慢性虚血性変化(白質高信号)・大脳白質病変|原因・将来リスクと対策

「①どのくらい悪いのか ②このまま仕事や生活を続けてよいのか ③薬は必要なのか」。
慢性虚血性変化(白質高信号)と告げられた方の多くが、この3つの不安を感じることが多いです。

こうした変化そのものは、多くの場合いますぐ命に関わる“緊急事態”ではなく、血圧や生活習慣を見直すきっかけになるサインと考えられています。[4][5]

吉祥寺おおさき内科・脳神経内科(吉祥寺駅徒歩1分)では、脳神経内科専門医/総合内科専門医の院長が、脳ドックや健診で「慢性虚血性変化」「白質高信号」「大脳白質病変」「微小出血」などを指摘された方を中心に診療しています。
初診ではリスクを評価した上で、「いま必要なこと」と「様子を見てよいこと」を明確にしたうえで、ご負担の少ない通院ペースで続けられる予防プランをご提案します。

こんな方は一度ご相談ください

  • 脳ドックや健診のMRIで「慢性虚血性変化」「白質高信号」「大脳白質病変」と記載され、説明を受けたものの不安が残っている方
  • 高血圧・糖尿病・脂質異常症などがあり、将来の脳卒中や認知機能低下のリスクをできるだけ減らしたいと考えている方
  • どこまで生活習慣を見直すべきか、薬を増やすべきかを専門医と一緒に整理したい方
詳しく見る(用語・診療の進め方・治療の考え方)

● 用語について
脳ドックなどで「慢性虚血性変化」と書かれる所見は、報告書によっては「大脳白質病変」と表現されることがあります。ただし、大脳白質病変という言葉には、免疫の病気(多発性硬化症・視神経脊髄炎など)による白質病変も含まれるため、医学的には少し意味が異なります。本ページでは脳の細い血管が原因の慢性虚血性変化(白質高信号)を中心に解説いたします。

● 診療の進め方
初診では病歴・家庭血圧の確認、脳神経内科の診察、採血(代謝・腎機能など)を行い、必要に応じてMRIを手配いたします。過去画像との比較を踏まえて、生活習慣と薬物治療の計画を個別にご提案いたします。[3]

● 治療の考え方
慢性虚血性変化(白質高信号)だけを理由に抗血小板薬を新しく始めることは通常は推奨されません。まずは血圧管理・禁煙・運動・睡眠・減塩が基本で、適応があればより厳格な血圧管理や脂質管理も検討いたします。[3][4]

要点サマリー(このページで分かること)

  • 「慢性虚血性変化(白質高信号)・大脳白質病変」とは何か、どのようにMRIで見つかり、中年以降では多くが血管性の変化であることが分かります。
  • 高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙などのリスク因子と、将来の脳卒中や認知機能低下のリスクとの関係を、こわがりすぎず・軽く見すぎない目安として整理できます。
  • 血圧管理・運動・禁煙・睡眠・減塩・食事の工夫など、今日から取り組める具体的な対策と、薬物治療の考え方の全体像をつかんでいただけます。
  • 当院での評価・検査・生活習慣支援の流れを知ることで、「どのタイミングで受診すればよいか」のイメージを持っていただけます。
このページで分かることの全体像 慢性虚血性変化(白質高信号)の意味を理解し、リスク因子と将来リスクを整理したうえで、 血圧・生活習慣・薬物治療などの対策につなげていく流れを示した模式図です。 「所見の意味」から「将来リスクと対策」までの流れ MRIで見つかる 慢性虚血性変化 白質高信号・ 大脳白質病変 血圧・血糖・脂質 喫煙・腎機能など 生活習慣と リスク因子を整理 脳卒中・認知機能 低下のリスクを こわがりすぎず 軽く見すぎず把握 血圧管理・生活習慣 薬物治療の検討 主治医と相談し 継続的にフォロー

