【専門医監修】脳梗塞について―症状・前兆・原因・治療・予防

最終更新:2026年2月14日/監修:大﨑 雅央(神経内科専門医・総合内科専門医)/参照:日本脳卒中学会『脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕』[1]

脳梗塞は、脳の血管(動脈)が血栓(血のかたまり)などで急に詰まることで、 詰まった先の脳細胞に酸素や栄養が届かなくなる病気です。
片側の手足の脱力・しびれ顔のゆがみことばが出ない/ろれつが回らない片目が見えないといった症状が 突然現れるのが特徴です。

脳細胞は数分〜数十分で傷み始めるため、発症直後の数時間が治療の勝負どころです。
条件が合えば静注血栓溶解療法(rt‑PA:アルテプラーゼなど)[2][3]や、 血管内治療(機械的血栓回収術)[4][5][6]により、 後遺症を小さくできる可能性があります。

一方で、症状が短時間で自然に良くなるタイプもあります。これは一過性脳虚血発作(TIA)と呼ばれ、 脳梗塞の前触れのことがあります。
TIAについて詳しくは、 「一過性脳虚血発作(TIA)について」のページ で解説しています。

本ページでは、日本脳卒中学会『脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕』の考え方[1]も踏まえながら、 脳梗塞に焦点を当てて、症状・原因・治療・再発予防についてご説明します。

脳卒中の再発予防や、将来の認知症・脳卒中リスクを検査で評価したい方は、 認知症・脳卒中ドック(脳ドック) もご覧ください。

目次

要点サマリー(このページで分かること)

結論脳梗塞は「症状に気づいてから救急受診まで」が最重要で、原因に合わせた治療と再発予防で後遺症と再発リスクを減らせます。

  • 脳梗塞とは何か/脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)との違いを整理し、「このページで扱う病気」が分かります[1]
  • 片側の麻痺顔のゆがみことばの障害視力障害など、脳梗塞が疑われる典型的な症状(FAST)と、前触れとしてのTIA(一過性脳虚血発作)を理解できます[1]
  • 主要な病型(アテローム血栓性・心原性脳塞栓症・ラクナ梗塞)と、抗血小板薬・抗凝固薬・血行再建術の大枠(「どのタイプでどの治療が基本か」)が分かります[1]
  • 静注血栓溶解療法機械的血栓回収術など、発症直後に行う治療と「時間×画像所見」の考え方(時間だけでなく画像で適応を判断する)を確認できます[1]
  • 再発を防ぐための血圧・脂質・血糖の目標や、禁煙・運動・食事など日常生活でできる工夫が分かります[1]

脳梗塞とは(脳梗塞と脳卒中の違いは?)

結論脳梗塞は脳の動脈が詰まって起こる脳卒中で、症状が突然出たら「自己判断せず救急要請」が基本です。

  • 脳卒中は「脳梗塞・脳出血・くも膜下出血」の総称です[1]
  • 血流が止まってから数分〜数十分で脳細胞は傷み始めます。
  • 軽く見えても、突然の症状は#7119番が原則です。
詳しく読む(脳卒中との違い・3つのタイプ)

脳梗塞は、脳の動脈が血栓や動脈硬化のプラークなどで詰まり、 その先の脳細胞に酸素や栄養が届かなくなる病気です。 血流が止まってから数分〜数十分で脳細胞は傷み始めるため、 発症直後の時間が治療成否と後遺症の程度を大きく左右します。 多くの場合、症状は前ぶれなく突然現れます。

一方、脳卒中という言葉は「脳の血管の病気」の総称で、 ①脳梗塞(血管が詰まる)、②脳出血(血管が破れて脳内に出血する)、 ③くも膜下出血(脳動脈瘤などが破裂する)を含みます[1]。 このページでは、その中でも頻度の高い脳梗塞(虚血性脳卒中)について説明します。

