視覚異常について:複視(ものが二重に見える)・視野の欠け・一時的に見えにくいとき
吉祥寺おおさき内科・脳神経内科は吉祥寺駅徒歩1分です。脳神経内科専門医/総合内科専門医の院長が、「片方の目だけか、両方の目か」「急に起きたか、ゆっくりか」「頭痛や目の痛みがあるか」を丁寧に伺い、瞳の反応・目の動き・視野(見える範囲)・色の見え方を確認します。必要に応じてMRI(脳・眼窩)や脳血管の検査、採血を手配し、眼科とも連携します。
目次
- 緊急性の高い視覚異常
- 視覚異常の見分け方
- 複視とは
- 複視の原因
- 視野障害(部位別マップ)
- 一過性黒内障
- 視神経炎・視神経症
- 眼瞼下垂・外眼筋麻痺
- 重症筋無力症
- 片頭痛の視覚オーラ
- 視覚障害の検査方法
- 当院の対応
- よくあるご質問(FAQ)
- 参考文献
【直ちに救急対応が必要な「見え方の異常」】
- 片方の目が突然ほとんど見えない/真っ暗に感じる(中心網膜動脈閉塞(CRAO)など)。[1]
- 強い頭痛・目の奥の痛み+まぶたが急に下がる/瞳が大きい(動脈瘤による圧迫など)。[10]
- 突然の激しい頭痛+視野が急に狭い/ものが二重(下垂体卒中)。[11]
- 首の痛み+片側のまぶたが下がる・瞳が小さい(頚動脈解離)。[5]
- 50歳以上で新しい頭痛+噛むとあごがだるい+視力が落ちた(巨細胞性動脈炎)。[7]
- 突然の視野の半分が見えない(同名半盲:後頭葉の脳梗塞など)。[8]
当てはまるときは#7119(救急相談センター)に相談し、指示に従って救急受診してください。
緊急性の高い視覚異常(一覧)
| 緊急度 | 病名(例) | どんな症状? | ポイント |
|---|---|---|---|
| 超緊急 | 中心網膜動脈閉塞(CRAO) | 片目が突然ほぼ見えない/暗い。 | 眼科での迅速評価。[1] |
| 超緊急 | 動眼神経(Ⅲ)麻痺:瞳孔が大きい型 | まぶたが下がる+目が外側/下に向く+黒目が大きい。 | 動脈瘤を疑い血管の検査が必要。[10] |
| 超緊急 | 下垂体卒中 | 激しい頭痛+視野が左右から狭い(両耳側半盲)+吐き気/複視。 | MRIとホルモンの緊急チェック。[11] |
| 緊急 | 頚動脈解離 | 首の痛み+片側のまぶた下がり・瞳が小さい(Horner徴候)。 | 血管の画像検査(MRA/CTA)。[5] |
| 緊急 | 巨細胞性動脈炎(GCA) | 50歳以上、新しい頭痛+あごのだるさ+視力低下。 | 採血で炎症チェック、早めにステロイド。[7] |
| 準緊急 | 視神経炎 | 目を動かすと痛い+視力/色の見え方が落ちる。 | MRIや血液検査を行います。[2] |
緊急度の目安:超緊急=直ちに救急/緊急=当日中に専門評価/準緊急=1〜3日以内に受診。
視覚異常の見分け方(脳神経内科の視点)
まずは、下の3点を確認していただくと受診時の説明がスムーズです。
| 確認ポイント | 何がわかる? | 次の一歩 |
|---|---|---|
| 片目か両目か(片目ずつ覆う) | 片目だけ=目の中の病気が多い/両目=脳神経・脳の可能性。 | 片目でも突然ほぼ見えないときは緊急。両目のときは脳神経内科へ。 |
| 突然か徐々にか | 突然=脳梗塞や血管のトラブル/徐々=腫瘍や脱髄など。 | 突然は画像・血管の検査を早めに。 |
| 痛みや頭痛の有無 | 目の痛みは視神経炎を示すこと。強い頭痛は血管の異常の手がかり。 | 痛みが強い/頭痛が激しいときは急いで受診。 |
複視とは
複視は、1つのものが2つに見える状態です。
大切なのは、片目でも二重に見えるか、それとも両目を開けたときだけ二重に見えるかの区別です。
片目だけでも二重なら、角膜やレンズ(白内障や乱視など)といった眼科の病気が多く、両目のときは目の動きを司る神経や筋肉、脳の病気が関係することがあります。[9]
かんたんセルフチェック:二重に見えたら、片目を閉じて→反対の片目を閉じて確認します。
・どちらの目でも二重=片眼性複視(眼科へ)/片方の目を閉じると二重が消える=両眼性複視(脳神経内科へ)。
複視の原因
視野障害(部位別マップ)
「見える範囲(視野)」が欠ける場所で、どの部分のトラブルかある程度見当がつきます。
一過性黒内障
一過性黒内障は、片目が数分〜数十分だけ暗くなる/カーテンが下りるように見えにくい症状です。多くは目の網膜に行く血流が一時的に低下したサインで、一過性脳虚血発作(TIA)の仲間として扱います。心臓や頚動脈に原因がないか、早めの検査が必要です。[6]
- 検査の例:MRI、頚動脈エコー、ホルター心電図、血液検査など。
- 治療の例:抗血小板薬、コレステロール・血圧・血糖の管理、頚動脈の治療検討など。
視神経炎・視神経症(多発性硬化症(MS)/視神経脊髄炎(NMOSD)/MOG抗体関連疾患(MOGAD)など)
視神経炎は、目を動かすと痛いことが多く、視力や色の見え方が落ちる病気です。多くは自然に良くなりますが、点滴のステロイド薬で回復を早めることがあります。[2]
眼瞼下垂・外眼筋麻痺(III/IV/VI麻痺・Horner症候群)
「まぶたが下がる」「目が動かしにくい」「横を見ると二重」などは、目を動かす神経(Ⅲ・Ⅳ・Ⅵ)や通り道の不調によることがあります。黒目(瞳孔)が大きくなるⅢ神経麻痺は至急の検査が必要です。[10]
また、片側の瞳が小さい+軽いまぶた下がり(Horner症候群)は頚動脈のトラブルのサインになることがあります。[5]
神経筋接合部疾患(重症筋無力症(MG))
重症筋無力症(MG)は、夕方になるとまぶたが下がる・二重に見えるなど、疲れると悪化し休むと回復しやすいのが特徴です。血液検査(抗アセチルコリン受容体抗体など)やアイスパックテストなどで診断の手がかりが得られます。[13]
