【専門医監修】一過性脳虚血発作(TIA)とは?症状・原因・検査・治療・予防を解説

一過性脳虚血発作(TIA:Transient Ischemic Attack)は、脳へ行く血液の流れが 一時的に悪くなることで起こる「脳梗塞の前触れ」のような状態です。 脳梗塞と同じように、 片側の手足の脱力・しびれ、顔のゆがみ、言葉が出ない/ろれつが回らない、片目が見えない・二重に見える といった症状が突然現れますが、多くは数分〜1時間以内に自然に良くなります[1][2]

ただし、「治った=安心」ではありません。 大規模な研究から、TIAのあと90日以内におよそ1〜2割の方が脳梗塞を起こし、 そのうち約半分は最初の2日以内に起こることが分かっています[3][4][5]。 一方で、発症直後から専門的な検査と治療(抗血小板薬・血圧やコレステロールの管理など)を行うことで、 早期の再発リスクを大きく下げられることも示されています[6]

このページでは、一過性脳虚血発作とは何か・どんな症状に注意すべきか・検査や入院はどのくらい必要か・ どうすれば再発を防げるのかを、ご説明いたします。

いま症状がある/さっきまで症状があった方へ: たとえ治っていても脳梗塞の前触れの可能性があります。まずは#7119番へ相談し、救急診療を受けてください。

目次

要点サマリー(このページで分かること)

  • 一過性脳虚血発作(TIA)は「軽い脳卒中」ではなく、脳梗塞の重要な警告サインであり、症状が治っていても受診が必要な理由が分かります。
  • どんな症状がTIAとして注意すべきか(片側の脱力・顔のゆがみ・ことばの障害・片目の視力低下など)と、脳梗塞との違い・関係を整理できます。
  • TIAのあといつ・どのくらい脳梗塞を起こしやすいのか、ABCD2スコアなどを用いた危険度評価の考え方と、入院や精密検査が必要になる目安を確認できます。
  • MRI・血管の検査・心電図や心エコー・血液検査など、TIAで行う主な検査の目的と、原因ごとに異なる治療(抗血小板薬/抗凝固薬/頸動脈治療など)のイメージを持っていただけます。
  • 再発予防に大切な血圧・コレステロール・糖尿病・禁煙・運動習慣について、日常生活で意識したいポイントが分かります。
一言でいうと: このページは、「TIAかな?」と思ったときに、いま何をすべきか・どんな検査や入院があるか・その後どう予防していくかを、落ち着いて整理していただくためのガイドです。

一過性脳虚血発作(TIA)とは

一過性脳虚血発作(TIA)は、脳や網膜の一部に行く血の流れが一時的に悪くなることで起こる、 神経症状(手足の麻痺・言葉の障害など)が出る状態を指します。 近年の国際的な定義では、MRIの拡散強調画像(DWI)で新しい脳梗塞の影が残っていないことを条件とする、 「組織学的(tissue-based)定義」が採用されています[1]

以前は「24時間以内に完全に良くなる脳卒中」と時間で定義されていました。 しかしその後の研究で、昔の定義でTIAとされた方の3〜4割ほどに、実はMRIで小さな脳梗塞が見つかることが分かりました[2]。 また、症状の多くは数分〜1時間以内におさまるため、「24時間」という区切りは実際の経過と少し合わないことも分かってきました[2]

このため現在は、TIAと軽い脳梗塞(軽症脳梗塞・minor stroke)は、 まったく別の病気ではなく、連続したグラデーションのような関係と考えられています。 どちらも脳卒中として緊急性の高い病気であり、できるだけ早く診断と治療を行うことが勧められます[1][2]

