60秒でわかる ラクナ梗塞・隠れ脳梗塞
- ラクナ梗塞は、脳の細い血管(穿通枝)が傷んでできる小さな脳梗塞です。症状がないまま健診・脳ドックのMRIで見つかると「隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)」と呼ばれます。
- 見るべきは、点の有無だけではありません。数・場所、白質病変・脳微小出血の併存、血圧・糖代謝・脂質・喫煙をあわせて確認します。
- 突然の麻痺・ろれつ障害・強いめまいなど、新しい症状があるときは救急相談を優先します。抗血小板薬などは自己判断で中止せず、外来で目的を確認してください。
- 当院ではこの確認を、認知症・脳卒中ドックや外来で行います。治療が必要な所見があれば、そのまま保険診療で継続します。
ラクナ梗塞や隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)は、症状がないまま見つかることが多い所見です。慌てる必要はありませんが、放っておく所見でもありません。数・場所・血圧・併存する白質病変や微小出血を確認すれば、これ以上増やさないために何をすればよいかが決まります。
院長・神経内科専門医 大﨑 雅央
ラクナ梗塞とは?
結論ラクナ梗塞は、脳の深い場所へ入る細い血管(穿通枝)の領域にできる小さな脳梗塞です。脳小血管病の画像所見のひとつとして、白質病変や脳微小出血と一緒に扱うことがあります。
詳しく読む(用語と場所の整理)
ラクナ梗塞は、内包、視床、基底核、橋など、脳の深い場所にできる小さな梗塞です。研究・画像診断の文脈では、脳小血管病の代表的な所見として整理されています。12
症状が出て発見されるラクナ梗塞もあれば、健診や脳ドックのMRIで、症状がないまま見つかるラクナ梗塞もあります。画像で似て見える所見の中には、後述するBAD(branch atheromatous disease)のように受け止め方が変わるものもあります。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| ラクナ梗塞 | 脳の深部にできる小さな脳梗塞。穿通枝という細い血管の障害と関係します。 |
| 穿通枝 | 太い動脈から脳の深い場所へ入る細い血管です。 |
| 脳小血管病 | 白質病変、ラクナ梗塞、脳微小出血などを含む、細い血管に関連した変化の総称です。 |
| 無症候性脳梗塞 | 脳梗塞の跡が画像で見える一方、はっきりした発症症状が確認されない状態です。 |
まとめラクナ梗塞という言葉だけで危険度は決まりません。数、場所、併存する所見、血圧や薬の状況を合わせて確認します。
健診・脳ドックのMRIで指摘されたら
結論まず確認したいのは、数・場所・併存所見・血圧・薬です。結果票の一文だけで判断せず、画像データ、家庭血圧、お薬手帳、健診結果をそろえると整理しやすくなります。
詳しく読む(持参物と次の確認)
結果票には「陳旧性ラクナ梗塞」「深部小梗塞」「小梗塞疑い」など、施設によって少し違う表現が使われます。どの表現でも、急ぐべき症状がないか、背景リスクが残っていないかを順番に見ます。
健診の説明だけでは、白質病変や脳微小出血の併存、血圧や採血との関係まで十分に説明されないことがあります。画像CDやレポートがあれば、外来や脳ドック面談で具体的に確認できます。
- MRIレポートと画像データ(CD-Rなど)
- お薬手帳、サプリメント、市販薬の情報
- 家庭血圧の記録(朝・夜、1週間分が理想です)
- 健診結果、採血結果、心電図結果
| 結果票の表現 | 考え方 | 次に確認すること |
|---|---|---|
| 陳旧性ラクナ梗塞 | 過去にできた小さな梗塞跡として説明されることが多い表現です。 | 場所、数、白質病変や微小出血の併存を確認します。 |
| ラクナ / 小梗塞 | 小さな深部梗塞を指すことがあります。 | 症状の有無、血圧、糖代謝、脂質、喫煙を見直します。 |
| 深部小梗塞疑い | 画像だけでは断定しにくい場合の表現です。 | 過去画像との比較、必要に応じた専門医確認を行います。 |