目次

慢性虚血性変化(白質高信号)・大脳白質病変とは

慢性虚血性変化(白質高信号)とは、MRI(FLAIR/T2強調像)で大脳白質に高信号域(白質病変)がみられる状態のことです。背景には、長い期間にわたる細い血管の血流低下などが関係すると考えられ、脳小血管病(SVD)の目じるしとみなされます。日常診療では「大脳白質病変」と説明されることもありますが、免疫の病気による白質病変とは区別して評価いたします。

よくあるシチュエーション

  • 人間ドックや脳ドックのMRIレポートに「慢性虚血性変化」「白質高信号」と書かれていた。
  • 頭痛やめまいで撮ったMRIで、説明の最後に「年齢相応の白質変化」などと付記された。
  • 症状はほとんどないが、「このまま放っておいてよいのか」気になっている。
まとめると:慢性虚血性変化(白質高信号)脳の細い血管が原因のサインで、MRIのFLAIR/T2で白質の信号が上がって見える部分のことです。一般には「大脳白質病変」と言われますが、免疫性の白質病変とは別ものです。

慢性虚血性変化(白質高信号)の原因(血管性か免疫性か)

大脳白質の高信号には、大きく分けて2つのタイプがあります。
1つ目は脳の細い血管が原因で起こるタイプ(本ページの慢性虚血性変化(白質高信号))。
2つ目は免疫の病気で神経を覆う膜(髄鞘)が傷むことで起こるタイプ(脱髄:例として多発性硬化症視神経脊髄炎など)です。
ここでは、患者さん向けに「ざっくりとした見分け方の目安」をまとめます(自己判断は禁物であり、最終的な診断は脳神経内科医が行います)。

とくに40〜50代以降になってから初めて脳ドックやMRIで「慢性虚血性変化」「白質高信号」「年齢相応の変化」などと指摘された場合、多くは高血圧などの血管リスクに伴う変化であり、脱髄性疾患である可能性は高くありません。もし画像上や症状から脱髄性疾患が疑われる場合には、放射線科医や主治医からその旨が説明され、追加検査(造影MRIや血液検査・髄液検査など)が提案されることが一般的です。

下の表は、「血管性」と「免疫性」の違いをイメージしていただくためのもので、ご自身がどちらかを自己判断するチェック表ではありません。

高信号の見え方の違い(一般的な目安)
ポイント 血管性の白質高信号(慢性虚血性変化) 免疫性による白質病変(脱髄)
年齢の傾向 中年〜高齢の方に多いです。 比較的若い世代〜中年にみられることがあります。
できやすい場所 脳の深い部分脳室の近くに多く、脳の表面に近い場所は少なめです。 脳の表面に近い場所脳梁(のうりょう)などに生じやすいことがあります。
形のイメージ 最初は点状で、徐々にまとまりになることがあります。 はっきりした楕円形の病変が複数みられることがあります。
一緒にみられやすい所見 ごく小さな古い脳梗塞の跡や、ごく小さな出血(微小出血)が一緒にみられることがあります。 視力低下や、手足のしびれ・脱力などのはっきりした発作的な症状がきっかけになることがあります。
診断の進め方 血圧や生活習慣の確認が大切です。 神経の炎症がないかを血液や髄液の検査で確かめることがあります。

※上表はあくまで一般的な目安です。自己判断は避けていただき、気になる所見がある場合は脳神経内科でご相談ください。

まとめると:大脳白質の高信号血管性のことも、免疫性のこともありますが、中年以降に初めて見つかった場合は、多くが血管性の慢性虚血性変化です場所・形・症状を手がかりに、脳神経内科医が検査を組み合わせて丁寧に見分けます。

慢性虚血性変化(白質高信号)のリスク・関連因子

慢性虚血性変化(白質高信号)加齢とともに増えやすく、なかでも高血圧が最も強い関連因子です。ほかに糖尿病・脂質異常症・喫煙・慢性腎臓病などの病気や、運動不足・睡眠の質の低下・過度の飲酒・高塩分食といった生活習慣が関係すると報告されています。[5][6]