病名主な原因代表的な症状
脳梗塞 動脈硬化や心房細動に伴う血栓などで脳の血管が詰まる 片側の手足の脱力・しびれ、顔のゆがみ、ことばの障害、視力障害 など
脳出血 高血圧などで脳の細い動脈が破れて脳内に出血 片側の麻痺・しびれ、意識障害、突然の頭痛・吐き気 など
くも膜下出血 脳動脈瘤が破裂して、脳の表面をおおうくも膜の下に出血 「今までで一番ひどい」突然の頭痛、吐き気、意識障害 など
ポイント: 脳梗塞・脳出血・くも膜下出血はいずれも脳卒中です。 症状が突然出たら「どのタイプか」を自己判断せず、すぐに#7119番が基本です。

脳梗塞の症状について(FASTで覚える合図)

結論片側の顔・腕・ことばの異常が突然出たら脳卒中を疑い、ためらわず救急要請するのが基本です。

  • FASTは「顔(Face)・腕(Arm)・ことば(Speech)・時間(Time)」の合図です[1]
  • 軽く見えても「突然」が重要なサインです。
  • 可能なら発症時刻(最後に普段どおりだった時刻)をメモします。
詳しく読む(FASTの具体例・その他の症状)

脳梗塞の代表的な症状は、FASTで覚えると分かりやすいです[1]。 いずれも「突然」出ることが大きな特徴です。

合図具体例対応
F:Face 顔の片側が下がる、笑顔が非対称になる 写真やスマートフォンで顔のゆがみを記録できると診断の助けになります。
A:Arm 片腕・片脚の脱力やしびれ、力が入らない/上げた腕が落ちてしまう 歩ける・話せる場合でも脳梗塞の可能性があります。
S:Speech ろれつが回らない、言葉が出ない/言っていることが理解できない 発症した時刻や「最後に普通だった時刻」を家族と共有しておきましょう。
T:Time これらの症状が突然始まる 治療は時間との勝負です。症状が出た時刻をメモし、ためらわず救急要請を。

そのほかにも、片目だけ見えにくくなる、視野の半分が欠ける、急なふらつき・歩行困難、 呂律が回らず飲み込みづらいなどがサインとなることがあります。

FASTに当てはまらなくても注意(とくに脳幹・小脳など)

めまい・ふらつき・複視(物が二重に見える)・嚥下しづらいなどが主症状になる脳卒中(後方循環:脳幹・小脳など)もあります。 そのため、最近はFASTにBalance(ふらつき)Eyes(視覚異常)を加えた「BE‑FAST」としての覚え方もあります。

  • 突然の激しいめまい・ふらつき(立てない/歩けない)
  • 物が二重に見える、視野が急に欠ける
  • ろれつが回らない、飲み込みにくい
  • 意識がおかしい、強い眠気、まっすぐ座れない

これらも脳卒中の可能性があります。FASTに当てはまらなくても「突然」の神経症状は、自己判断せず#7119番をおすすめします。

まとめ: 片側の麻痺・顔のゆがみ・ことばの障害・視力障害が突然出たら、様子見ではなく救急車を呼ぶ合図です(当てはまらない症状でも“突然”なら救急要請)。

脳梗塞の前兆と一過性脳虚血発作(TIA)

結論症状が治まってもTIAは脳梗塞の警告サインのことがあるため、早めの評価が必要です。

  • TIAは「短時間だけ神経症状が出て自然に良くなる」ことがあります。
  • 症状が消えても早期(とくに数日以内)に脳梗塞が起こりやすいことが知られています[7][8]
  • 「治ったから大丈夫」ではなく、当日中に救急受診を検討してください。
詳しく読む(TIAの特徴・受診の考え方)

中には、脳梗塞の前触れとして、短時間だけ神経症状が出て自然に良くなる場合があります。 これを一過性脳虚血発作(TIA)と呼びます。

TIAは、脳の血流が一時的に低下した状態で、症状は多くが短時間で軽快します。 ただし、症状が消えても早期に脳梗塞を起こすリスクが高いことが知られており[7]、 「軽い発作」ではなく脳卒中の警告サインと考えられています。

