頭痛について
目次
吉祥寺おおさき内科・脳神経内科は吉祥寺駅徒歩1分。神経内科専門医/総合内科専門医の院長が、緊急性の高い頭痛を鑑別した上で、国際頭痛分類(ICHD‑3)に沿って片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛などの一次性頭痛を見極め、二次性頭痛(内科的背景疾患に伴う頭痛)も丁寧に鑑別します。治療はアセトアミノフェン/NSAIDs・トリプタン・ラスミジタン(レイボー®)などの発作時治療から、予防薬・抗CGRP抗体までエビデンスに基づいて選択・調整します。必要に応じて頭部MRI/CTを提携施設で迅速に手配します。[1][2][4][5][13]
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受診のきっかけ(外来の目安):
・頭痛の回数や強さが増えてきた/長引くと感じる
・市販薬やトリプタンの使用日数が増えてきた/使い方を見直したい
・前兆がある/誘因が分からない/生活や仕事・学業に支障が出ている
・予防薬や抗CGRP抗体の適応を相談したい
・妊娠・授乳中/妊活中の薬・注射について相談したい
・朝の頭痛、いびき・日中の眠気があり睡眠時無呼吸の評価を希望 など
診療の進め方:初診では病歴聴取と神経診察を重視し、必要に応じてMRI/CT、採血、神経生理検査を選択します。[2]
このページでは、救急が必要な頭痛の見分け方と、片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛の診療方針(検査・治療・予防)を解説します。
【直ちに救急対応が必要な頭痛】
- 突然の雷鳴様の激痛
- 新たな神経症状(片側の麻痺/ろれつが回らない/意識がもうろう/けいれん など)
- 発熱があり、意識がもうろうとする・首を前に曲げられない・あごを胸につけられないほど首が固い(髄膜炎が疑われます。特に細菌性髄膜炎は進行が速く危険です)
- 痛い赤い眼・かすみ目・虹が見える(急性閉塞隅角緑内障の疑い)
これらに当てはまる場合は、当院の予約ではなくまず#7119(救急相談センター)にお電話のうえ、指示に従って救急医療機関を受診してください。
緊急性の高い頭痛(一覧)
緊急度 | 病名 | 症状の簡単な解説 | 主なサイン・状況 |
---|---|---|---|
超緊急 | くも膜下出血(SAH) | 脳の表面に突然出血が起きる病気。 「バットで殴られたような」最強の頭痛。 |
雷鳴様頭痛/嘔吐・首のこわばり/入浴・激しい運動・性行為の直後 など |
超緊急 | 脳卒中(脳内出血・脳梗塞) | 脳の血管が破れる・詰まることで起こる病気。 | 片側の手足の力が入らない・ろれつが回らない・急な視野の欠け・ふらつき |
超緊急 | 髄膜炎/脳炎 | 脳やその膜に感染・炎症が起きる病気。 特に細菌性髄膜炎は進行が速く生命に関わります(ウイルス性でも重症例はあり得ます)。 |
発熱・強い頭痛・首を前に曲げられない・意識がもうろう・けいれん・光がまぶしい |
超緊急 | 急性閉塞隅角緑内障 | 目の中の圧が急に上がる病気。 | 片側の激しい眼痛・かすみ目・虹が見える・吐き気/眼球が硬い感じ |
超緊急 | 一酸化炭素(CO)中毒 | 不完全燃焼のガスを吸い込むことで起こる中毒。 | 同じ空間の家族も同時に頭痛・めまい・吐き気/冬場・換気不良・暖房器具の使用時 |
緊急 | 頸動脈・椎骨動脈の解離 | 首の血管の内側に裂け目ができる状態。 | 首〜後頭部の突然の強い痛み/まぶたが下がる・片側の汗が出にくい/軽い外傷・スポーツ・整体後 |
緊急 | 脳静脈洞血栓症(CVT) | 脳の静脈に血のかたまりができ、流れが悪くなる病気。 | 新しく続く頭痛/けいれん・視力のかすみ・うっ血乳頭/妊娠・産後・経口避妊薬・脱水など |
緊急 | 高血圧緊急症(高血圧性脳症・PRES) | 非常に高い血圧で脳がむくみ、症状が出る状態。 | 激しい頭痛・視覚の異常・意識がもうろう・けいれん/血圧が極端に高い |
