意識障害・痙攣について:失神との違い、原因と受診の目安

吉祥寺おおさき内科・脳神経内科は吉祥寺駅徒歩1分。武蔵野市、三鷹市、杉並区などの方も通いやすいクリニックです。
神経内科専門医/総合内科専門医の院長が、「意識が低下したのはいつから・どれくらい続いたか」「けいれんはあったか」「前駆症状(動悸・冷や汗・胸痛など)はあったか」を丁寧にお伺いし、まずバイタルサイン・血糖測定、必要に応じて心電図・頭部MRI(拡散強調:DWI)/CT、採血、脳波(EEG)の実施・手配を行います。意識レベル評価にはグラスゴー・コーマ・スケール(GCS)を用います。[1]

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受診のきっかけ(外来の目安):
初めての失神/繰り返す失神(心臓の検査が必要な場合があります)
初めてのけいれん/持病のてんかんがある方で発作が増えた
・高熱、激しい頭痛、最近の頭部外傷、糖尿病で低血糖の心配があるとき
・薬やアルコール、睡眠不足など誘因が思い当たるとき

診療の進め方:まず生命に関わる原因(脳卒中・重症感染症・心原性失神・低酸素/低血糖・けいれん重積状態(SE)など)を見逃さないことを最優先にします。必要に応じて救急対応への同日紹介や、MRI/EEG/ホルター心電図などを手配します。[2][6][5]

目次

【直ちに救急対応が必要です】

  • けいれんが止まらない/繰り返すけいれん重積状態(SE)の疑い)
  • 片側の手足が動かない・言葉が出ない・顔がゆがむなどの突然の神経症状(脳卒中の疑い)
  • 高熱・激しい頭痛・うなじの強いこわばり髄膜炎/脳炎の疑い)
  • 胸痛・動悸・息切れを伴う意識消失(心原性失神の可能性)
  • 糖尿病治療中で意識がもうろう低血糖の可能性)

#7119(救急相談センター)へ連絡のうえ、指示に従って救急受診してください。[3][6][5]

緊急性の高い症状(一覧)

緊急性の高い症状(超緊急/緊急/準緊急の目安)
緊急度 代表病態 症状の簡単な解説 主なサイン・初期対応
超緊急 けいれん重積状態(SE) けいれんが5分以上続く、または意識が回復しないまま繰り返す。 気道確保・酸素投与・速やかなベンゾジアゼピン、次段階の静注抗てんかん薬を考慮。[2][3]
超緊急 脳卒中(出血・梗塞) 突然の麻痺・言語障害・視野障害、激しい頭痛や嘔吐を伴うことも。 MRI(DWI)/CTを含む救急評価。適応により血栓溶解・血管内治療。[4]
緊急 心原性失神 危険な不整脈や心筋梗塞などで脳血流が一時的に低下。 12誘導心電図、SpO2、必要に応じ心エコー・ホルター。[6]
緊急 髄膜炎/脳炎 高熱、頭痛、項部硬直、意識障害、けいれんなど。 抗菌薬/抗ウイルス薬の早期投与を検討。[5]
準緊急 初めての失神・初めてのけいれん 背景に心臓・代謝・脳の病気が隠れていないか評価が必要。 問診・診察・血糖・ホルター心電図・画像/脳波の選択的検査。[7][6]

緊急度の目安:超緊急=直ちに救急対応/緊急=当日中の専門評価(救急含む)/準緊急=1〜3日以内の専門受診。

まとめると:命に関わる原因(けいれん重積・脳卒中・心原性・重症感染症・低血糖など)をまず除外します。

意識障害とは

「意識障害」は、覚醒(目が覚めている力)意識内容(周囲を理解し適切に反応する力)が低下した状態を指します。軽いもうろうから深い昏睡まで幅があり、意識状態の評価にはグラスゴー・コーマ・スケール(GCS)が広く使われています。[1]

  • よくあるきっかけ:睡眠不足・脱水・発熱・薬/アルコール・低血糖・感染症・脳卒中・頭部外傷など。
  • まず確認すること:呼吸(酸素)、循環(脈と血圧)、血糖、体温、けいれんの有無、頭部外傷の既往、薬やサプリの服用歴。
まとめると:意識障害は覚醒と理解の低下で、意識レベル(GCS)と原因検索が大切です。[1]