項目一過性脳虚血発作(TIA)脳梗塞
血流の状態 脳や目の血管が一時的に細くなる/詰まりかけるが、自然に再開通する 血管の閉塞や高度な狭窄が続き、その部分の脳細胞がダメージを受ける
症状 片側の手足の脱力・しびれ、顔のゆがみ、言葉の障害、視野の欠けなど
脳梗塞とほぼ同じ
TIAと同じような症状だが、多くは長く続き、後遺症を残しやすい
症状の持続時間 多くは数分〜1時間以内、遅くとも24時間以内に完全に消失[2] 24時間以上続くことが多い。自然に完全回復することは少ない
MRI(拡散強調像) 「現在の定義」では急性脳梗塞の影を残さないことが条件
(昔の定義では3〜4割で小さな梗塞が見つかる)[2]
ほとんどで拡散強調像で新しい梗塞が見つかる
位置づけ 脳梗塞になりかけている状態」。脳卒中の大事な警告サイン 実際に脳細胞の障害が起こった状態
治療の緊急度 TIAも脳梗塞も同じく緊急性が高く、「時間との勝負」です。
ポイント:一過性脳虚血発作は「軽い病気」ではなく、脳梗塞の前触れです。 症状が消えても必ず医療機関での評価を受けましょう。

一過性脳虚血発作(TIA)の原因・メカニズム

一過性脳虚血発作(TIA)は、脳や網膜の血管のどこかで血の流れが一時的に悪くなることで起こります。 大きく分けると、次のようなタイプがあります。

  • ① 頸動脈など太い動脈の動脈硬化(アテローム血栓性)
    首の血管(頸動脈)や頭の中の太い動脈の内側にコレステロールのかたまり(プラーク)ができ、 そこに血のかたまり(血栓)が付着して狭くなったり、一時的に詰まりかけたりするタイプです。 一過性黒内障(片目がカーテンを引いたように見えなくなる症状)も、このタイプで起こることがあります。
  • ② 心房細動など心臓が原因のタイプ(心原性塞栓症)
    心房細動などの不整脈があると心臓の中で血栓ができやすくなり、 それが血流に乗って脳や頸動脈へ飛んで一時的に血管をふさぐことがあります。 脳梗塞の原因としても非常に重要なタイプです。
  • ③ 細い血管の動脈硬化(ラクナ系)
    高血圧・糖尿病・脂質異常症などの影響で、脳の奥深くを走る細い血管がもろくなり、 一時的に詰まりかけることでTIAや軽い脳梗塞を起こすタイプです。
  • ④ その他の原因
    頸動脈や椎骨動脈の解離(血管の壁が裂ける状態)や、血管炎、血液の病気などが背景にあることもあります。 若い方のTIAでは、これらの原因を慎重に調べることがあります。

どのタイプのTIAかによって、使う薬(抗血小板薬か抗凝固薬か)や、頸動脈の手術・ステント治療の必要性が大きく変わります。 そのため、MRI・血管の検査・心電図や心エコーなどを組み合わせて、原因をできるだけ特定することが再発予防のカギになります。

ポイント:「TIAだったかどうか」だけでなく、 「どんな原因のTIAだったか」まで突き止めることで、その後の治療がよりオーダーメイドになります。

一過性脳虚血発作の症状

TIAの症状は脳梗塞とほぼ同じです。 「突然起こる」「体の一部だけに出る」ことが特徴で、 代表的な症状は脳卒中の合図として知られるFASTで覚えると分かりやすいです。

合図具体的な症状TIAのときの注意点
F:Face
(顔)
顔の片側が下がる、笑顔がゆがむ 数分で元に戻ってもTIAの可能性があります。
鏡やスマートフォンで左右差を確認してみてください。
A:Arm
(腕)
片腕・片脚に力が入らない/しびれる、持ち上げても落ちてしまう その場では歩けるようになっても安心できません。
初めて起きた片側の脱力は要注意です。
S:Speech
(ことば)
ろれつが回らない、言葉が出ない、相手の話が理解できない ご本人よりも周りの方が異変に気づきやすい症状です。
可能であれば、症状が出ている様子を短く動画撮影しておくと診察の助けになります。
T:Time
(時間)
これらの症状が突然出てくるのが特徴です。 症状が出た時刻、もしくは「最後に普通だった時刻」をメモしておきましょう。
その後の治療の選択にとても大切な情報になります。