緊急 | 巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)(50歳以上) | 頭の血管に炎症が起きる病気。視力低下の危険あり。 | こめかみの痛み・顎が疲れる・発熱・体重減少・視力のかすみ |
緊急 | 妊娠高血圧腎症・子癇前症/産後子癇 | 妊娠・産褥期に血圧上昇や痙攣リスクが高まる状態。 | 強い頭痛・視覚異常・上腹部痛・むくみ/妊娠後期〜産後に発症 |
緊急 | 可逆性脳血管れん縮症候群(RCVS) | 脳の血管が一時的に細くなり、激しい頭痛を繰り返す病気。 | 反復する雷鳴様頭痛/産後・一部の薬(血管収縮薬など)・大麻など |
緊急 | 下垂体卒中(下垂体腫瘍の急な出血など) | ホルモンを作る下垂体で急なトラブルが起きる状態。 | 突然の強い頭痛+視力低下・物が二重に見える・吐き気/まぶたが下がる |
準緊急 | 脳腫瘍・占拠性病変 | 脳に「できもの」ができ、圧迫する状態。 | だんだん強くなる頭痛・朝に悪化・吐き気/けいれん・片側のしびれや力が入らない |
準緊急 | 慢性硬膜下血腫 | 頭を打った後(軽い外傷でも)に、時間をおいて血がたまる状態。 | 高齢者・抗凝固薬内服・外傷後/頭痛・物忘れ・ふらつき・軽い麻痺 |
緊急度の目安:超緊急=直ちに救急対応が必要(#7119で相談し指示に従う)/緊急=当日中に専門評価(救急含む)/準緊急=1〜3日以内に専門受診。
一次性頭痛(片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛)
頭痛は多くの方が経験する症状ですが、原因(一次性/二次性)により対応が異なります。一次性頭痛は片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛に大別され[1]、二次性頭痛は脳血管障害や感染症などが背景にあるため緊急評価が必要です[2]。
1. 片頭痛(Migraine)
拍動性や片側性であることが多い一方、非拍動性・両側性のこともあります。中等度〜重度で、日常動作で増悪しやすく、悪心/嘔吐や光・音過敏を伴い、未治療で4〜72時間持続する発作性頭痛が典型です(前兆を伴う場合あり)。[1][2]
治療の基本
急性期(発作時) | 早めにアセトアミノフェン/NSAIDs → 不十分ならトリプタン。吐き気が強いときは制吐薬。トリプタン不向きならラスミジタン(血管収縮なし)[4]。 |
予防 | ロメリジン・β遮断薬・バルプロ酸・アミトリプチリンなどから選択。抗CGRP抗体は既存薬で効果不十分などで検討[5][6][13]。 |
注意 | 薬剤乱用頭痛を避けるため、鎮痛薬/トリプタンの使用日数は月10〜15日以内を目安に[2]。 |
2. 緊張型頭痛(Tension-type headache)
両側性の圧迫・締め付け感で、軽〜中等度、日常動作で悪化しにくいのが特徴です。[1]
治療の基本
急性期 | アセトアミノフェン/NSAIDsを推奨。 オピオイド・トリプタンは推奨されません[7]。 |
予防療法 | アミトリプチリンが慢性型で第一選択[7]。 併せてストレッチ・姿勢是正・リラクゼーション・睡眠衛生を行います[8]。 |
3. 群発頭痛(Cluster headache)
片側の眼窩〜側頭部の激痛が1日数回、群発期に集中し、流涙・鼻汁など自律神経症状を伴います[1]。
治療の基本
急性期 | 高流量酸素吸入(12L/分以上、専用マスク)や皮下注スマトリプタンが有効です[9][10]。鼻噴霧トリプタンが効く方もいます。 |
予防 | 予防薬は個別に専門的判断が必要です。適応や安全性を確認し、必要に応じて連携医療機関と協力して治療計画を立てます。 |
当院での頭痛診療の主な対応
- 急性期薬のタイミング・製剤選択(制吐の併用を含む)
- 予防療法の選択と調整
- 薬剤乱用頭痛の評価と計画的な減量・再発予防
- 睡眠時無呼吸が疑われる場合の在宅簡易検査〜CPAP療法連携
- 生活指導(睡眠衛生・誘因コントロール・ストレッチ/姿勢)
二次性頭痛とは(内科的な病気が隠れていないか?)