主要リスク因子と当院での確認・対応
リスク因子 確認ポイント 当院での対応
高血圧 家庭血圧(朝・就寝前)を1〜2週間記録していただきます。 目標の個別設定、降圧薬の最適化、生活調整をご提案いたします。
糖尿病・脂質異常 HbA1c、LDL/HDL/TG、脂肪肝などを確認いたします。 薬物治療の調整と、栄養・運動を併用して進めます。
喫煙・飲酒 本数・飲酒頻度、禁煙歴を確認いたします。 禁煙支援、減酒を提案します。
生活習慣 運動時間、睡眠の質、食塩摂取を確認いたします。 行動計画(和食ベースの減塩+野菜・魚・大豆製品)を提案します。

ご自身でも確認しやすいよう、リスク因子のセルフチェック表を用意しました。

ご自身でできるリスク因子セルフチェック
チェック項目 いまの状態 メモ欄
家庭血圧(朝)で135/85mmHg以上が多い
(例)測る時間を固定する など
家庭血圧(就寝前)で125/75mmHg以上が多い
糖尿病・境界型、またはHbA1c高めと言われている
LDLコレステロール120mg/dL以上が続いている
喫煙(電子タバコを含む)をしている
(例)禁煙外来を調べる
週の運動時間が60分未満である
睡眠の質に不満がある(途中で何度も目が覚める 等)
濃い味・外食・加工食品が多いと感じる
まとめると:一番の対策は血圧です。代謝の病気や喫煙・生活習慣も一緒に整えることが大切です。

予後・将来リスク(脳卒中/認知機能)

多くの研究で、慢性虚血性変化(白質高信号)の程度が強いほど、または増え方が速いほど、将来の脳卒中認知症死亡のリスクが高くなる傾向が示されています。認知機能では、とくに実行機能や処理速度への影響が指摘されています。[6][7]

ただし、これは「必ず脳卒中や認知症になる」という意味ではありません。
早めに見つかったことで、血圧・生活習慣・薬物治療を整えるチャンスが得られたと考えていただくことが大切です。

エビデンスの要点(少し専門的な内容です)

  • 認知症リスク:慢性虚血性変化(白質高信号)の存在・増加は全認知症(アルツハイマー型・血管性)のリスク上昇と関連します。[7]
  • 脳卒中・死亡:慢性虚血性変化(白質高信号)・ラクナ梗塞などは、将来の脳卒中・要介助・死亡リスクの増加と関連します。[5]
  • 降圧の効果:より厳格な収縮期血圧目標(例:<120mmHg)は、標準治療(<140mmHg)に比べて慢性虚血性変化(白質高信号)の進行抑制が示されました(効果は小さいものの有意)。[4]
まとめると:慢性虚血性変化(白質高信号)重い・増えるほど、将来の脳卒中や認知機能低下のリスクは上がりやすいですが、血圧や生活習慣を整えることでリスクを下げる余地があると考えられます。

対策(血圧・運動・禁煙・睡眠・食事)

目的:画像上の変化をなくすことではなく、進行を抑えて将来のイベントを減らすことです。ガイドラインでは、まず血圧管理生活習慣の最適化を重視しています。[3][5]

対策の優先順位(目安)

