。画像でアミロイドプラークが十分に減ったら投与完了。[3][5]

効果と注意点

  • 効果:大きく改善する薬ではなく、進行の速さを抑えることを目指します(例:レカネマブは18か月でCDR‑SBの進行を約27%抑制)。[2][3]
  • 副作用(ARIA)脳のむくみ・微小出血など。頭痛・めまい・失語・脱力等に注意し、MRIで確認。ApoE ε4保有でリスク↑[4][5]
項目レカネマブドナネマブ
対象MCI/軽度AD、アミロイド陽性
投与間隔2週ごと点滴(まず18か月)[4]4週ごと点滴(プラーク除去確認で完了)[5]
主な目的脳のアミロイドを減らし、進行を緩やかにする。[2][3]
主な注意ARIA(脳のむくみ・微小出血)に注意。定期MRIで安全確認。/ ApoE ε4保有でリスク↑[4][5]
まとめると:抗アミロイドβ抗体早期ADで進行を緩やかにする治療。適正な適応判定MRIモニタリングが安全運用の要です。

よくある質問(FAQ)

Q1.MCIと認知症の違いは何ですか?

A:MCIは検査で認知機能の低下が確認できますが、日常生活は基本的に自立しています。認知症は仕事・家事・金銭管理などに支障が出る段階です。MCIの方が全員認知症に進むわけではなく、改善する方もいらっしゃいます[11][9]

Q2.MCIは治療できますか?

A:MCIそのものを治す確立されたお薬はまだありませんが、運動・認知刺激・生活習慣病の管理などの総合的な対策が重要です。背景にアルツハイマー病がある場合は、抗アミロイドβ抗体の対象になることがあります。[11][4]

Q3.もの忘れがあるとき、いつ確認すればよいですか?

A:「同じことを何度も聞く」「約束を忘れる」「ものの置き場所がわからない頻度が増えた」など、ご本人やご家族が気になったタイミングでの確認をおすすめします。認知症・脳卒中ドックでは、認知機能・MRI・血管リスクをまとめて評価できます。

Q4.認知症が心配なとき、どのような検査をしますか?

A:問診、認知機能テスト(HDS-R・MMSE・MoCA-Jなど)、血液検査、MRIによる画像検査を基本に行います。必要に応じて脳血流SPECTやバイオマーカー検査を追加します。[9]

Q5.早期確認のために認知症・脳卒中ドックを受ける意味はありますか?

A:まだ症状は軽いが脳の状態を確認しておきたい方には、認知機能評価・MRI・血管リスク評価などを含む認知症・脳卒中ドックが適しています。神経内科専門医による包括的な評価を一度に受けることができます。
認知症・脳卒中ドックの詳細はこちら

Q6.年相応の物忘れと認知症はどう違いますか?

A:人名や物の場所が思い出しにくいだけで生活に支障がない場合は、年相応のこともあります。出来事自体を忘れる・生活に支障が出る場合は、MCIや認知症の可能性があります(診断は問診・検査・画像の総合評価で行います)。[11][9]

Q7.抗アミロイドβ抗体は誰でも使えますか?

A:対象はMCI/軽度アルツハイマー病アミロイド陽性の方に限られます。MRIでの見守りARIAへの注意が必要です。

Q8.レケンビ®(レカネマブ)の費用はどの程度かかりますか?

A:自己負担割合(1〜3割)や高額療養費制度、年齢・所得、公費の有無で異なります。薬剤費に加え点滴管理料・定期MRI・適用判定の検査が含まれます。※レケンビ®は2週ごとの点滴と定期画像モニタリングが必要です。

Q9.睡眠時無呼吸を治すと認知機能も良くなりますか?

A:まずは眠気や血圧の改善が期待でき、長期的にも脳の健康に良い影響が見込めます。必要に応じて検査・治療をご一緒に検討いたします。[10]

Q10.家族ができるサポートは?

A:予定やお薬の見える化転倒しにくい住環境づくり、活動・交流の機会補聴器/眼鏡の調整睡眠リズムの調整などが役立ちます。[8][7]

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この記事の監修者

院長 大﨑 雅央(Masao Osaki)

吉祥寺おおさき内科・脳神経内科
日本神経学会 神経内科専門医/日本内科学会 総合内科専門医

参考文献

参考文献を開く/閉じる
  • [1] McKeith IG, et al. Diagnosis and management of dementia with Lewy bodies: Fourth consensus report of the DLB Consortium. Neurology. 2017. PMC
  • [2] van Dyck CH, et al. Lecanemab in Early Alzheimer’s Disease (CLARITY‑AD). N Engl J Med. 2023;388:9‑21. NEJM
  • [3] Sims JR, et al. Donanemab in Early Symptomatic Alzheimer Disease (TRAILBLAZER‑ALZ 2). JAMA. 2023;330(6):512‑527. PubMed
  • [4] LEQEMBI® (lecanemab) Prescribing Information. 2024. PDF
  • [5] KISUNLA™ (donanemab‑azbt) Prescribing Information. 2024. PDF
  • [6] 厚生労働省/中医協資料「ケサンラ(ドナネマブ)薬価収載時の対応」2024/9/24. PDF
  • [7] Lin FR, et al. Hearing intervention and cognitive decline in older adults: ACHIEVE randomized trial. Lancet. 2023;402:568‑579. PubMed
  • [8] NICE Guideline NG97: Dementia: assessment, management and support. 2018. NICE
  • [9] Jack CR Jr, et al. 2024 NIA‑AA Research Framework: Toward a biological definition of Alzheimer’s disease. Alzheimers Dement. 2024. PubMed
  • [10] Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet Standing Commission. Lancet. 2024;404:572‑628. Lancet
  • [11] Petersen RC, et al. Practice guideline update summary: Mild cognitive impairment. Neurology. 2018;90:126‑135. PMC
  • [12] Williamson JD, et al. Intensive vs Standard Blood Pressure Control and Probable Dementia/MCI: SPRINT‑MIND. JAMA. 2019;321(6):553‑561. JAMA
  • [13] Neumann M, et al. A new classification scheme for FTLD‑TDP and related pathology. Acta Neuropathol. 2021. PMC
  • [14] Gorno‑Tempini ML, et al. Classification of primary progressive aphasia and its variants. Neurology. 2011;76:1006‑1014. PMC
  • [15] Nakajima M, et al. Guidelines for Management of Idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus (3rd ed.). Neurol Med Chir (Tokyo). 2021. PMC