近年は「症状が何時間続いたか」だけでなく、MRIなどで脳梗塞(組織の障害)が起きていないかを評価する考え方も重視されます[8]。 いずれにしても、症状が消えても自己判断で様子見せず、当日中に医療機関で評価することが重要です。

TIAについては、 一過性脳虚血発作(TIA)の専用ページで、 症状・入院期間・ABCD2スコアなどを詳しく解説しています。 「一度症状が出てすぐ治った」「ここ数日似た発作を繰り返している」という方は、早めの受診をおすすめします。

ポイント:症状が治ったから大丈夫ではなく、治った今こそ原因を調べるチャンスです。

脳梗塞の原因と主なタイプ

結論脳梗塞は原因(病型)により治療と再発予防が変わるため、病型を見極めることが大切です。

  • 大きく「アテローム血栓性」「心原性脳塞栓症」「ラクナ梗塞」に分けて考えます[9]
  • 危険因子は高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙・肥満・運動不足・心房細動など。
  • 多くは生活習慣と血圧・脂質・血糖の管理で予防可能とされています[1][10]
詳しく読む(病型の特徴・診断のポイント)

脳梗塞は、国際的によく用いられるTOAST分類などに沿って、 ①アテローム血栓性(大血管の動脈硬化)、 ②心原性脳塞栓症(心臓から飛んでくる血栓)、 ③ラクナ梗塞(小血管病変)などに分けられます[9]

共通する危険因子としては、高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙・肥満・運動不足・心房細動などが挙げられ、 多くは生活習慣と血圧・コレステロールの管理で予防可能とされています[1][10]

病型主な機序・特徴診断・治療のポイント
アテローム血栓性 頸動脈や脳内動脈の動脈硬化プラークが破れて血栓ができ、血管が狭くなる/詰まる 頸動脈エコー、MRA/CTAで狭窄を評価し、脂質管理(スタチンなど)と抗血小板薬が中心
心原性脳塞栓症 心房細動・心筋梗塞後・弁膜症などで心臓内にできた血栓が飛び、太い脳動脈を塞ぐ 心電図/長時間心電図や心エコーで原因を探し、抗凝固薬による再発予防が基本
ラクナ梗塞(小血管病変) 長年の高血圧などで細い穿通枝(深部へ向かう血管)が傷み、小さな梗塞ができる MRIで深部の小梗塞として見つかり、血圧管理と抗血小板単剤が中心
要点:原因を正確に見極めることで、「どの薬を使うか」「手術やカテーテル治療が必要か」「生活で何を変えるか」がはっきりします。

アテローム血栓性脳梗塞

結論動脈硬化が原因の脳梗塞では、抗血小板薬と脂質・血圧管理が土台で、高度狭窄では手術やステントも検討します。

  • 軽症脳梗塞/高リスクTIAの直後では、適応がある方で短期間だけ抗血小板薬を2剤併用して早期再発を減らせることがあります(医師の判断が必要です)[11][12]
  • スタチン中心の脂質管理は再発だけでなく心血管イベント抑制にもつながります(LDLコレステロールの目標は医師により判断されます)[13]
  • 症候性の頸動脈狭窄が高度な場合、狭窄率や全身状態・タイミングを踏まえてCEA(外科治療)やCAS(カテーテル手術)が検討されます[14][15]
詳しく読む(しくみ・薬・手術/カテーテル治療)

頸動脈や頭蓋内動脈の内側にコレステロールのたまったプラークができると、血管の内腔が徐々に狭くなります。 このプラークが破れて血栓ができると、その場で血管が詰まったり、 血栓の一部がはがれて先の血管を塞いだりして脳梗塞を引き起こします。

1)抗血小板療法(短期2剤併用の位置づけ)

軽症脳梗塞や高リスクTIAの直後には、適応のある方で短期間に限って抗血小板薬2剤併用療法 (例:アスピリン+クロピドグレル)を行うことで、早期再発を減らせることが示されています[11][12]。 ただし、出血リスクが増えるため「誰にでも」「長期間」行う治療ではありません。 実際の開始時期・期間は、症状の重さや出血リスク、画像所見などを踏まえて医師が判断します。