  1. 血圧を整える(家庭血圧の把握+必要なら降圧薬)
  2. 禁煙(電子タバコを含む)・減酒
  3. 運動・睡眠・食事・体重を少しずつ改善する

慢性虚血性変化と言われた方の「3ステップ」

STEP 1 今の状況を知る

MRIレポートの内容を整理し、過去の画像や健康診断結果があればまとめておきます。

STEP 2 リスク因子を洗い出す

家庭血圧・糖尿病/脂質異常・喫煙・腎機能・生活習慣をチェックし、主治医と共有します。

STEP 3 無理のない対策を始める

血圧・禁煙を優先しつつ、運動・睡眠・食事を「今できる一歩」から始めます。

  • 血圧管理:家庭血圧を朝晩に測り、平均で評価いたします。厳格な降圧慢性虚血性変化(白質高信号)の進行が抑えられる可能性が示されています(適応と副作用に配慮して個別化いたします)。[4]
  • 運動:中等度の有酸素運動を週合計150分程度、加えて筋力トレーニングを取り入れることをおすすめいたします。まずは歩数や時間から無理なく始めます。[10]
  • 禁煙:禁煙支援をご活用ください。受動喫煙もできるだけ避けていただきます。
  • 睡眠:就寝・起床時刻を一定にし、睡眠時無呼吸が疑わしい場合は評価をご提案いたします。
  • 薬剤:慢性虚血性変化(白質高信号)のみを理由に抗血小板薬を新たに始めることは通常は推奨されません(脳梗塞の既往など別の適応がある場合を除きます)。[3]
抗血小板薬(アスピリンなど)について、もう少し詳しく

抗血小板薬は脳梗塞や心筋梗塞の再発予防に重要な薬ですが、出血のリスクも増える薬です。
そのため、「慢性虚血性変化があるから念のため」という理由だけで新規に開始することは、多くのガイドラインで勧められていません。[3]
一方で、すでに脳梗塞・心筋梗塞の既往や、冠動脈ステント留置など明確な適応がある方では、継続が推奨されます。自己判断で中止せず、必ず主治医とご相談ください。

まとめると:血圧・運動・禁煙・睡眠・食事を土台に、必要なときに薬を最適化します。

食事の実践ガイド(概要)

  • 減塩(数値目安):まずは1日6g未満を共通の目標とし、高血圧や脳・心血管病のリスクが高い方は、可能であれば5g/日未満を目指します(日本高血圧学会・WHOの目安より)。[11][12]
  • 和の減塩の工夫:だし(かつお・昆布)や酢・柑橘、香味野菜(生姜・大葉・ねぎ)で薄味でも満足スープ類は飲み干さないのがコツです。
  • 主菜は“魚と大豆”中心:青魚は週2〜3回を目安に、豆腐・納豆・厚揚げを日替わりでどうぞ。
  • 野菜350g+きのこ・海藻:お浸し・汁物・具だくさん味噌汁でもう一皿を意識します。
  • 主食は精製度を下げる:麦ごはん・雑穀・胚芽米など未精製穀物を適宜活用します。
  • 控えたいもの:加工肉・揚げ物・砂糖入り飲料・濃い味のつゆ(外食・惣菜は表示の塩分にご注意ください)。「完全にゼロ」ではなく頻度と量を意識して減らすイメージがおすすめです。

数字だけだとイメージしづらいので、1日の塩分量の目安をよくある食品で表すと次のようになります。

1日の塩分量のイメージ
1日の塩分量 イメージ(よくある組み合わせ)
約5g(より積極的な目標) 味噌汁1杯(約1.5g)+漬物少量+加工食品控えめでちょうど良いくらい。
約6g(まず目指したいライン) 味噌汁2杯(約3g)+おかずの味付けを控えめにすると到達しやすいライン。
10g以上 外食やラーメン・丼もの・コンビニ弁当などが多いと、知らないうちに超えやすい量です。
まとめると:基本は減塩+和食ベース(魚・野菜・大豆・海藻・きのこ・未精製穀物)。続けやすさを大切にします。

慢性虚血性変化のある40代〜60代の方へ:「今からでも間に合う」治療の始めどき

40〜60代で慢性虚血性変化(白質高信号)を指摘されると、「もう手遅れでは?」と感じる方も少なくありません。実際には、この年代からの対策がもっとも効果を発揮しやすいと考えられています。

  • 今が始めどき:慢性虚血性変化(白質高信号)が軽いうちから血圧・脂質・血糖を整えると、その後の進み方を抑えやすくなります。
  • 現実的な計画:平日は20〜30分の速歩、就寝前の飲酒は量と頻度を見直し、就床時刻を固定すると続けやすくなります。
  • 仕事との両立:「平日は歩く量を増やす/階段を使う」「帰宅後の間食や夜食を見直す」など、生活に埋め込める工夫がポイントです。
まとめると:軽いうちからの血圧・代謝管理と生活調整が近道です。無理のない運動・減酒・睡眠習慣の固定を軸に、中長期的なフォローが重要です。