そのほか、TIAでは次のような症状が見られることもあります。

  • 片目が突然見えなくなる、カーテンが降りたように暗くなる(一過性黒内障
  • 両目が二重に見える、視野の半分が欠ける
  • ふらついて真っすぐ歩けない、片側に倒れそうになる
  • 急にろれつが回らなくなり、飲み込みにくくむせやすい
まとめ: 片側の脱力・しびれ、顔のゆがみ、ことばの異常、片目の視力低下突然起こり、たとえ数分で良くなっても脳卒中のサインです。

一過性脳虚血発作(TIA)の経過と脳梗塞リスク

TIAが「こわい」と言われる一番の理由は、そのあとしばらくの間に脳梗塞を起こしやすいからです。 救急外来でTIAと診断された方を追跡した古くからの研究では、 発症後2日以内に約3〜5%、7日以内に約5〜8%、90日以内におよそ10%前後が脳梗塞を起こしたと報告されています[3][4][5]

一方で、近年は救急〜専門外来での対応が進歩し、その後数年にわたる長期リスクは以前より低下してきています。 TIAや軽症脳梗塞の患者さんを世界的に追跡したTIAregistry.orgでは、 1年以内の脳卒中・心筋梗塞などの心血管イベントが約6%5年以内の脳卒中再発が約9.5%、心血管イベント全体が約13%と報告されています[9][10]。 つまり、最初の数日〜数か月が特に危険であり、その後もゼロではないリスクが続くと考えられています。

期間脳卒中・心血管イベントの頻度(おおよそ)イメージ
0〜2日(超急性期) 脳梗塞発症:約3〜5% もっとも危険な時間帯で、2日間でその後3か月分の脳梗塞の半分ほどが起こるとされています[3][4][5]
〜7日 脳梗塞発症:約5〜8% この1週間での対応が、今後の経過を大きく左右します。
〜90日 脳梗塞発症:約10%前後 古い研究では3か月で10〜20%と高リスクでしたが、早期治療により近年は低下傾向です[3][4]
〜1年 脳卒中・心筋梗塞など:約6% 専門医による集中的な管理下では、1年リスクはおよそ6%と報告されています[9]
〜5年 脳卒中再発:約9〜10%
心血管イベント全体:約13%
リスクは最初の1年に高いものの、その後も完全にはゼロにならず、長期の予防が大切です[10]
要点:TIAのあと最初の数日〜1週間がとくに危険ですが、その後も数年単位でリスクは続きます。 早期+長期の両方で予防に取り組むことが大切です。

ABCD2スコアによるリスク評価

TIAのあとごく早期(2〜7日以内)の脳梗塞リスクを簡単に見積もるために、 医療現場でよく使われるのがABCD2スコアです[7]。 「A:年齢」「B:血圧」「C:症状のタイプ」「D:症状の続いた時間」「D2:糖尿病の有無」 の5つの項目を合計して0〜7点で評価します。

項目内容点数
A:Age
(年齢)
60歳以上 1点
B:Blood pressure
(血圧)
初診時の血圧が140/90mmHg以上 1点
C:Clinical features
(臨床症状)
片側の脱力:2点
脱力はないが言語障害のみ:1点
最大2点
D:Duration
(症状持続時間)
60分以上:2点
10〜59分:1点
最大2点
D2:Diabetes
(糖尿病)
糖尿病がある 1点

代表的な研究では、ABCD2スコアと2日以内の脳梗塞リスクの関係は次のように報告されています[7]

低リスク
(0〜3点)
2日以内:約1.0%
中等度リスク
(4〜5点)
2日以内:約4.1%
高リスク
(6〜7点)
2日以内:約8.1%
重要:ABCD2スコアは、医療者が危険度や入院の必要性を判断するための道具です。 ご自身で点数だけを見て受診を控えるのではなく、「TIAかもしれない」と感じたら迷わず救急受診してください。

