吉祥寺おおさき内科・脳神経内科 院長
大﨑 雅央
東京大学医学部卒神経内科専門医総合内科専門医
プロフィール
60秒でわかるCGRP関連薬
- CGRP関連薬は片頭痛のしくみに注目した予防薬です。従来の予防薬と違い、片頭痛発作の引き金となるCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)の働きを直接ブロックします。12
- 日本で使えるCGRP関連薬は5種類です。注射タイプ(アジョビ・エムガルティ・アイモビーグ)と経口タイプ(ナルティーク・アクイプタ)に分かれます。345
- 健康保険適用の目安は、月平均4日以上の片頭痛発作があり、既存予防薬で効果が不十分または副作用で続けられなかった方です。診察で頭痛日数、これまでの薬、持病、併用薬を確認します。
- 臨床試験では、約半数の患者さんで月の発作日数が50%以上減ることが報告されています。個人差があり、3か月程度で効果を確認します。678
- 3割負担の月額目安は約12,000〜15,000円です。薬剤や投与頻度、所得区分により変わり、高額療養費制度の対象になる場合もあります。
- 当院では神経内科専門医が診断と適応判断を行い、注射・経口5種から患者さんに合う薬剤を提案します。初診時はWEB予約をご利用ください。
CGRP関連薬は、片頭痛の発作回数を減らす選択肢を大きく広げました。一方で、注射か内服か、便秘や妊娠予定、費用、通院間隔など、生活に合わせて考える点も多い治療です。
院長・神経内科専門医 大﨑 雅央
CGRP関連薬とは何ですか? — 片頭痛発作の引き金を抑える新治療
結論CGRP関連薬は、片頭痛発作のときに増えるCGRPの働きをブロックし、発作の頻度や強さを下げる予防治療です。12
CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)は、片頭痛発作のときに脳の三叉神経から放出され、血管を広げて炎症を起こす働きがあります。CGRP関連薬は、このCGRPの働きをブロックすることで、片頭痛発作の頻度や強さを下げます。
従来の予防治療(プロプラノロール、バルプロ酸、ロメリジン等)が、片頭痛以外にも作用する薬を片頭痛に応用していたのに対し、CGRP関連薬は片頭痛のメカニズムに注目した薬です。
詳しく読む(対象になる方と効果の目安)
CGRP関連薬は何種類? — 注射タイプ3種・経口タイプ2種の違い
結論日本で使えるCGRP関連薬は、注射タイプ3種と経口タイプ2種に分かれます。投与頻度、使う目的、注意点がそれぞれ異なります。
日本で使えるCGRP関連薬は5種類あり、大きく注射タイプ(抗体薬)3種と経口タイプ(ゲパント)2種に分かれます。まずは全体像を表で確認します。
| 薬剤名(一般名) | 分類 | 投与方法 | 投与頻度 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| アジョビ フレマネズマブ | 注射(抗体薬) | 皮下注射 | 月1回(当院では原則月1回) | 予防 |
| エムガルティ ガルカネズマブ | 注射(抗体薬) | 皮下注射 | 月1回(初回のみ2本) | 予防 |
| アイモビーグ エレヌマブ | 注射(抗体薬) | 皮下注射 | 月1回 | 予防 |
| ナルティーク リメゲパント | 経口(ゲパント) | 口腔内崩壊錠(水なしで服用可) | 発作時 または 隔日(2日に1回) | 急性期+短期予防両用 |
| アクイプタ アトゲパント | 経口(ゲパント) | 錠剤 | 1日1回(毎日) | 予防専用 |
詳しく読む(選び方の考え方)
注射薬は月1回を基本に予防を続けます。自己注射ができる薬剤もあり、生活リズムに合わせて続けやすい点が特徴です。
経口薬は、発作時と予防の両方に使える薬、毎日内服して予防する薬があります。注射が苦手な方、急性期薬も含めて見直したい方では、経口薬が選択肢になります。
どの薬が合うかは、頭痛日数、急性期薬の使用回数、便秘の有無、妊娠予定、持病、通院のしやすさ、費用によって変わります。
まとめ5種類はすべて同じ薬ではありません。注射か内服か、予防専用か急性期にも使えるか、便秘や通院間隔まで見て選びます。
アジョビ・エムガルティ・アイモビーグの違いは? — 注射タイプ抗体薬3種
結論注射タイプ3種は、月1回を基本に片頭痛を予防する抗体薬です。アジョビは当院でも使用頻度が高い薬剤で、エムガルティは初回2本、アイモビーグはCGRP受容体に作用する点が特徴です。678
CGRP抗体薬は、CGRPまたはCGRP受容体に結合してその働きをブロックする分子標的薬です。注射ですが、患者さん自身がご自宅で打つ自己注射が可能で、月1回を基本に投与します。
アジョビ(フレマネズマブ)
2021年承認の皮下注射薬で、オートインジェクターまたはシリンジで投与します。当院では原則として月1回(225mg)で行います。