今日からできる3つだけ

すべてを一度に変える必要はありません。「まずこの3つだけ」を意識してみてください。

  1. 家庭血圧を、朝と夜に1週間測ってメモする
    ―― 測った数値を主治医に見せるだけでも、治療方針がぐっと立てやすくなります。
  2. たばこを吸っている方は「禁煙の相談先」を1つ調べてみる
    ―― いきなり完全禁煙が難しければ、まずは情報を集めるところから始めましょう。
  3. 夕食の塩分を意識して、汁物を“飲み干さない”日を増やす
    ―― 味噌汁・ラーメン・うどんなどのスープを全部飲まないだけでも、塩分カットにつながります。

受診をお考えの方へ

このページをご覧になって、「MRIで慢性虚血性変化と言われたが、どの程度心配すればよいか知りたい」「脳ドックの結果の説明をもう一度ゆっくり聞きたい」「今の生活をどこまで見直せばよいか相談したい」と感じられた方は、お一人で抱え込まず、どうぞ一度ご相談ください。
吉祥寺駅南口から徒歩1分の当院で、脳神経内科専門医/総合内科専門医が現在の状態を丁寧に評価し、緊急性の高い病気が隠れていないかを確認したうえで、将来のリスクや今後の対策について分かりやすくご説明いたします。

「まずは話だけ聞きたい」「他院のMRI画像や脳ドックの結果を一緒に見ながら相談したい」といった受診も歓迎です。

当院には、武蔵野市・三鷹市・杉並区だけでなく、東京23区や調布市・小金井市や都外からも、脳ドックや健診で慢性虚血性変化(白質高信号)・ラクナ・微小出血などを指摘された方が多く受診されています。

よくある質問(FAQ)

Q1.「慢性虚血性変化」と「大脳白質病変」は同じですか?

A:日常診療では大きく重なる使い方をしますが、医学的には少し意味が異なります。本ページの慢性虚血性変化(白質高信号)は主に脳の細い血管が原因の白質病変を指し、免疫の病気による白質病変とは区別して評価いたします(やさしい解説をご参照ください)。

Q2.慢性虚血性変化(白質高信号)は治りますか?

A:現時点ですでにみられる白質病変を直接消す薬は一般的にありません。目的は進行の抑制と将来リスクの低減で、血圧管理・運動・禁煙・睡眠・食事をお一人おひとりに合わせて調整いたします。

Q3.認知症のリスクはどのくらい上がりますか?

A:メタ解析では、慢性虚血性変化(白質高信号)の量(負荷)が重いほど/進み方が速いほど全認知症(アルツハイマー型・血管性)のリスクが上がると報告されています。[7]ただし、「必ず認知症になる」という意味ではなく、生活習慣や血圧管理でリスクを下げる余地があると考えられています。

Q4.抗血小板薬(アスピリン)は飲んだほうがよいですか?

A:慢性虚血性変化(白質高信号)のみを理由に定期的な内服を始めることは通常は推奨されません。脳梗塞の既往や冠動脈疾患など、別の適応がある場合に限られます。[3]現在すでに服薬中の方は、自己判断で中止せず、必ず主治医とご相談ください。

Q5.血圧の目標は?

A:年齢・併存症・副作用リスクを踏まえて個別に決めます。研究ではより厳格な降圧慢性虚血性変化(白質高信号)の進行抑制に有効であることが示されています。主治医と相談し、一般的な管理目標に加えて、適応があればより厳格な目標も検討いたします。[4]

Q6.どのくらいの間隔で経過観察しますか?

A:症状とリスクに応じて適切な間隔を主治医と相談して決めていきます。画像の再検査は臨床的必要性に応じて判断いたします。

Q7.MRIで「ラクナ」や「微小出血」もあると言われました

A:これらは脳小血管病のサインです。併存すると将来リスクの評価がより明確になります。生活習慣の見直しと血圧・代謝の最適化がいっそう重要になります。[5]

Q8.慢性虚血性変化でLDLコレステロールを下げるメリットはありますか?

