片頭痛予防の新薬|注射と経口の違い、5種類のCGRP関連薬を神経内科専門医が解説

60秒でわかるCGRP関連薬

  • CGRP関連薬は片頭痛のメカニズムを狙い撃ちする初めての予防薬です。従来の予防薬と違い、片頭痛発作の引き金となるCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)の働きを直接ブロックします。
  • 日本で使えるCGRP関連薬は5種類:注射タイプ(アジョビ・エムガルティ・アイモビーグ)と経口タイプ(ナルティーク・アクイプタ)に分かれます。
  • 健康保険適用の対象は、月平均4日以上の片頭痛発作があり、既存予防薬で効果が不十分または副作用で続けられなかった方です。初診で適応条件を確認します。
  • 臨床試験では、約半数の患者で月の発作日数が50%以上減ることが報告されています。個人差があり、3か月程度で効果判定を行います。
  • 3割負担の月額目安は約12,000〜15,000円。高額療養費制度の対象になる場合もあります。
  • 当院では神経内科専門医が診断と適応判断を行い、注射・経口5種から個別に最適な薬剤を提案します。初診時はWEB予約をご利用ください。
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頭痛発作の頻度を月単位で減らしたい方へ。CGRP関連薬は、片頭痛の発作回数や強度を予防的に下げる比較的新しい治療です。日本では2021年以降、注射タイプ3種類(アジョビ・エムガルティ・アイモビーグ)と経口タイプ2種類(ナルティーク・アクイプタ)が承認され、いずれも健康保険で使えます(適応条件あり)。

本ページでは、当院の頭痛外来で対応している神経内科専門医による説明として、5種類のCGRP関連薬の違い・選び方・注意点をまとめます。

CGRP関連薬とは何ですか? — 片頭痛発作の引き金を抑える新治療

CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)は、片頭痛発作のときに脳の三叉神経から放出され、血管を広げて炎症を起こす働きがあります。CGRP関連薬は、このCGRPの働きをブロックすることで、片頭痛発作の頻度や強さを下げます。

従来の予防治療(プロプラノロール、バルプロ酸、ロメリジン等)が「片頭痛以外にも作用する薬を片頭痛に応用していた」のに対し、CGRP関連薬は片頭痛のメカニズムを狙い撃ちする初めての薬です。臨床試験では、約半数の患者で月の発作日数が50%以上減ることが報告されています(個人差はあります)。

どんな人が対象になる?(健康保険適用の目安)

片頭痛と確定診断されており、月平均4日以上の片頭痛発作があり、既存の予防薬(プロプラノロール、バルプロ酸、ロメリジン等)で効果が不十分または副作用で続けられなかった方が対象です。具体的な適応条件は薬剤ごとに違うため、診察で適格性を判断します。

CGRP関連薬は何種類? — 注射タイプ3種・経口タイプ2種の違い

日本で使えるCGRP関連薬は5種類あり、大きく注射タイプ(抗体薬)3種経口タイプ(ゲパント)2種に分かれます。

薬剤名(一般名) 分類 投与方法 投与頻度 主な用途
アジョビ(フレマネズマブ) 注射(抗体薬) 皮下注射 月1回 または 3か月に1回(3本同時) 予防
エムガルティ(ガルカネズマブ) 注射(抗体薬) 皮下注射 月1回(初回のみ2本) 予防
アイモビーグ(エレヌマブ) 注射(抗体薬) 皮下注射 月1回 予防
ナルティーク(リメゲパント) 経口(ゲパント) 口腔内崩壊錠(水なしで服用可) 発作時 または 隔日(2日に1回) 急性期+短期予防両用
アクイプタ(アトゲパント) 経口(ゲパント) 錠剤 1日1回(毎日) 予防専用

アジョビ・エムガルティ・アイモビーグの違いは? — 注射タイプ抗体薬3種

CGRP抗体薬は、CGRPまたはCGRP受容体に結合してその働きをブロックする「分子標的薬」です。注射ですが患者さん自身がご自宅で打つ「自己注射」が可能で、月1回(または3か月に1回)の頻度で投与します。

アジョビ(フレマネズマブ)

2021年承認|皮下注射(オートインジェクター/シリンジ)