二次性頭痛とは、脳出血・くも膜下出血・髄膜炎・動脈解離・腫瘍・高血圧緊急症など、背景疾患による頭痛です。突然の激痛・発熱+首を前に曲げられない・新たな神経症状などがあれば直ちに救急対応が必要です[2]。
ここでは、緊急性が高くない場合でも内科的評価が役立つ代表例を挙げます。
カテゴリー | 主な原因(例) | 頭痛と一緒に出やすい症状(受診の目安) |
---|---|---|
感染・炎症 | 髄膜炎、副鼻腔炎、全身性感染症(インフルエンザ等) | 髄膜炎:発熱+首を前に曲げられない・強い吐き気・光がまぶしい/副鼻腔炎:顔面痛・鼻づまり・前屈で増悪 |
血圧・血管 | 高血圧緊急症/脳症、高血圧コントロール不良、巨細胞性動脈炎(50歳以上) | 非常に高い血圧+視覚変化・ぼんやり/こめかみ痛や顎疲労・発熱・体重減少 |
内分泌・代謝 | 甲状腺機能低下/亢進、副腎不全、低血糖、高血糖(脱水)、脱水、電解質異常(低Na/高Ca など) | だるさ・寒がりや動悸/発汗/体重変化・ふるえ、食欲低下・体重減少、口渇・多尿・脱力 |
造血・栄養 | 貧血(鉄欠乏など)、多血症(赤血球増多)、低栄養 | 息切れ・動悸・顔色不良・疲れやすい/紅潮・かゆみ/立ちくらみ |
腎・肝・全身 | 腎機能障害(尿毒症・透析関連)、肝機能障害、全身性自己免疫疾患(SLE/血管炎など) | むくみ・尿量変化・吐き気/食欲不振・黄疸/発熱・関節痛・発疹 など |
睡眠・呼吸 | 睡眠時無呼吸症候群(OSA)、慢性の低酸素・二酸化炭素貯留 | いびき・日中の眠気/朝の頭痛/息切れ・倦怠感[11][12] |
薬剤・物質 | 硝酸薬、PDE‑5阻害薬、ホルモン、カフェイン離脱、アルコール、一酸化炭素、鎮痛薬の過用 | 開始・増量後や急な中止で悪化/同居家族も同時に頭痛(CO)/鎮痛薬を月10–15日超で悪化 |
【頭痛】よくあるご質問(FAQ)
A. 受診判断・救急
救急受診したほうが良い頭痛は何ですか?
直ちに救急対応が必要:突然の雷鳴様の激痛/新たな神経症状(麻痺・ろれつが回らない・意識がもうろう・けいれん)/発熱+首を前に曲げられない(あごを胸につけられない)(特に細菌性髄膜炎が危険)/痛い赤い眼・かすみ目・虹が見える。
緊急ではないが受診を推奨:頭痛の頻度・強さが増えてきた、50歳以降の初発、妊娠・産後、抗凝固薬内服、がん・免疫不全、頭部外傷後など。
頭痛は何科に行けばいいですか?
脳神経内科を推奨します。一次性/二次性頭痛の系統的な鑑別(ICHD‑3に基づく病歴聴取・神経診察)、必要に応じたMRI/CTや採血の選択、発作時治療と予防療法(抗CGRP抗体を含む)の最適化、薬剤乱用頭痛の評価と減量計画、睡眠時無呼吸など併存症の評価、生活指導〜再発予防まで一貫した管理が可能です。強い急性症状については本文の「直ちに救急対応が必要な頭痛」をご確認ください。
50歳以降に初めて強い頭痛が出たら受診すべきですか?
強い初発頭痛は原因検索が重要で、当日中の専門評価(救急を含む)が望ましいと考えます。日常生活が保てる軽度の場合でも、できるだけ早め(1〜3日以内)の受診を推奨します。必要に応じてMRI/CTを当日〜数日内に連携機関で手配します。
二日酔いの頭痛と危険な頭痛はどう見分けますか?
二日酔いは脱水・睡眠不足などで起こり、水分・休息で多くは24時間以内に改善します。一方、今までにない強い痛み、神経症状、反復する嘔吐、発熱+首が動かせない、同居家族も同時に頭痛(一酸化炭素の可能性)などは危険サインです。ためらわず医療機関への受診をご検討ください。
B. 診断・検査
MRI・CTは当日撮れますか?
状況に応じて当日〜数日内の実施を目標に、連携機関で調整します(混雑により変動)。
採血で頭痛の何が分かりますか?(炎症・甲状腺・貧血など)
血算(貧血/多血)、炎症反応(CRP、赤沈:側頭動脈炎等)、甲状腺機能(TSH/FT3/FT4)、電解質(Na/Ca)、腎肝機能、血糖などで原因の手がかりが得られます。
画像が正常でも頭痛は起こりますか?
はい。片頭痛・緊張型・群発など一次性頭痛は画像が正常でも診断されます。いつもと違う激痛や新たな神経症状を伴う場合は二次性頭痛の除外が必要です(本文の一覧・受診目安を参照)。
C. 病型ごとの疑問
片頭痛と緊張型頭痛の違いは何ですか?