A:直接、白質病変を減らす効果ははっきりしていませんが、脂質異常症がある方や全身の動脈硬化リスクが高い方では、LDLコレステロールを下げることが脳梗塞・心筋梗塞などの予防に役立つと考えられています。まずは食事・運動を整え、適応があればスタチン等の薬物療法を用います。血圧管理が最優先ですが、脂質管理は全身のイベント予防の観点から並行して行う価値があります。目標値は年齢・合併症・全身リスクで個別に設定いたします。[5][8]

Q9.仕事や運動を制限したほうがよいですか?

A:多くの場合、慢性虚血性変化(白質高信号)だけを理由に仕事や運動を厳しく制限する必要はありません。むしろ、中等度の有酸素運動は脳血管のリスクを下げる方向に働くと考えられています。[10]ただし、ふらつき・歩きづらさ・強い頭痛などの症状がある場合は、主治医と相談のうえ、運動内容を調整してください。

Q10.車の運転や旅行は控えたほうがいいですか?

A:慢性虚血性変化だけで、直ちに運転や旅行が禁止されることは通常はありません。
ただし、意識消失・けいれん・著しい視野障害・判断力の低下などがある場合は、事故防止の観点から運転を控える必要があります。症状に不安がある場合は、脳神経内科で運転可否を含めて個別に相談されることをおすすめします。旅行についても、血圧や持病のコントロールが安定しているかを主治医と確認してから計画すると安心です。

Q11.遠方に住んでいます。まずは何科を受診すればよいですか?

A:遠方の方は、お住まいの地域で「脳神経内科」または「神経内科」を標榜している医療機関を探していただくとよいと思います。見つからない場合は、脳神経外科総合内科からスタートし、必要に応じて専門医へ紹介してもらう方法もあります。MRIの画像データや過去の検査結果を持参すると、より正確な評価につながります。

大﨑 雅央 院長の写真

この記事の監修者

院長 大﨑 雅央(Masao Osaki)

吉祥寺おおさき内科・脳神経内科
日本神経学会 神経内科専門医/日本内科学会 総合内科専門医

院長の詳しい紹介を見る

参考文献

参考文献を開く/閉じる
  • [1] Wardlaw JM, et al. Neuroimaging standards for research into small vessel disease (STRIVE). Lancet Neurol. 2013;12(8):822–838. PubMed
  • [2] Duering M, et al. Neuroimaging standards for research into small vessel disease — advances since 2013. Lancet Neurol. 2023;22(7):602–618. PubMed / Lancet
  • [3] Wardlaw JM, et al. European Stroke Organisation Guideline on covert cerebral small vessel disease. Eur Stroke J. 2021. PMC
  • [4] Nasrallah IM, et al. Intensive vs Standard Blood Pressure Control and White Matter Lesion Progression(SPRINT‑MIND MRI). JAMA. 2019. PMC
  • [5] Smith EE, et al. Prevention of Stroke in Patients With Silent Cerebrovascular Disease. Stroke. 2017. AHA/ASA
  • [6] Debette S, Markus HS. The clinical importance of white matter hyperintensities. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2010. PubMed
  • [7] Guo W, et al. White matter hyperintensities volume and cognition: meta‑analysis. Front Aging Neurosci. 2022. PMC
  • [8] Debette S, et al. Clinical Significance of MRI Markers of Vascular Brain Injury. JAMA Neurol. 2019. JAMA Network
  • [10] World Health Organization. WHO Guidelines on physical activity and sedentary behaviour. 2020. WHO
  • [11] Umemura S, et al. The Japanese Society of Hypertension (JSH) 2019 Guidelines for the Management of Hypertension. Hypertens Res. 2019;42(9):1235–1481. Nature
  • [12] World Health Organization. Sodium reduction: Fact sheet. 2025. WHO