| 多発性ラクナ梗塞 | 複数の所見がある状態です。 | 脳小血管病全体として、認知機能や歩行、血管リスクも確認します。 |
まとめ所見が見つかった直後は不安になりやすいものです。急な症状がなければ、資料をそろえて順番に確認しましょう。
症状が出たときは(受診の目安)
結論突然の片側の麻痺・しびれ、ろれつ障害、強いめまい・歩行障害など、新しい症状があるときは救急相談を優先してください。この場合は脳ドック予約ではなく、急性期脳卒中としての評価が先です。
詳しく読む(急ぎやすい症状)
ラクナ梗塞は無症状で見つかることもありますが、症状が出る場合は脳卒中として扱います。顔のゆがみ、片腕の脱力、言葉の出にくさ、突然の歩きにくさがある場合は、時間をおかずに相談してください。
脳梗塞の症状やFAST法は、脳梗塞の症状・前兆で詳しく整理しています。迷う場合は、地域の救急相談窓口や119番を含めて早めに確認してください。
- 片側の顔・腕・脚に力が入らない、しびれる
- ろれつが回らない、言葉が出にくい、相手の話が理解しにくい
- 急に片目が見えにくい、視野の一部が欠ける
- 強いめまい、ふらつき、歩けない状態が突然出た
- これまでにない急な症状が続く、または繰り返す
まとめ急な症状があるときは、検査や予約の相談よりも救急評価が優先です。
白質病変・脳微小出血との違い
結論白質病変、ラクナ梗塞、脳微小出血は、同じ脳小血管病として一緒に見つかることがあります。違いはありますが、共通して血圧や生活習慣、薬の確認が重要です。
詳しく読む(3つの画像所見の比較)
STRIVEでは、ラクナ、白質高信号、脳微小出血、血管周囲腔の拡大などが、脳小血管病の画像マーカーとして整理されています。12
ひとつの所見だけでなく、複数の所見が重なっているかを見ることで、血圧管理や薬の確認、脳ドックで追加確認する項目の優先順位が変わります。
| 所見 | MRIでの見え方 | 受け止め方 |
|---|---|---|
| 白質病変・慢性虚血性変化 | FLAIRなどで白く見えることが多い | 加齢や高血圧と関係し、広がりや年齢とのバランスを確認します。 |
| ラクナ梗塞 | 深部の小さな脳梗塞跡として見える | 症状がないまま見つかることもあり、数・場所・血圧を見ます。 |
| 脳微小出血 | T2*やSWIで小さな黒い点として見える | 過去の小さな出血の跡で、場所・数・抗血栓薬を確認します。 |
まとめ白質病変、ラクナ梗塞、脳微小出血は別々の名前ですが、脳の細い血管への負担という共通点があります。
BAD(branch atheromatous disease)=進行しうるラクナ様梗塞
結論画像でラクナ梗塞に似ていても、穿通枝の入口の動脈硬化によるBADは、発症後に症状が進みやすいことがあります。症状がある場合や急性期に診断された場合は、無症候の所見とは分けて考えます。
詳しく読む(ラクナ梗塞との違い)
BAD(branch atheromatous disease)は、穿通枝そのものの細い血管病変だけでなく、親動脈側の動脈硬化が穿通枝の入口に関わるタイプとして説明されます。文献上、ラクナ梗塞と区別すべき病態として扱われることがあります。4
本ページは、症状がないままMRIでラクナ梗塞・隠れ脳梗塞を指摘された方向けです。急に症状が出た場合や、発症後に症状が強くなる場合は、画像所見名だけで自己判断せず、急性期脳卒中として評価を受ける必要があります。
| 観点 | 典型的なラクナ梗塞 | BAD |
|---|---|---|
| 主な機序 | 穿通枝の細い血管そのものの障害と関連します。 | 穿通枝の入口付近に親動脈側の動脈硬化が関わることがあります。 |
| 臨床での注意 | 症候性なら急性期脳梗塞として評価し、慢性期は再発予防を確認します。 | 発症後に症状が進むことがあり、早期の専門的評価が重要です。 |
| このページでの扱い | 無症候で見つかった所見の受け止め方を中心に説明します。 | 症状がある・急性期に診断された場合の鑑別として説明します。 |
まとめBADは治療方針の自己判断に使う言葉ではありません。症状がある場合は、早期に専門医・救急で評価します。
再発・脳梗塞リスク