一過性脳虚血発作を繰り返すとき

TIAの中でもとくに注意が必要なのが、短い期間に何度も発作を繰り返すタイプです。 例えば「ここ数日で同じような片側のしびれや言葉のもつれが何度も出る」といった場合で、 「クレッシェンドTIA」や「Dual TIA(1週間以内に2回以上)」と呼ばれます。

このような頻回発作症状が長く続くTIAは、 脳梗塞を早期に起こしやすいことが、複数の研究や予測スコアで示されています[5][8]。 また、MRIで新しい梗塞の影がある場合や、 同じ側の頸動脈に高度な狭窄(細くなっている部分)がある場合も高リスク群と考えられます[2][8]

  • 数日〜1週間のあいだに同じような症状を2回以上繰り返す
  • 1回の症状が10分以上続く、あるいは60分以上続く
  • 症状が強く、ほとんど動けない/話せない状態になる
  • すでに心房細動頸動脈の高度狭窄があると言われている

以上に当てはまる場合は、脳梗塞直前のサインである可能性が高く、 「様子を見る」ではなく救急車での搬送・入院での精査が推奨されます。

まとめ:同じような発作を短期間に何度も繰り返すTIAはとくに危険です。 #7119番への相談をお願いいたします。

TIAが疑われたときの診断・検査

TIAは症状が消えてしまうため、病院に着いたときにはふつうの状態に戻っていることも多くあります。 そのため、どの血管が・どのような原因で一時的に詰まりかけたのかを、いくつかの検査を組み合わせて推測していきます[1][2]

  • 脳MRI(特に拡散強調像:DWI)
    ごく小さな脳梗塞でも見つけやすい検査です。 DWIで新しい梗塞の影があるTIAは、その後の脳梗塞リスクが高いことが知られています[2]
  • MRA/CTA・頸動脈エコー
    頸動脈や脳の血管がどのくらい細くなっているか・詰まっていないかを調べる検査です。 必要に応じて、頸動脈の手術やステント治療(風船で広げて金属の筒を入れる治療)を検討します。
  • 心電図・ホルター心電図・心エコー
    一時的な心房細動などの不整脈や、心臓の中に血のかたまりができていないかを調べます。 TIAの原因が心臓から飛んでくる血栓(心原性)であった場合、再発予防の治療が大きく変わります。
  • 血液検査
    コレステロール・中性脂肪・血糖値・炎症・凝固機能などを調べます。 動脈硬化や血栓ができやすい体質かどうかを評価し、薬や生活習慣の改善方針を立てます。

これらの情報を組み合わせて、「心臓が主な原因か」「首の血管か」「細い血管の動脈硬化か」などを総合的に判断し、 それぞれに合った予防法(抗血小板薬・抗凝固薬・手術・生活習慣の改善など)を決めていきます。

ポイント:TIAの診断は症状だけでは不十分で、 MRI・血管・心臓などの検査を組み合わせた総合判断が重要です。

一過性脳虚血発作の入院日数は?

入院日数は、行う検査・治療や合併症の有無、病院の役割(急性期病院かどうか)によって大きく変わります。

  • 全国の脳卒中専門施設が参加する日本脳卒中データバンク2021年報告では、 TIAで入院した方の在院日数の分布が示されており、中央値は6日、4分の1の方は4日以内、4分の3の方は9日以内に退院していました[13]。 つまり、日本では「4〜9日程度の入院」がもっとも一般的と考えられます。
  • 日本の脳卒中専門病院13施設を対象とした多施設研究では、 TIA患者さんの平均入院日数は約13日と報告されています[14]。 この研究はやや以前のデータであり、近年は検査や治療の効率化により入院期間が短くなる傾向がみられます。