2)脂質管理(スタチンを土台に)

スタチンを中心とした脂質管理によりLDLコレステロールをしっかり下げることで、 再発予防だけでなく心筋梗塞など心血管イベント全体の抑制も期待できます[13]。 必要に応じて、エゼチミブやPCSK9阻害薬などを追加する場合もあります。

3)頸動脈狭窄がある場合(CEA/CAS)

症候性頸動脈狭窄が高度な場合には、頸動脈内膜剥離術(CEA)や頸動脈ステント留置術(CAS)が再発抑制に有効であることが、 大規模試験で示されています[14][15]。 一方で、すべての狭窄で手術・ステントが必要なわけではありません。 狭窄の程度(狭窄率)症状の有無(症候性か)年齢や合併症治療のタイミングで利益が変わるため、個別に検討します。

まとめ:アテローム血栓性脳梗塞では、抗血小板薬+脂質管理+血圧・生活習慣の是正が土台で、狭窄が高度な場合には外科・カテーテル治療も組み合わせます。

心原性脳塞栓症

結論心房細動など心臓由来の血栓が原因なら、抗凝固薬を途切れなく続けることが再発予防の要です。

  • 原因として多いのは心房細動で、太い血管を塞いで重くなりやすいタイプです。
  • 多くの方でワルファリンよりDOAC(直接作用型経口抗凝固薬)が用いられ、効果と出血リスクのバランスが改善したことが示されています[16]
  • 抗凝固薬が使えない一部の方では左心耳閉鎖術が選択肢になる場合があります[17][18]
詳しく読む(原因・抗凝固療法・左心耳閉鎖術)

心原性脳塞栓症は、心臓の中にできた血栓が血流に乗って脳の太い動脈を塞ぐタイプの脳梗塞です。 原因としてもっとも多いのは心房細動で、このほかに心筋梗塞後・心機能低下・人工弁や弁膜症などが関わることもあります。

再発予防の基本は抗凝固療法です。 近年は、多くの方でワルファリンに代わりDOAC(直接作用型経口抗凝固薬:ダビガトラン・リバーロキサバン・アピキサバン・エドキサバンなど)が用いられ、 脳梗塞予防効果と出血リスクのバランスが改善したことが示されています[16]。 腎機能や年齢、併用薬、出血歴などを総合して薬剤と用量を決めます。

※ただし、機械弁中等度〜重度の僧帽弁狭窄腎機能が大きく低下している場合などは、抗凝固薬の種類や用い方が変わることがあります。[1]

どうしても抗凝固薬が使えない/続けにくい一部の高リスクの方では、 左心耳という部位を閉じる左心耳閉鎖術が選択肢となる場合があります[17][18]。 当院では、必要に応じて循環器専門施設と連携しながら治療方針を検討します。

まとめ:心原性脳塞栓症では、「適切な抗凝固療法を長く続けること」が再発予防の要です。

ラクナ梗塞(小血管病変)

結論ラクナ梗塞は小さな血管の病気で、血圧管理と抗血小板単剤が基本です(長期の二剤併用は原則行いません)。

  • 長年の高血圧などで細い穿通枝が傷むことで起こります[19]
  • MRIで深部の小梗塞や白質病変として見つかります[19]
詳しく読む(特徴・治療・血圧目標の考え方)

ラクナ梗塞は、脳の深部(内包・視床・橋など)へ向かう細い穿通枝という血管が傷むことで起こる、 直径15mm未満ほどの小さな梗塞です。 主な原因は長年の高血圧などに伴う小血管病(cerebral small vessel disease)で、 MRIでは点状の梗塞や白質病変として見つかります[19]

症状としては、片側の手足が動かしにくい/しびれる、ことばは比較的保たれているといったパターンが代表的で、 多くは重い意識障害を伴いません(例外もあります)[19]