結論ラクナ梗塞・無症候性脳梗塞は、将来の脳卒中リスクと関連します。ただし、見つかった時点で必ず発症するという意味ではなく、血圧など修正できる要因を見直すサインとして捉えます。
詳しく読む(薬と血圧の考え方)
無症候性脳梗塞は、将来の脳卒中リスクと関連することがメタ解析で報告されています。結果票の一文で終わらせず、背景にあるリスクを確認する意味があります。3
症候性ラクナ梗塞の再発予防では、血圧管理や抗血小板薬の位置づけが重要です。詳細は脳梗塞の再発率と再発予防、病型としての説明は症候性ラクナ梗塞の治療に委ねます。
- 無症候性の所見だけで、抗血小板薬を一律に開始するわけではありません。背景リスクや他の病気、出血リスクを合わせて判断します。
- すでに脳梗塞・TIAなどで抗血小板薬を飲んでいる方は、自己判断で中止せず、薬の目的を確認してください。
- 症候性ラクナ梗塞の研究では、長期の抗血小板薬二剤併用は有益性と出血リスクのバランスに注意が必要とされています。5
- 血圧管理は、ラクナ梗塞を含む脳卒中予防で重要な柱です。6
まとめリスクは“怖い数字”としてではなく、血圧・脂質・血糖・喫煙・不整脈を見直すための入口として使います。
これ以上増やさないために(予防)
結論目標は、所見を消すことより、これ以上増やしにくくすることです。血圧、血糖、脂質、喫煙、飲酒、睡眠を、続けやすい形で見直します。
詳しく読む(見直す順番)
ラクナ梗塞の跡そのものを、短期間で消す治療薬があるわけではありません。大切なのは、同じような所見が増えにくい状態を作ることです。
具体的な食事・運動・薬の整理は、ページ内で詳しく抱え込みすぎず、脳梗塞の再発予防で確認できるようにしています。
| 項目 | 最初にすること | 目的 |
|---|---|---|
| 血圧 | 朝・夜の家庭血圧を1週間ほど記録する | 深部の小血管病と関係しやすい要因を把握します。 |
| 血糖・脂質 | 健診採血やHbA1c、LDLコレステロールを確認する | 動脈硬化や脳梗塞リスクを合わせて見ます。 |
| 喫煙・飲酒 | 禁煙、飲酒量と頻度の見直しを始める | 血管への負担を下げます。 |
| 睡眠・不整脈 | いびき、無呼吸、動悸、健診心電図を確認する | 血圧や脳卒中リスクに関わる背景を拾います。 |
まとめ完璧な生活改善より、血圧を記録する、禁煙を相談する、採血値を確認するなど、続く一手を決めることが大切です。
ドックと外来の選び方
結論症状・薬の相談は外来、症状がなく脳と血管をまとめて確認したい方は認知症・脳卒中ドックが入口です。脳梗塞・TIAと診断されたことがある方は、再発予防の通院として脳卒中後再発予防外来が入口になります。
詳しく読む(向いている入口と持参物)
症状がなく、MRI/MRA、頸動脈MRA、採血、認知機能をまとめて確認したい場合は、認知症・脳卒中ドックが向いています。ホルター心電図はAdvanced・Executiveコースで確認できます。
一方で、すでに脳梗塞・TIAと診断され、退院後の薬や血圧・脂質・血糖・不整脈の管理を続けたい場合は、保険診療の外来で整理します。
- MRIレポート、画像データ(CD-Rなど)
- 過去のMRI画像やレポート
- お薬手帳、サプリメント、市販薬の情報
- 家庭血圧の記録、健診結果、採血結果、心電図結果
| 状況 | おすすめの入口 | 理由 |
|---|---|---|
| 症状がなく、全体を調べたい | 認知症・脳卒中ドック | MRI/MRA、頸動脈MRA、採血、認知機能をまとめて確認できます。 |
| MRI結果があり、薬の目的を相談したい | 外来 | 画像・お薬手帳・家庭血圧を合わせて確認します。 |
| 脳梗塞・TIA後の通院を続けたい | 脳卒中後再発予防外来 | 退院後の薬、血圧、脂質、血糖、不整脈を継続管理します。 |
| 突然の症状がある | 救急相談 | 急性期脳卒中の評価が優先です。 |
まとめ相談したい内容で入口を分けると整理しやすくなります。全体確認はドック、薬や症状の相談は外来、急な症状は救急です。
ラクナ梗塞・隠れ脳梗塞のよくある質問
隠れ脳梗塞と無症候性脳梗塞は同じですか?