これらを踏まえると、多くの方は数日〜1週間前後の入院で検査と治療方針の決定が行われています。 ただし、必要な検査の数や内容・合併症の有無・血圧や心拍の安定度によっては、もっと短く終わる方もいれば、 頸動脈の手術や心臓の治療が必要になり少し長めの入院になる方もいらっしゃいます。

まとめ:TIAの入院日数は一律ではなく、危険度・必要な検査・合併症などによって決まります。 当院では、患者さんと相談しながら、「必要な検査と治療を安全に終えるのに必要な期間」を目安に入院計画を立てています。

一過性脳虚血発作の治療・再発予防(薬と生活習慣)

一過性脳虚血発作(TIA)を経験された方は、言いかえると「脳梗塞を未然に知ることができた」とも言えます。 このタイミングでしっかりと予防に取り組むことで、将来の脳卒中や心筋梗塞のリスクを大きく下げられることが 多くの研究で示されています[6][9][10]

1)薬による再発予防(抗血栓薬を中心に)

  • 非心原性TIA(心房細動などがない場合)
    多くの方では、アスピリンやクロピドグレルなどの抗血小板薬を内服します。 中国のCHANCE試験や国際共同研究POINT試験では、 発症直後の一定期間(21〜90日程度)にアスピリン+クロピドグレルの二剤併用を行うことで、 脳卒中の早期再発を有意に減らせることが示されました[11][12]。 一方で、長期間(二剤を何か月も何年も続ける)の併用は出血のリスクが増えるため、 通常は短期間のみ二剤→その後は単剤へ移行します。
  • 心原性TIA(心房細動など心臓が原因と考えられる場合)
    この場合は、血をさらさらにする薬の中でも抗凝固薬(DOACと呼ばれる新しいタイプの薬やワルファリン)が中心となります。 心房細動のある方では、抗凝固薬により脳梗塞リスクを大きく減らせることが多数の試験で確認されています。

2)危険因子のコントロール

  • 血圧:多くの方で130/80mmHg未満を目標にします。
  • 脂質:スタチンなどでLDLコレステロール(悪玉)をしっかり下げます。
  • 糖尿病・喫煙・肥満:血糖コントロール、禁煙、適正体重の維持が重要です。
  • 運動:週合計150分程度の軽〜中等度の有酸素運動(早歩きなど)を目安とします。

3)毎日の生活でできる工夫

  • 急に立ち上がるとふらつく」場合は、いったん座ってから数秒おいて立つ習慣をつける
  • 塩分の多い加工食品・外食を控え、薄味+香辛料・レモン・ハーブで風味をつける
  • タバコは紙巻き・電子タバコを含めて完全禁煙を目標にする
  • 飲み忘れを防ぐため、一包化・ピルケース・スマホアプリなどを活用する
  • 定期通院をさぼらず、気になる症状や生活の不安はその都度医師に相談する
要点:TIAの再発予防は、「薬」+「生活習慣」の両方を車の両輪のように回していくことが大切です。 どの薬をどのくらい続けるかは、原因や年齢・出血リスクによって変わりますので、 必ず担当医と相談しながら決めていきましょう。

受診をお考えの方へ

このページをご覧になっている方の中には、 「さっき一時的に手足が動かなくなった」「数日前に似た発作があったが、病院に行くべきか迷っている」 といった不安をお持ちの方もいらっしゃると思います。

現在も症状が続いている/ここ30分ほどのあいだに突然症状が出たばかりという場合は、 まずは#7119や救急相談窓口をご利用いただき、 救急医療機関での評価・治療を最優先してください。
一方で、症状はすでにおさまっているものの、TIAや脳梗塞が心配な方・検査や再発予防について相談したい方は、 外来で専門的な評価を受けていただくことがとても大切です。

吉祥寺おおさき内科・脳神経内科では、 神経内科専門医/総合内科専門医の院長が、 問診・神経診察に加え、必要に応じてMRI・血液検査・ホルター心電図などを組み合わせて、 「本当にTIAだったのか」「どのくらい再発リスクがあるのか」を丁寧に評価いたします。
そのうえで、抗血小板薬・抗凝固薬・血圧やコレステロールの管理・生活習慣の調整などについて、 患者さんごとに最適な方針を一緒に考えてまいります。