再発予防の中心は抗血小板薬の単剤と血圧管理です。 大規模試験(SPS3)では、アスピリンにクロピドグレルを長期間追加しても脳梗塞再発の抑制効果は明らかではなく、 むしろ出血合併症が増えることが示されました[20]。 一方、同試験では、血圧をより低く管理する群で脳出血の抑制など有望な傾向が報告されています[21]

まとめ:ラクナ梗塞は小さな血管の病気で、抗血小板単剤+しっかりした血圧管理が基本です。長期の二剤併用療法は原則として行いません。

心房細動と脳梗塞

結論心房細動は脳梗塞リスクを大きく高めるため、見つけることと抗凝固の継続が重要です。

  • 心房細動があると脳梗塞リスクが約5倍に高まるとされています[22]
  • 発作性は通常の心電図で見つからないことがあり、ホルター心電図(長時間心電図)などで評価します。
  • 抗凝固の必要性はCHA2DS2-VAScスコアなどで評価し、DOAC(直接作用型経口抗凝固薬)が第一選択となることが多いです[16]
詳しく読む(見つけ方・抗凝固の考え方)

心房細動は高齢化とともに増えている不整脈で、あると脳梗塞のリスクがおよそ5倍に高まるとされています[22]。 心房が細かく震えることで血液がよどみ、左心耳と呼ばれる部分に血栓ができやすくなります。 これが剥がれて脳の血管を塞ぐと心原性脳塞栓症を起こします。

心房細動には、ずっと続いている持続性だけでなく、数分〜数時間で自然に治ってしまう発作性もあり、 通常の心電図だけでは見つからないことがあります。 そのため、必要に応じて24時間ホルター心電図やさらに長時間の心電図モニタリングを用いて、 見逃しを減らしていきます。

抗凝固の必要性はCHA2DS2-VAScスコアなどを用いて評価し、 多くの方でDOAC(直接作用型経口抗凝固薬)が第一選択となります[16]。 出血リスクとのバランスをとりながら、「適切な薬を・適切な量で・途切れなく続ける」ことが大切です。

ポイント:心房細動は「見つけること」と「抗凝固の継続」の両方が重要です。

脳梗塞の治療(超急性期〜入院中)

結論脳梗塞の急性期治療は時間で可否が変わりますが、実際には「時間×画像所見」で判断されます。症状が出たらすぐ救急受診することが最重要です。

  • 静注血栓溶解療法(rt‑PA:アルテプラーゼなど)は、原則として発症から4.5時間以内が目安です[2][3]。 ただし、発症時刻がはっきりしない場合(目覚めたら発症していた場合など)でも、MRI/CTの所見により治療対象になり得ます[23][24]
  • 機械的血栓回収術(血栓回収療法)は、原則としてできるだけ早く(目安:6時間以内)行うほど効果が高い治療です[4]。 ただし、画像で「まだ救える脳」が残っていると判断されれば、6〜24時間でも検討されます(6〜16時間・6〜24時間など)[5][6]
  • 近年は、大きな梗塞コアを伴う例や脳底動脈閉塞など後方循環でも、画像所見をもとに血管内治療が有効と示した試験が報告されており、適応は「時間だけ」で決まりません[25][26][27][28][29]
詳しく読む(超急性期〜入院中の流れ)

1)超急性期(発症〜数時間以内)

脳梗塞の中でも、太い血管が突然詰まるタイプでは、 発症直後の時間内に血流を再開させる治療により、後遺症を軽くできる可能性があります。 日本では、条件が合えば静注血栓溶解療法(IVT:rt‑PA)と、 カテーテルで血栓を取り除く機械的血栓回収術(EVT)が行われます[2][3][4]

なお、海外では静注血栓溶解薬としてテネクテプラーゼ(tenecteplase)が用いられる国もあり、 血栓回収術前投与などでアルテプラーゼと比較した臨床試験が報告されています[30][31]。 一方、日本では(2026年2月時点)急性期脳梗塞に対する静注血栓溶解の標準はアルテプラーゼであり、 テネクテプラーゼは国内での臨床開発・整備が進められている段階です[32]