自己注射の扱いやすさや続けやすさも含め、当院で使用頻度が高い薬剤です。効果と副作用を確認しながら、月1回を基本に継続を考えます。主な副作用は注射部位反応(発赤・かゆみ・腫れ)や便秘です。
エムガルティ(ガルカネズマブ)
2021年承認の皮下注射薬で、月1回120mgを投与します。初回のみ2本(240mg)を投与するローディングの仕組みがあります。
初月にしっかり薬剤量を入れることで効果発現を早める設計です。主な副作用は注射部位反応や過敏症です。
アイモビーグ(エレヌマブ)
2021年承認の皮下注射薬で、月1回70mgを投与します。3種の中で唯一、CGRPそのものではなくCGRP受容体に結合する抗体です。
主な副作用は便秘と注射部位反応です。便秘は他の注射薬より頻度がやや高い傾向があり、重症便秘の注意喚起もあります。9
3種の使い分けの目安
- アジョビは、自己注射の扱いやすさや続けやすさも含め、当院で使用頻度が高い薬剤です。月1回を基本に、効果と副作用を確認しながら継続を考えます。
- 早く効果を感じたい場合は、初回ローディングがあるエムガルティを考えます。
- 便秘になりやすい体質ではない場合は、アイモビーグも選択肢になります。
- いずれも効果には個人差があります。診察で患者さんの状況に合わせて選びます。
まとめ注射薬は、通院頻度、初回の始め方、便秘の出やすさが選ぶポイントです。自己注射の不安も初回に一緒に確認します。
ナルティーク・アクイプタの違いは? — 経口CGRP関連薬2種
結論経口タイプ2種は、CGRP受容体をブロックするゲパント系の薬です。ナルティークは急性期治療と予防、アクイプタは予防専用という違いがあります。101145
ゲパント系はCGRP受容体拮抗薬と呼ばれ、CGRPが受容体にくっつくのをブロックする経口薬です。日本では、ナルティークOD錠75mg(リメゲパント)が2025年9月19日に承認、2025年12月16日に発売され、アクイプタ錠(アトゲパント)は2026年2月19日に承認、2026年4月15日に薬価収載されました。412513
ナルティーク(リメゲパント)
口腔内崩壊錠(75mg)で、水なしで服用できます。発作の早い段階で1錠頓服する急性期治療と、2日に1回(隔日)1錠を続ける短期予防の両方に使える点が特徴です。
トリプタン製剤とは異なる作用機序で、血管収縮作用がありません。トリプタンが効きにくい、効果が弱い、使いにくい方の選択肢になります。
アクイプタ(アトゲパント)
錠剤(60mg)を1日1回、毎日継続して服用する予防専用の薬です。急性期治療には使いません。
薬剤選択について
CGRP関連薬は注射タイプ・経口タイプともに片頭痛予防の有効性が確認されており、薬剤ごとに投与頻度、特徴、副作用プロファイルが異なります。
診察では、症状、併存症、治療歴、費用、通院しやすさを踏まえて、医師が患者さんに合う薬剤を提案します。
まとめ経口薬は、注射が苦手な方や急性期薬も含めて見直したい方の選択肢になります。ナルティークとアクイプタは使う目的が違うため、同じ内服薬として一括りにしないことが大切です。
CGRP関連薬が効きにくい時はどうする? — レイボー・切替の選択肢
結論CGRP関連薬を3か月程度試しても十分な効果が得られない場合は、急性期薬の見直し、CGRP関連薬同士の切り替え、既存予防薬との併用を考えます。
CGRP関連薬を始めても、すべての方で十分な効果が出るわけではありません。頭痛日記で月の片頭痛日数、急性期薬の使用回数、生活への支障を確認し、次の一手を考えます。
レイボー(ラスミジタン) — 急性期治療の新薬
レイボー(ラスミジタン)は2022年承認の急性期治療薬です。トリプタン製剤と異なり、血管を収縮させる作用がないため、心血管疾患のある方や高齢の方でも選択肢になることがあります。1415
CGRP関連薬の予防治療と並行して、発作時の急性期治療として使うことができます。ただし眠気やめまいが出ることがあり、内服後の運転制限など注意が必要です。
薬剤の切り替え
同じCGRP関連薬の中で、別の薬剤に切り替えることもあります。同じ作用機序でも、効果が出る方と出にくい方の差が報告されています。
注射から経口へ、経口から注射へ、または注射薬同士で切り替える場合もあります。副作用、費用、通院頻度もあわせて見ます。
既存予防薬との併用
プロプラノロール、ロメリジン、バルプロ酸などの既存予防薬と併用することもあります。診察で他の薬との飲み合わせを確認します。
急性期薬を使う日数が増えている場合は、薬の使いすぎによる頭痛(MOH)が重なっていないかも確認します。16
まとめ効きにくい時は、薬が合わないだけでなく、急性期薬の使い方や別の頭痛が重なっていることもあります。頭痛日記をもとに次の選択肢を考えます。
CGRP関連薬は健康保険適用? — 適応条件と高額療養費制度