意識障害の原因

カテゴリー 具体例 ポイント
脳の病気 脳梗塞・脳出血、くも膜下出血、頭部外傷、脳腫瘍、てんかん発作後など 突然の麻痺・言語障害・強い頭痛は要注意。画像検査を検討。[4]
全身の病気 低血糖・低酸素・ショック・敗血症・肝不全/腎不全・電解質異常(ナトリウムなど) まず血糖・SpO2・体温・血圧の確認。[5]
心血管 危険な不整脈、急性冠症候群、大動脈解離、肺塞栓など 心電図・胸痛/動悸の聴取。[6]
薬物・中毒 アルコール、睡眠薬・抗不安薬、オピオイド、中毒(一酸化炭素など) 服薬歴・環境暴露の確認。解毒薬の適応を検討。
感染症 髄膜炎・脳炎、肺炎、尿路感染症など 高熱・項部硬直・意識低下は救急対応。[5]
まとめると:原因は脳・全身・心臓・薬物・感染に大別でき、まず血糖・酸素・心電図から確認します。

失神とは

「失神」は、一過性の全脳低灌流(脳全体の血流低下)によって起こる、急に始まり短時間で自然に完全回復する意識消失のことです。前ぶれとして冷や汗・吐き気・目の前が暗くなるなどが出ることがあります。[6]

  • 典型的な経過:数十秒で回復し、回復後の混乱は短い(数分以内)ことが多い。
  • 注意が必要:労作中の失神、心臓病の既往、心電図異常家族に若年突然死がいる場合は心原性の可能性があります。[6]
まとめると:失神は脳の血流が一時的に落ちることで起こり、多くは短時間で回復しますが、心臓が原因のこともあります。[6]

失神の原因

失神は大きく反射性(神経調節性・血管迷走神経性)起立性低血圧心原性に分けられます(外来全体では反射性が最多)。[6]

分類 よくある誘因・特徴 検査の例
反射性(血管迷走神経性・状況失神) 長時間の立位、痛み、恐怖、採血・排便・排尿など/冷や汗・吐き気の前駆あり 問診が最重要。必要に応じ循環器内科での傾斜試験。
起立性低血圧 立ち上がって数分以内にふらつき・黒くなる感覚。脱水・薬剤・自律神経障害。 起立試験(3分基準)、血圧・脈拍測定。
心原性 労作中・仰臥位での失神、動悸・胸痛を伴う、回復が遅いことも。 12誘導心電図、ホルター心電図、心エコー、必要に応じ電気生理学的検査。
まとめると:失神の多くは反射性ですが、心原性は見逃せません。心電図と問診が重要です。[6]

痙攣の原因

「痙攣(けいれん)」は筋肉が不随意に周期的に収縮する状態で、脳の異常な電気活動(発作)により起こることが多いです。原因は誘発性(provoked)非誘発性(unprovoked=てんかんの一部)に分けられます。[8][9]

区分 主な原因 ポイント
誘発性(provoked)/急性症候性発作 高熱(小児の熱性けいれん)、低ナトリウム血症・低カルシウム、低血糖、禁酒/離脱、薬剤(例:トラマドールなど)、脳炎・髄膜炎、頭部外傷 など 原因治療が優先。多くは原因が除かれると再発リスクが低下。
非誘発性(unprovoked) てんかん(脳の発作性素因)、脳卒中後・脳腫瘍・先天性構造異常など 脳波・MRIで評価。てんかんは「2回以上の非誘発性発作」または「1回+再発リスクが高い状況」で診断されます。[8]

なお、5分以上続くけいれん、または意識が戻らないまま繰り返す場合はけいれん重積状態(SE)で、救急対応が必要です。[2][3]

まとめると:痙攣は誘発性非誘発性に分かれ、5分以上続く発作は救急です。[2]

失神・てんかん発作の見分け方(目撃情報が重要)

特徴 失神 てんかん発作(痙攣)
始まり方 前駆:冷や汗・吐き気・目の前が暗い 突然/時に視覚やにおいなどの前兆[6]
意識消失時間 数十秒で自然回復 1〜2分の痙攣後にしばらくぼんやり[7]
舌の咬傷 先端の軽い咬み傷が多い 舌の側面の咬傷があれば、特徴的[10]
発作時の姿勢 立位・座位で起こりやすい 姿勢に関係なく起こる[6]
誘因 長時間立位、痛み、恐怖、排便・排尿など 睡眠不足、光刺激、アルコール離脱、発熱など[6][7]
まとめると:前駆症状・回復の速さ・舌の咬傷の部位が見分けのヒントになります。[6][10]

意識障害の検査方法(必要に応じて選択)