代表的な治療の考え方(実際には年齢・病変の範囲・CT/MRIの所見などで個別に判断します)
治療時間・判断の目安ポイント
静注血栓溶解療法(IVT) 原則:発症から4.5時間以内
※発症時刻不明でも、MRI/CTの所見により治療対象になり得ます
アルテプラーゼ 0.6 mg/kg(10%ボーラス+残量を1時間で点滴)が標準です[2]。 発症時刻不明例では、DWI/FLAIRミスマッチや灌流画像など「画像所見」をもとに適応判断を行うことがあります[23][24]
機械的血栓回収術(EVT) 原則:6時間以内(早いほど有利)
※画像選択で6〜24時間でも検討(6〜16/6〜24など)
CT/MRIや灌流画像で「まだ救える脳(虚血ペナンブラ)」が残っているかを評価し、時間だけでなく画像所見をセットで適応を判断します[5][6]。 近年は大きな梗塞コア例や脳底動脈閉塞などでも有効性を示した試験が報告されており、適応は拡がっています[25][26][27][28][29]

これらの治療は「発症から医療機関に着くまでの時間」と「画像評価の可否」によって受けられるかどうかが変わります。 自分で車を運転していると途中で悪化する危険もあるため、迷わず救急車を利用することが重要です。

2)入院中(急性期〜回復期)

  • 原因別の二次予防:非心原性脳梗塞には抗血小板薬、心原性脳塞栓症には抗凝固薬が基本となります[1]
  • 血圧・脂質・血糖の管理:再発予防のために血圧やLDLコレステロールの目標値を設け、薬物療法と生活習慣の調整を組み合わせることが推奨されています[1][13][21]
  • リハビリテーション:安静にしすぎると筋力低下や肺炎などの合併症を起こしやすくなります。できるだけ早期から理学療法・作業療法・言語療法などを始めます。
  • 合併症の予防:深部静脈血栓症、誤嚥性肺炎、尿路感染症などを予防するケアも重要です。
要点:治療は①発症直後の「時間×画像評価」と、②その後の原因別治療・リハビリ・再発予防を組み合わせて進みます。

脳梗塞の再発予防

結論再発予防は「抗血栓薬」+「血圧・脂質・血糖の管理」+「生活習慣の改善」を長く続けることが中心です。

  • 血圧は多くの方で<130/80 mmHgが目標です(個別化が必要)[1][21]
  • アテローム性病変がある方はスタチンを基本に、LDL<70 mg/dL程度を目標に検討します[13]
  • 非心原性は抗血小板、心原性は抗凝固が基本で、病型により薬が変わります[11][12][16]
詳しく読む(目標値・薬・生活の工夫)

一度脳梗塞やTIAを経験された方は、「再発をどこまで減らせるか」が今後の生活の質を大きく左右します。 再発予防では、薬による治療と生活習慣の見直しを両輪として続けていくことが大切です[1]

  • 血圧: 多くの方で<130/80 mmHgを目標にします(年齢・合併症で調整します)[1]。 ラクナ梗塞など小血管病では、より厳格な血圧管理が脳出血の抑制などにつながる可能性が示されています[21]
  • 脂質: アテローム性病変がある方ではスタチンを基本に、必要に応じて薬剤を追加し、LDLコレステロール<70 mg/dL程度を目標とすることが提案されています[13]
  • 抗血栓療法: 非心原性脳梗塞では抗血小板薬単剤が基本で、軽症発症直後に限って短期間のみ二剤併用を検討します(長期併用は原則行いません)[11][12][20]。 心原性脳塞栓症では抗凝固薬が中心です[16]
  • 生活習慣: 禁煙、節酒、地中海食やDASH食などの食事パターン、定期的な有酸素運動が、脳卒中・心血管病のリスク低下に関連することが示されています[10][34][35][36]
まとめ:「血圧・コレステロール・血糖を整える」「自分にあった抗血栓薬を続ける」「生活習慣を少しずつ変える」を、焦らず長く続けることが重要です。