結論CGRP関連薬は健康保険適用です。ただし薬剤費・自己負担額は、薬剤、投与頻度、所得区分、同月の医療費によって変わります。
CGRP関連薬は健康保険適用です。薬剤や投与頻度により差がありますが、3割負担では月額約12,000〜15,000円が一つの目安です。具体的な薬剤費・自己負担額は、薬剤や投与頻度、所得区分により異なるため、診察時にご案内します。
健康保険で使う場合も、片頭痛の診断、月平均4日以上の片頭痛発作、既存予防薬で効果が不十分または副作用で続けられなかったことなど、確認すべき条件があります。
詳しく読む(高額療養費制度と費用の考え方)
所得区分に応じて、月の自己負担額に上限が設けられる高額療養費制度が適用される場合があります。診察料や他の処方も含めた合計額が月の自己負担限度額を超えた場合、超過分が後日払い戻されます。
高額療養費制度の具体的な上限額は、年齢、所得区分、加入している健康保険によって異なります。お住まいの自治体や加入している健康保険組合へお問い合わせください。
CGRP関連薬は継続治療になることが多いため、薬効だけでなく、通院頻度、自己注射の可否、費用の見通しを含めて無理なく続けられる方法を考えます。
まとめ費用は薬剤ごとに変わります。保険適用条件と高額療養費制度の対象になるかを、診察時に一緒に確認します。
当院でCGRP関連薬を始めるまでの流れ
結論初診では片頭痛の診断、危険な頭痛との見分け、これまでの治療歴を確認し、CGRP関連薬が合うかを判断します。
CGRP関連薬は、片頭痛であれば誰でもすぐに使う薬ではありません。頭痛のタイプ、頻度、これまでの治療、持病、妊娠予定、併用薬を確認します。初診では採血も行います。MRIは必要に応じて検討します。
詳しく読む(初診から3か月後までの5ステップ)
1. 初診(WEB予約)
頭痛のタイプ、頻度、これまで使った薬、併存症を伺います。問診と神経診察を行い、片頭痛以外の頭痛が隠れていないかも確認します。初診では採血も行います。
2. 片頭痛の確定診断・検査
国際頭痛分類に基づき診断します。採血では甲状腺・貧血・肝腎機能等を確認し、他の頭痛との見分けやCGRP関連薬の治療開始前に確認したい項目を見ます。MRI(脳の精密検査)は必要に応じて検討します。16
3. CGRP関連薬の適応判断
月平均4日以上の片頭痛発作があり、既存予防薬で効果が不十分または副作用で続けられなかったかを確認します。ライフスタイル、持病、費用、通院しやすさも踏まえて薬剤を提案します。
4. 処方・指導
注射薬の場合は、院内で初回投与方法や自己注射の手順をご説明します。経口薬の場合は、服薬タイミング、飲み忘れた時の対応、併用薬の注意点をご説明します。
5. 3か月後の効果確認
頭痛日記をもとに、月の片頭痛日数が減ったか、急性期薬の使用回数が減ったか、生活への支障が軽くなったかを確認します。効果が十分でなければ薬剤切替や併用を考えます。
まとめ頭痛日記があると、CGRP関連薬を始めるべきか、続けるべきか、切り替えるべきかを判断しやすくなります。
CGRP関連薬の注意点 — 妊娠・授乳・既往疾患でのリスク
結論妊娠中・授乳中、心血管疾患の既往、便秘が強い方では、薬剤選択や開始時期を慎重に考えます。
CGRP関連薬は片頭痛予防の有力な選択肢ですが、すべての方に同じように勧められる薬ではありません。妊娠予定、授乳、狭心症・心筋梗塞・脳卒中の既往、便秘の強さなどを診察で確認します。
妊娠中・授乳中の方
CGRP関連薬の妊娠中・授乳中の安全性は十分に確立されていません。妊娠を計画している方、授乳中の方は事前にお伝えください。診察で他の選択肢を含めて考えます。
心血管疾患のある方
CGRPには血管を保護する作用もあるため、CGRPを抑える治療が長期的に心血管系へ影響する可能性が議論されています。狭心症、心筋梗塞、脳卒中の既往がある方は、診察で利点と注意点を丁寧に確認します。
便秘の悪化
CGRP関連薬の中でも、CGRP受容体に直接作用するアイモビーグ(注射)とアクイプタ(経口)は便秘の副作用が比較的多いと報告されています。特にアイモビーグは市販後に重症便秘の報告があり、注意喚起が出ています。普段から便秘がちな方は、別の薬剤を考えることもあります。95
医療情報としての注意
本ページは一般的な医療情報の提供であり、個別の診断・治療を保証するものではありません。実際の治療は医師の診察・適応判断のうえで行います。効果には個人差があります。
まとめCGRP関連薬は有効性だけでなく、妊娠予定、心血管疾患、便秘、費用、通院しやすさを含めて考える治療です。
CGRP関連薬のよくあるご質問(FAQ)
CGRP関連薬はいつまで続ける必要がありますか?
明確な基準はありませんが、一般的には1〜2年継続して効果が安定したら、休薬を検討することがあります。休薬後に発作が再増加する場合は再開します。診察で個別に判断します。
市販薬や鎮痛薬との併用はできますか?