「一度救急でTIAと言われたが、その後のフォローの仕方が不安」「高血圧や糖尿病・脂質異常症もあり、 将来の脳梗塞リスクをしっかり減らしたい」といったご相談も承っています。

当院には、武蔵野市・三鷹市・杉並区だけでなく、 調布市・小金井市・練馬区・世田谷区・中野区や、その他都外などからも、 TIAや脳卒中のご相談で多くの患者さんにお越しいただいています。

よくあるご質問(FAQ)

一過性脳虚血発作(TIA)とは何ですか?

一過性脳虚血発作(TIA)は、脳や網膜の血流が一時的に悪くなることで起こる発作で、 片側の手足の脱力やしびれ、顔のゆがみ、ことばの障害、片目の視力低下など 脳梗塞と同じような症状が突然現れます。 多くは数分〜1時間以内に自然に良くなり、MRIでは新しい脳梗塞の傷が残らないことが特徴です。 ただし「軽い脳梗塞」ではなく、今後本当の脳梗塞を起こしやすい状態のサインと考えられており、 早めの検査と治療が大切です。

症状がすぐ治った場合でも受診は必要ですか?

はい、必要です。 症状が完全に治ったとしても、一過性脳虚血発作(TIA)の可能性があります。 大規模な研究では、TIAのあと90日以内におよそ1〜2割の方が脳梗塞を起こし、 その半分近くが最初の2日以内に起こると報告されています。 とくに発症から48〜72時間は危険性が高いため、 症状が治まっていても早めに脳卒中を専門とする医療機関での評価を受けることをおすすめします。

一過性脳虚血発作を繰り返しています。危険ですか?

短い期間に同じようなTIAを何度も繰り返す「クレッシェンドTIA」や、 1週間以内に2回以上発作が起こるDual TIAは、脳梗塞の早期発症リスクが高いことが分かっています。 また、MRIで新しい脳梗塞の影がある場合や、同じ側の頸動脈に強い狭窄がある場合も注意が必要です。 このような場合は、救急車での搬送・入院での精密検査と治療が勧められますので、 「繰り返すから様子を見る」のではなく、早めに受診してください。

一過性脳虚血発作の入院日数はどのくらいですか?

一過性脳虚血発作の入院日数は、危険度や行う検査、合併症の有無によって変わります。 日本脳卒中データバンクの報告では、TIAで入院した方の在院日数の中央値は6日で、 4分の1の方は4日以内、4分の3の方は9日以内に退院していました。 つまり、日本では4〜9日程度の入院がもっとも一般的と考えられます。 ただし、検査が非常にスムーズに進められる場合にはもっと短く済むこともありますし、 頸動脈の手術や心臓の治療が必要な場合などは長くなることもあります。 実際の入院期間は、必要な検査と治療を安全に終えるためにどれくらい必要かを 主治医と相談しながら決めていきます。

大﨑 雅央 院長の写真

この記事の監修者

院長 大﨑 雅央(Masao Osaki)

吉祥寺おおさき内科・脳神経内科
日本神経学会 神経内科専門医/日本内科学会 総合内科専門医

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参考文献

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  • [1] Easton JD, Saver JL, Albers GW, et al. Definition and evaluation of transient ischemic attack: a scientific statement for healthcare professionals. Stroke. 2009;40(6):2276–2293.
  • [2] Sørensen AG, Ay H. Transient ischemic attack: definition, diagnosis, and risk stratification. Neuroimaging Clin N Am. 2011;21(2):303–313.
  • [3] Johnston SC, Gress DR, Browner WS, Sidney S. Short-term prognosis after emergency department diagnosis of transient ischemic attack. JAMA. 2000;284(22):2901–2906.
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