検査 目的・分かること 実施の目安
血糖測定・バイタルサイン 低血糖・低酸素・発熱などの緊急原因をすぐ確認。 全例で最優先。
12誘導心電図 危険不整脈や虚血の有無。 失神・意識消失の評価で必須。[6]
MRI(DWI)/CT 脳卒中・頭部外傷・占拠性病変の評価。 局在神経症状や強い頭痛を伴うとき等に。[4]
脳波(EEG) てんかん性の発作波の有無。 「初めてのけいれん」や原因不明の意識消失で検討。[7]
採血 電解質・炎症反応・肝腎機能・薬物濃度など。 誘発性けいれん・感染症が疑われるとき。
ホルター心電図/心エコー 発作性不整脈・器質的心疾患の評価。 心原性失神が疑われるとき。[6]
まとめると:血糖・心電図をまず行い、症状に応じてMRI/EEG/ホルターなどを追加します。

当院での主な対応

  • 問診・神経学的診察・GCSによる重症度と原因の初期評価
  • 血糖測定・採血の実施、必要に応じて頭部MRIの手配
  • 初めてのけいれんに対する脳波(EEG)や再発リスクの評価(連携施設と協力)
  • 心原性失神が疑われる場合のホルター心電図
  • 救急対応が必要と判断した場合は同日での救急紹介を行います
まとめると:見逃してはいけない心臓・脳・感染を意識しつつ、必要検査を迅速に手配します。

【意識障害・痙攣】よくあるご質問(FAQ)

A. 受診判断・緊急性

救急車を呼ぶタイミングは?

5分以上続くけいれん繰り返すけいれんで意識が戻らない片麻痺・ろれつ不良高熱+強い頭痛・項部硬直胸痛・強い動悸を伴うときは直ちに119番をお願いします。[3][5][6]

舌を噛んだらてんかんですか?

舌の側面の咬傷はてんかんの強い手がかりですが、絶対ではありません。全体の経過と検査で判断します。[10]

けいれんの後に強い眠気やぼんやりがあります

多くの場合は発作後の回復期で、数十分で改善します。ただし長く続く・再発する場合は受診してください。[7]

初めてのけいれんで必ず薬は必要ですか?

原因や再発リスクにより異なります。脳波やMRIでハイリスクが示唆される場合は、内服開始を検討します。[7]

失神とてんかん発作をどうやって見分けられますか?

多くは前駆症状・回復時間・舌の咬傷などで推定できますが、心電図脳波などの検査を組み合わせて総合的に判定します。[11][10]

大﨑 雅央 院長の写真

この記事の監修者

院長 大﨑 雅央(Masao Osaki)

吉祥寺おおさき内科・脳神経内科
日本神経学会 神経内科専門医/日本内科学会 総合内科専門医

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参考文献(エビデンス)

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  1. Teasdale G, Jennett B. Assessment of coma and impaired consciousness: A practical scale. Lancet. 1974;2:81–84. PubMed
  2. Trinka E, et al. A definition and classification of status epilepticus – Report of the ILAE Task Force. Epilepsia. 2015;56:1515–1523. PubMed
  3. Kapur J, et al. Randomized Trial of Three Anticonvulsant Medications for Status Epilepticus. N Engl J Med. 2019;381:2103–2113. PubMed
  4. Chalela JA, et al. MRI vs CT for detection of acute stroke. Lancet. 2007;369:293–298. PubMed
  5. van de Beek D, et al. Community-Acquired Bacterial Meningitis in Adults. N Engl J Med. 2016;375:236–247. PubMed
  6. Brignole M, et al. 2018 ESC Guidelines for the diagnosis and management of syncope. Eur Heart J. 2018;39:1883–1948. Journal
  7. Krumholz A, et al. Evidence-based guideline: Management of an unprovoked first seizure in adults. Neurology. 2015;84:1705–1713. PubMed
  8. Fisher RS, et al. ILAE official report: A practical clinical definition of epilepsy. Epilepsia. 2014;55:475–482. PubMed
  9. Fisher RS, et al. Operational classification of seizure types by the ILAE. Epilepsia. 2017;58:522–530. PubMed
  10. Brigo F, et al. The diagnostic value of tongue biting in differentiating epileptic seizures from syncope: a meta-analysis. Epilepsia. 2012;53(11):e1–e5. PubMed
  11. Sheldon R, et al. Historical criteria that distinguish syncope from seizures. J Am Coll Cardiol. 2002;40:142–148. PubMed