片頭痛の視覚オーラ
キラキラ・ギザギザが広がる見え方(陽性症状)が数分かけて広がり、1時間以内に消えるのが典型です。多くは両目で同じように感じます。初めての発症や、いつもと全く違う見え方のときはほかの病気を除外します。[15]
視覚障害の検査方法(必要に応じて選択)
| 検査 | 何がわかる? | いつ行う? |
|---|---|---|
| 診察(瞳・目の動き・視野・色覚) | 緊急性の判断、神経か眼科かの見極め。 | まず最初に行います。 |
| MRI/MRA・CTA | 脳梗塞・動脈瘤・頚動脈解離・視神経炎など。 | 突然の発症・頭痛が強い・神経のサインがあるとき。 |
| 採血 | 炎症(ESR/CRP:巨細胞性動脈炎)・自己抗体(AQP4/MOG、AChR/MuSK)など。 | 症状に応じて選びます。 |
| 心血管の検査 | 頚動脈エコー・心電図/ホルター:一過性黒内障の原因探し。 | 片目だけ一時的に見えにくいときなど。 |
| 眼科の検査 | OCT・眼底検査・視野計で網膜や視神経を詳しく評価。 | 片眼性の複視・視力低下、視神経の病気が疑われるとき。 |
当院での視覚異常の主な対応
- 丁寧な問診と診察で緊急性と原因の見当をつけます
- MRI/MRA・CTA・採血など必要な検査を手配します
- 視神経炎・重症筋無力症など内科的な病気の治療や専門連携を行います
- 眼科検査(OCT・視野計)が必要な場合は連携施設をご案内します
【視覚異常】よくあるご質問(FAQ)
A. 受診判断・救急
片方の目が突然見えにくくなりました。様子を見ても良いですか?
様子見はおすすめしません。中心網膜動脈閉塞(CRAO)や一過性黒内障など、脳や血管の病気のサインかもしれません。当日中(状況により直ちに)受診してください。[1][6]
視野が欠けています。車の運転はできますか?
運転は控えてください。同名半盲など視野障害があると、事故の危険が高くなります。回復や評価が済むまで避けましょう。[8]
参考文献(エビデンス)
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- Mac Grory S, et al. Management of Central Retinal Artery Occlusion. Stroke. 2021;52:e282–e294. PubMed
- Beck RW, et al. A randomized, controlled trial of corticosteroids in acute optic neuritis. N Engl J Med. 1992;326:581–588. PubMed
- Wingerchuk DM, et al. International consensus diagnostic criteria for NMOSD. Neurology. 2015;85:177–189. PubMed
- Reindl M, Waters P. Myelin oligodendrocyte glycoprotein antibodies. Lancet Neurol. 2019;18:990–1003. PubMed
- Schievink WI. Spontaneous dissection of the carotid and vertebral arteries. N Engl J Med. 2001;344:898–906. PubMed
- Biousse V, Newman NJ. Transient monocular visual loss. Am J Ophthalmol. 2015;160:714–721. PubMed
- Buttgereit F, et al. Polymyalgia rheumatica and giant cell arteritis. JAMA. 2016;315:2442–2458. PubMed
- Powers WJ, et al. 2019 AHA/ASA Guidelines for Early Management of Acute Ischemic Stroke. Stroke. 2019;50:e344–e418. PubMed
- Rucker JC. Diplopia. N Engl J Med. 2005;352:1540–1548. PubMed
- Lee AG, et al. Clinical approach to third-nerve palsy. Ophthalmology. 2008;115:2264–2266. PubMed
- Rajasekaran S, et al. Pituitary apoplexy. Lancet Diabetes Endocrinol. 2015;3:123–134. PubMed
- Keane JR. Internuclear ophthalmoplegia: 410 new cases. Arch Neurol. 2005;62:714–717. PubMed
- Meriggioli MN, Sanders DB. Autoimmune myasthenia gravis. Lancet Neurol. 2009;8:475–490. PubMed
- Balcer LJ. Clinical practice: Optic neuritis. N Engl J Med. 2006;354:1273–1280. PubMed
- Headache Classification Committee of the IHS. ICHD‑3. Cephalalgia. 2018;38:1–211. PubMed