脳梗塞の予防のための食事・生活習慣のコツ

結論食事は再発予防の基盤で、塩分を控えつつ野菜・魚・全粒穀物などを増やす食事パターンが役立ちます。

  • 地中海食DASH食は血圧低下と心血管リスク低下に関連します[34][35][36]
  • 完璧よりも「毎日の食事で1つだけ変える」から始めるのが続くコツです。
  • 塩分・甘い飲料・加工食品を控えめにし、継続できる形に整えます。
詳しく読む(食事パターンと具体的な工夫)

食事は、脳梗塞の予防において薬と同じくらい大切な治療の一部です。 研究では、野菜・果物・全粒穀物・豆類・ナッツ・魚・オリーブオイルを多くとり、 赤身肉・加工肉・砂糖・塩分を控えめにする地中海食や、 果物・野菜・低脂肪乳製品を増やし飽和脂肪を抑えるDASH食が、 血圧を下げ、脳心血管病のリスク低下と関連することが示されています[34][35][36]

  • 塩分:しょうゆ・ソースは「かける」より小皿で「つける」習慣に。
  • 主菜:揚げ物中心から、焼き魚・蒸し料理・煮物を増やす。
  • 主食:白米だけでなく、雑穀米・全粒粉パンなどを取り入れてみる。
  • 間食:スナック菓子の代わりに、素焼きナッツやヨーグルトを選ぶ。
  • 飲み物:清涼飲料水を減らし、水・お茶を基本にする。
ヒント:完璧を目指すより、「毎日の食事で1つだけ変えてみる」ことから始めると続けやすくなります。

受診をお考えの方へ

このページをご覧になっている方の中には、 「最近一度脳梗塞を起こした」「物忘れやふらつきが増え、脳の血管が心配」「高血圧や不整脈があり将来の脳梗塞を予防したい」 といった不安をお持ちの方も多いと思います。

吉祥寺おおさき内科・脳神経内科では、 神経内科専門医/総合内科専門医の院長が、 問診・神経学的診察に加え、必要に応じてMRI・血液検査・ホルター心電図などを組み合わせて、 脳梗塞の原因や再発リスクを評価します。

そのうえで、抗血小板薬・抗凝固薬・血圧やコレステロールの管理・生活習慣の調整などについて、 患者さん一人ひとりの状況に合わせた再発予防計画をご提案します。 大学病院や脳卒中センターでの急性期治療後のフォローアップのご相談も承っています。

検査からまとめて評価したい方へ(認知症・脳卒中ドック)

「いまの脳の状態」と「将来の脳卒中・認知機能リスク」をまとめて評価したい方は、 認知症・脳卒中ドック(脳ドック) もご検討ください。

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当院には、武蔵野市・三鷹市・杉並区だけでなく、その他23区や都外からも脳梗塞・脳卒中の診療で多くの方にお越しいただいています。

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この記事の監修者

院長 大﨑 雅央(Masao Osaki)

吉祥寺おおさき内科・脳神経内科
日本神経学会 神経内科専門医/日本内科学会 総合内科専門医

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参考文献

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  • [1] 日本脳卒中学会. 脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕(改訂項目). PDF
  • [2] 日本脳卒中学会. 静注血栓溶解(rt‑PA:アルテプラーゼ)療法 適正治療指針 第三版. PDF
  • [3] The NINDS rt‑PA Stroke Study Group. Tissue plasminogen activator for acute ischemic stroke. N Engl J Med. 1995. PubMed
  • [4] Berkhemer OA, et al. A randomized trial of intraarterial treatment for acute ischemic stroke (MR CLEAN). N Engl J Med. 2015. PubMed
  • [5] Nogueira RG, et al. Thrombectomy 6 to 24 hours after stroke with a mismatch between deficit and infarct (DAWN). N Engl J Med. 2018. PubMed
  • [6] Albers GW, et al. Thrombectomy for stroke at 6 to 16 hours with selection by perfusion imaging (DEFUSE‑3). N Engl J Med. 2018. PubMed
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