日常語としての「隠れ脳梗塞」は、症状がないまま画像で見つかった脳梗塞を指すことが多く、医学的には無症候性脳梗塞と説明されることがあります。ラクナ梗塞が無症状で見つかった場合も、この枠組みで説明されます。
ラクナ梗塞は治りますか・消えますか?
MRIで見えている所見は、過去にできた小さな梗塞跡として残ることがあります。目標は、見えている跡を消すことより、血圧や生活習慣を整えて、これ以上増やしにくくすることです。
症状がないのに治療が必要ですか?
症状がない所見だけで薬を始めるとは限りません。数・場所・白質病変や脳微小出血の併存、血圧・血糖・脂質・喫煙・心電図などを確認し、必要な対策を選びます。
抗血小板薬(アスピリン等)は必要ですか?
無症候性の所見だけで一律に開始するものではありません。すでに脳梗塞・TIA、心筋梗塞、ステント治療などの目的で内服している方は、自己判断で中止せず、薬の目的と画像所見を外来で確認してください。
ラクナ梗塞と白質病変・脳微小出血は何が違いますか?
ラクナ梗塞は小さな脳梗塞の跡、白質病変はFLAIRなどで白く見える変化、脳微小出血はT2*やSWIで黒い点として見える出血跡です。いずれも脳小血管病として一緒に確認することがあります。
何個あると危険ですか?
数だけで危険度は決まりません。場所、左右差、白質病変・脳微小出血の併存、年齢、血圧、糖代謝、脂質、喫煙、薬の状況を合わせて見ます。
脳ドックと外来、どちらを受ければよいですか?
症状がなく、脳と血管をまとめて確認したい方は認知症・脳卒中ドックが選択肢です。すでに画像があり、薬や症状、血圧管理を相談したい方は外来が向いています。急な症状がある場合は救急相談を優先してください。
何科を受診すればよいですか?
脳の画像所見、脳梗塞・TIA後の薬、血圧や生活習慣をまとめて相談する場合は、脳神経内科が候補になります。受診時はMRIレポート、画像データ、お薬手帳、家庭血圧の記録を持参すると整理しやすくなります。
若くてもラクナ梗塞になりますか?
頻度は年齢とともに増えますが、若い方でも血圧、喫煙、糖代謝、脂質、睡眠時無呼吸、まれな病気などを背景に指摘されることがあります。若年で見つかった場合ほど、背景リスクを丁寧に確認します。
参考文献
参考文献を表示
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1
Wardlaw JM, et al. Neuroimaging standards for research into small vessel disease and its contribution to ageing and neurodegeneration. Lancet Neurol. 2013;12(8):822-838.
-
2
Duering M, et al. Neuroimaging standards for research into small vessel disease - advances since 2013. Lancet Neurol. 2023;22(7):602-618.
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3
Gupta A, Giambrone AE, Gialdini G, et al. Silent Brain Infarction and Risk of Future Stroke: A Systematic Review and Meta-Analysis. Stroke. 2016;47(3):719-725.
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4
Yamamoto Y. Branch atheromatous disease and treatment. J Atheroscler Thromb. 2023;30(6):575-586.
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5
SPS3 Investigators; Benavente OR, Hart RG, McClure LA, et al. Effects of clopidogrel added to aspirin in patients with recent lacunar stroke. N Engl J Med. 2012;367(9):817-825.
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6
SPS3 Study Group; Benavente OR, Coffey CS, Conwit R, et al. Blood-pressure targets in patients with recent lacunar stroke: the SPS3 randomised trial. Lancet. 2013;382(9891):507-515.
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7
日本脳卒中学会. 脳卒中治療ガイドライン2021(改訂2023). 日本脳卒中学会. 2023.