CGRP関連薬は予防薬であり、急性期の頓用薬(トリプタン製剤、レイボー、NSAIDs)との併用は基本的に可能です。ただし、月15日以上の頭痛があり、急性期薬を月10日以上使う状態が3か月以上続くと、薬の使いすぎによる頭痛(MOH)と診断されます。頓用薬の使用回数は記録しておくことが大切です。16
効果はどのくらいで実感できますか?
注射薬(アジョビ・エムガルティ・アイモビーグ)は1〜3か月、経口ゲパント(ナルティーク・アクイプタ)は数日〜数週間で効果が出始める傾向があります。3か月時点で頭痛日数や急性期薬の使用回数を確認し、不十分なら切替や併用を考えます。
注射が苦手ですが、自己注射は可能ですか?
注射タイプ3種はすべてご自宅での自己注射が可能です(オートインジェクター式)。初回は院内で実演しながらご説明します。不安が強い場合は、注射薬以外の選択肢も含めて相談できます。
参考文献
参考文献を表示
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1
Russo AF, Hay DL. CGRP physiology, pharmacology, and therapeutic targets: migraine and beyond. Physiol Rev. 2023.
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2
Ashina M, et al. Calcitonin gene-related peptide-targeted therapy in migraine: current role and future perspectives. Lancet. 2025.
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3
日本頭痛学会. CGRP関連抗体薬を成人片頭痛予防療法の第一選択薬に含めることを推奨するポジションステートメント. 2025.
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PMDA. ナルティークOD錠75mg(リメゲパント硫酸塩水和物)添付文書/詳細情報.
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PMDA. アクイプタ錠(アトゲパント)添付文書.
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Silberstein SD, et al. Fremanezumab for the preventive treatment of chronic migraine. N Engl J Med. 2017.
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Goadsby PJ, et al. A controlled trial of erenumab for episodic migraine. N Engl J Med. 2017.
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Ailani J, et al. Atogepant for preventive treatment of migraine. N Engl J Med. 2021.
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ファイザー株式会社. 日本で初めてとなる、片頭痛の急性期治療および発症抑制の両方を適応とする経口薬「ナルティークOD錠75mg」発売. 2025.
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厚生労働省. 薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について(令和8年4月15日適用). 2026.
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Kuca B, et al. Lasmiditan SAMURAI. Neurology. 2018.
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Goadsby PJ, et al. Lasmiditan SPARTAN. Brain. 2019.
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Headache Classification Committee of the IHS. ICHD-3. Cephalalgia. 2018.