  • 投与頻度:月1回(225mg)または3か月に1回(675mg=3本同時注射)
  • 特徴:3か月に1回投与のオプションがあり、通院頻度を減らしたい方に向いています
  • 主な副作用:注射部位反応(発赤・かゆみ・腫れ)、便秘

エムガルティ(ガルカネズマブ)

2021年承認|皮下注射(オートインジェクター/シリンジ)

  • 投与頻度:月1回(120mg、初回のみ2本=240mg)
  • 特徴:初月にローディング(2本同時)を行うことで効果発現を早める設計
  • 主な副作用:注射部位反応、過敏症

アイモビーグ(エレヌマブ)

2021年承認|皮下注射(ペン型)

  • 投与頻度:月1回(70mg)
  • 特徴:3種の中で唯一、CGRPそのものではなく「CGRP受容体」に結合する抗体です
  • 主な副作用:便秘(他2剤より頻度がやや高い傾向)、注射部位反応

3種の使い分けの目安

  • 通院を減らしたい → アジョビ(3か月に1回オプションあり)
  • 早く効果を実感したい → エムガルティ(初回ローディング)
  • 便秘になりやすい体質ではない → アイモビーグも選択肢

いずれも効果には個人差があります。診察で患者さんの状況に合わせて選びます。

ナルティーク・アクイプタの違いは? — 経口CGRP関連薬2種

ゲパント系は「CGRP受容体拮抗薬」と呼ばれ、CGRPがその受容体にくっつくのをブロックする経口薬です。日本では2024年に承認され、CGRP関連薬の選択肢として加わりました。

ナルティーク(リメゲパント)

2024年承認|口腔内崩壊錠(75mg、水なしで服用可)

  • 用途:急性期治療と短期予防の両方に使える(国内ゲパントで唯一)
  • 急性期:発作の早い段階で1錠頓服。トリプタン製剤とは異なる作用機序で、血管収縮作用がない
  • 予防:2日に1回(隔日)1錠を継続服用
  • 主な副作用:悪心(まれ)。臨床試験ではプラセボと同程度の忍容性が報告されています
  • 処方制限:承認直後の薬剤のため、当初は14日処方制限あり(2024年12月以降に解除予定)
  • 特徴:水なしで服用可能(舌の上で溶ける)、トリプタンが効かない/効果が弱い方の選択肢

アクイプタ(アトゲパント)

2024年承認|錠剤(60mg、毎日服用)

  • 用途:予防専用(急性期治療には使えません)
  • 投与頻度:1日1回1錠を毎日継続服用
  • 特徴:毎日服用することで予防効果を維持。効果発現が比較的早いとの報告あり
  • 主な副作用:悪心、便秘、傾眠

薬剤選択について

CGRP関連薬は注射タイプ・経口タイプともに片頭痛予防の有効性が確認されており、薬剤ごとに投与頻度・特徴・副作用プロファイルが異なります。診察で患者さんの症状・併存症・治療歴を踏まえて、医師が最適な薬剤を提案します。

CGRP関連薬が効かない時はどうする? — レイボー・切替の選択肢

CGRP関連薬を3か月程度試しても十分な効果が得られない場合、以下の選択肢を検討します。

レイボー(ラスミジタン) — 急性期治療の新薬

レイボー(ラスミジタン)は2022年承認の新しい急性期治療薬です。トリプタン製剤と異なり、血管を収縮させる作用がないため、心血管疾患のある方や高齢者にも使いやすい特徴があります。CGRP関連薬の予防治療と並行して、発作時の急性期治療として使うことができます。

薬剤の切り替え

同じCGRP関連薬の中で、別の薬剤に切り替えることも検討します。同じ作用機序でも、効果が出る方と出ない方の差が報告されています。

既存予防薬との併用

プロプラノロール、ロメリジン、バルプロ酸などの既存予防薬と併用することもあります。診察で他の薬との飲み合わせを確認します。

CGRP関連薬は健康保険適用? — 適応条件と高額療養費制度

CGRP関連薬は健康保険適用です。具体的な薬剤費・自己負担額は薬剤や投与頻度・所得区分により異なるため、診察時にご案内します。

高額療養費制度の活用

所得区分に応じて、月の自己負担額に上限が設けられる「高額療養費制度」が適用される場合があります。診察料・他の処方も含めた合計額が月の自己負担限度額を超えた場合、超過分が後日払い戻されます。お住まいの自治体や加入している健康保険組合へお問い合わせください。