片頭痛は、片側性や拍動性であることが多いものの必須ではありません。典型的には中等度〜重度で、日常的な身体活動で増悪し、悪心/嘔吐または光過敏・音過敏のいずれかを伴い、未治療で4〜72時間続く発作性頭痛です。
緊張型頭痛は両側性で圧迫/締め付け感、軽〜中等度、日常活動で増悪しにくいのが特徴で、悪心は目立たず、光過敏または音過敏はあってもどちらか一方のみです。[1][2]
緊張型頭痛の典型症状とセルフチェックのポイントは何ですか?
両側の締め付け感、軽〜中等度、日常動作で悪化しにくい、吐き気は目立たないのが特徴。長時間同一姿勢・ストレス・睡眠不足が誘因に。ストレッチ・姿勢/睡眠の見直し・適度な運動が有効です。
群発頭痛の典型症状と片頭痛との違いは何ですか?
片側の眼窩〜側頭部の激痛が15〜180分持続し、流涙・鼻汁・まぶたの下がり等の自律神経症状を伴い、じっとしていられないのが典型。片頭痛は4〜72時間で、吐き気・光/音過敏が目立ちます。
群発頭痛はいつまで続きますか?寛解と再発の目安は?
発作は1〜8回/日で数週間〜数か月続く群発期を作り、その後数か月〜数年の寛解をとることが多いです。1年以上寛解がないか寛解が3か月未満なら慢性群発頭痛に分類されます。
D. 生活・治療
片頭痛の治療・費用・最新注射(抗CGRP抗体)は何ですか?
本ページは概略です。詳しい内服/注射の比較・費用・運転可否などは↓の専用ページをご覧ください。
▶ 片頭痛ページのFAQを見る
高血圧で頭痛は起こりますか?危険な数値の目安はありますか?
頭痛の原因は多因子ですが、非常に高い血圧+症状(視覚異常・意識がもうろう・胸痛・息切れ・神経症状)は高血圧緊急症の可能性。一般に180/120mmHg超で症状を伴う場合は速やかに受診をおすすめします。
マッサージや整体で悪化するケースはありますか?
一般に軽い施術は有用ですが、首の強いひねりなどはまれに血管のトラブル(動脈解離)と関連します。施術後に突然の後頸部〜後頭部痛、まぶたが下がる、片側の汗が出にくい、しびれ・脱力があれば速やかに受診をおすすめします。
薬を飲みすぎて頭痛が悪化することはありますか?(薬剤乱用頭痛)
あります。市販鎮痛薬やトリプタン等の使用が月10〜15日以上だとリスクが上がります。使い方の見直し+予防薬の導入で改善が見込めます。
参考文献(エビデンス)
- Headache Classification Committee of the International Headache Society (IHS). The International Classification of Headache Disorders, 3rd edition (ICHD-3). Cephalalgia. 2018. PDF
- NICE guideline CG150. Headaches in over 12s: diagnosis and management. Updated 2021. Link
- Eigenbrodt AK, et al. Diagnosis and management of migraine in ten steps. Nat Rev Neurol. 2021;17:501–514. Link
- Alsaadi T, et al. Acute Treatment of Migraine: Expert Consensus Statements from the United Arab Emirates. Neurol Ther. 2024;13(2):257–281. PubMed
- Silberstein SD, et al. Pharmacologic treatment for episodic migraine prevention in adults. Neurology. 2012;78:1337–1345. PubMed
- Charles AC, et al. CGRP‑targeting therapies are a first‑line option for migraine prevention: AHS Position Statement Update. Headache. 2024;64:333–341. Link
- Bendtsen L, et al. EFNS guideline on the treatment of tension‑type headache. Eur J Neurol. 2010;17:1318–1325. PubMed
- Lee HJ. Update on Tension‑type Headache. Headache & Pain Research. 2024. Link
- Cohen AS, et al. High‑flow oxygen for treatment of cluster headache: a randomized trial. JAMA. 2009;302:2451–2457. PubMed
- The Sumatriptan Cluster Headache Study Group. Treatment of Acute Cluster Headache with Sumatriptan. N Engl J Med. 1991;325:322–326. NEJM
- Seo MY, et al. Improvement of morning headache in adults with obstructive sleep apnea after positive airway pressure therapy. Sci Rep. 2023;13:14897. PMC
- Patil SP, et al. Treatment of Adult Obstructive Sleep Apnea with Positive Airway Pressure: An AASM Clinical Practice Guideline. J Clin Sleep Med. 2019;15:335–343. Link
- 日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会 監修. 頭痛の診療ガイドライン 2021(Minds要約). Link