当院でCGRP関連薬を始めるまでの流れ

  1. 初診(WEB予約):頭痛のタイプ・頻度・既往の薬・併存症を伺います。問診・神経診察を実施。
  2. 片頭痛の確定診断・検査:国際頭痛分類に基づき診断。必要に応じてMRI(脳の精密検査)・採血(甲状腺・貧血・肝腎機能等)で他の頭痛との鑑別とCGRP関連薬の治療開始前評価を行います。
  3. CGRP関連薬の適応判断:月平均4日以上の片頭痛発作があり、既存予防薬で効果が不十分または副作用で続けられなかったかを確認。患者さんのライフスタイル・併存症などを踏まえて薬剤を提案します。
  4. 処方・指導:注射薬の場合は院内で初回投与方法をご説明。経口薬の場合は服薬タイミングをご説明。
  5. 3か月後の効果判定:頭痛日記をもとに、月の片頭痛日数が減ったか、薬の使用回数が減ったかを評価。効果が十分でなければ薬剤切替・併用を検討します。

CGRP関連薬の注意点 — 妊娠・授乳・既往疾患でのリスク

妊娠中・授乳中の方

CGRP関連薬の妊娠中・授乳中の安全性は十分に確立されていません。妊娠を計画している方、授乳中の方は事前にお伝えください。診察で他の選択肢を含めて検討します。

心血管疾患のある方

CGRPには血管を保護する作用もあるため、CGRPを抑える治療が長期的に心血管系に影響する可能性が議論されています。狭心症・心筋梗塞・脳卒中の既往がある方は、診察でリスクとベネフィットを丁寧に評価します。

便秘の悪化

CGRP関連薬の中でも、CGRP受容体に直接作用するアイモビーグ(注射)とアクイプタ(経口)は便秘の副作用が比較的多いと報告されています。特にアイモビーグは市販後に重症便秘の報告があり、米国FDAが注意喚起を出しています。普段から便秘がちな方は、別の薬剤を検討することもあります。

本ページは一般的な医療情報の提供であり、個別の診断・治療を保証するものではありません。実際の治療は医師の診察・適応判断のうえで行います。効果には個人差があります。

CGRP関連薬のよくあるご質問(FAQ)

CGRP関連薬はいつまで続ける必要がありますか?

明確な基準はありませんが、一般的には1〜2年継続して効果が安定したら、休薬を検討することがあります。休薬後に発作が再増加する場合は再開します。診察で個別に判断します。

市販薬や鎮痛薬との併用はできますか?

CGRP関連薬は予防薬であり、急性期の頓用薬(トリプタン製剤、レイボー、NSAIDs)との併用は基本的に可能です。ただし、月15日以上の頭痛があり、急性期薬を月10日以上使う状態が3か月以上続くと「薬物乱用頭痛(MOH)」と診断されます(国際頭痛分類 ICHD-3)。頓用薬の使用回数は管理が必要です。

効果はどのくらいで実感できますか?

注射薬(アジョビ・エムガルティ・アイモビーグ)は1〜3か月、経口ゲパント(ナルティーク・アクイプタ)は数日〜数週間で効果が出始める傾向があります。効果判定は3か月時点で行い、不十分なら切替・併用を検討します。

注射が苦手ですが、自己注射は可能ですか?

注射タイプ3種はすべてご自宅での自己注射が可能です(オートインジェクター式)。初回は院内で実演しながらご説明します。多くの方が問題なく継続されています。

レイボーとCGRP関連薬は何が違うのですか?

レイボー(ラスミジタン)は急性期治療薬(発作時に頓服)で、CGRP関連薬の予防治療と並行して使えます。CGRP関連薬の中でも経口のナルティーク(リメゲパント)は急性期治療にも使えますが、レイボーはCGRPではなく「セロトニン5-HT1F受容体」に作用する別系統の薬です。

大﨑 雅央 院長の写真

この記事の監修者

院長 大﨑 雅央(Masao Osaki)

吉祥寺おおさき内科・脳神経内科
日本神経学会 神経内科専門医/日本内科学会 総合内科専門医

最後までお読みいただきありがとうございます

「CGRP関連薬で片頭痛予防を本格的に始めたい」「自分はどの薬剤が向いているか相談したい」という方は、神経内科専門医がいる当院の頭痛外来でご相談ください。