めまいの解説:脳卒中・BPPV(良性発作性頭位めまい)・前庭神経炎・前庭性片頭痛・起立性低血圧

吉祥寺おおさき内科・脳神経内科は吉祥寺駅から徒歩1分です。武蔵野市、三鷹市、杉並区などの方も通いやすいクリニックです。
神経内科専門医/総合内科専門医の院長が、めまいが「いつから」「どのくらい続くか」「何で起こるか」を丁寧にうかがい、神経学的診察・目の動きの観察・頭の向きを変える検査などを行います。必要に応じてMRI・採血などの検査をご提案いたします。

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受診のめやす:
寝返りや上を向くと数秒〜1分の回る感じが出る方(BPPVの可能性があります)
強いめまいが数時間〜数日続き吐き気がある方(前庭神経炎や脳の病気の確認が必要です)
くり返すめまい頭痛・光や音がまぶしいなどがある方(前庭性片頭痛の可能性)
立ち上がってすぐふらつく方(起立性低血圧の可能性)

診療の流れ:まずお話と診察で原因を推測します。必要に応じて頭位検査・起立試験・心電図などを追加します。脳の病気が心配な場合はMRIを優先して確認いたします。

目次

【次のようなめまいは救急受診が必要です】

  • 強い回転するめまいが続くうえに、まっすぐ歩けない・ろれつが回らない・物が二重に見える・手足のしびれや力が入りにくいなどがあるとき
  • 片側の急な難聴や耳鳴りめまいを同時に伴うとき
  • 突然の強い頭痛や首の痛みめまいを伴うとき
  • 胸の痛み・息切れ・動悸・気を失いそうなど心臓や呼吸の症状を伴うとき

当てはまる場合は、#7119(救急相談センター)へ相談し、指示に従って救急受診をお願いします。

緊急性の高いめまい(一覧)

緊急性の目安(受診のタイミング)
緊急度 主な病気 どんな症状か ポイント
超緊急 小脳・脳幹の脳梗塞 強い回転感が続き、ふらつき・ろれつ不良・複視・しびれなどを伴います。 CTで写りにくいことがあるため、MRIを優先して確認します。[1][2]
超緊急 首の血管の解離(椎骨動脈解離) 急な首〜後頭部の痛みのあとに、めまいやしびれ、まぶたが下がるなど。 若い方でも起こります。軽い首のひねり・外傷後でも注意が必要です。
超緊急 内耳の血流が悪くなる脳梗塞(前下小脳動脈領域脳梗塞) 突然のめまいに片側の急な難聴・耳鳴りを伴いやすいです。[3] 耳の聞こえの左右差が手がかりになります。
緊急 中耳の感染が内耳へ広がる病気 発熱や耳の痛み・耳だれ、聞こえづらさを伴います。 耳鼻科での治療が必要になることがあります。
緊急 心臓・呼吸が原因のめまい 動悸・胸の痛み・息切れ・気を失いそうになる感じなど。 心電図や血液検査が必要になることがあります。
準緊急 前庭神経炎 数日続く強いめまいと吐き気。耳の聞こえは保たれることが多いです。[4][5] 診察と必要に応じてMRIで脳の病気を除外します。

受診のタイミング:超緊急=すぐ救急/緊急=当日中に専門評価/準緊急=1〜3日以内に受診が目安です。

まとめ:歩けないほどのふらつき・ろれつ不良、急な片側の難聴+めまい、強い頭痛や首の痛みを伴うめまいは救急対応が必要です。

めまいのタイプ

  • 体の向きを変えると数秒〜1分だけ起こる:BPPV(耳の中の小さな石が動く病気)
  • 数時間〜数日ずっと続く(自分で止められない):前庭神経炎 か 脳の病気
  • 分〜数時間の発作をくり返す:前庭性片頭痛 など
  • 立ってすぐふらつく:起立性低血圧(立つと血圧が下がる状態)
まとめ:めまいの続く時間きっかけで原因をしぼり込みます。[6]

めまいの原因

  • 耳のバランスのトラブル(末梢):BPPV、前庭神経炎 など
  • 脳のトラブル(中枢):小脳・脳幹の脳梗塞、出血 など
  • 心臓・血圧のトラブル:起立性低血圧、不整脈 など
  • 体の状態や薬の影響:脱水、貧血、低血糖、睡眠薬や一部の薬の副作用 など
  • その他:目の疲れ・首こり・過換気・不安など

当院では危険な原因の見落とし防止を重視し、必要に応じてMRI・心電図・採血などを選びます。

まとめ:めまいの原因は幅広いため、総合的な評価が大切です。[4]

めまいと吐き気

なぜ吐き気が出るのですか? 耳(前庭)、目、体の感覚からの情報が合わなくなると、自律神経が刺激され吐き気(悪心)が出やすくなります。急に始まった強いめまいではよく起こります。

  • 受診の目安:水分がとれない/意識がもうろうとする/強い頭痛・ろれつ不良・手足の力が入りにくいなどがあるときは早めに医療機関へご相談ください。
  • ご自宅での対処:安静にして体勢を一定にする、少量ずつこまめに水分補給をする、スマホや強い光を避けて休む、しっかり睡眠をとることが役立ちます。
  • お薬について:急性期は短期間(2〜3日以内)に吐き気止め・めまいを和らげる薬を使うことがあります。長く続けると回復が遅れることがあるため、使い方は医師と相談してください。[7]
まとめ:感覚のズレで吐き気が出ます。安静・こまめな水分が基本です。

小脳・脳幹の脳梗塞

どんな病気ですか? 小脳や脳幹に血液が届きにくくなる脳梗塞です。強いめまいが続きふらつき(まっすぐ歩けない)、物が二重に見えるろれつが回らない手足のしびれ・力が入りにくいなどを伴いやすいです。

なぜ注意が必要ですか? この部位の脳梗塞はCTでは初期に写りにくいことがあり、疑う場合はMRIを優先して確認します。[1][2]

診断と治療: 神経学的診察と画像検査(MRI/MRAなど)を行います。発症から短時間なら、専門施設で血栓を溶かす治療カテーテル治療の対象になることがあります。一刻を争う病気のため、救急での評価が重要です。

まとめ:強い持続性のめまいに神経症状を伴うときは脳梗塞を疑いMRI優先で救急評価します。

首の血管のトラブル(椎骨動脈解離)

どんな病気ですか? 首の奥を通る椎骨動脈などの血管の壁に裂け目ができ、血液が入り込む状態(解離)です。血管が狭くなったり、血の塊が飛んで脳梗塞の原因になったりします。

主な症状: 首〜後頭部の急な痛みのあとに、めまいふらつき複視顔のしびれまぶたが下がるなどが出ることがあります。若い方でも起こることがあり、軽い首のひねりやスポーツの後でも注意が必要です。

診断と治療: MRI/MRAやCTの血管検査で評価します。状況に応じてお薬(血をさらさらにする薬など)や、専門施設での血管内治療を検討します。放置すると脳梗塞のリスクがあるため、早めの受診が大切です。

まとめ:首・後頭部の急な痛みの後のめまいは解離の可能性があり、早期受診が重要です。

内耳の血流が悪くなる脳梗塞(AICA領域脳梗塞)

どんな病気ですか? 前下小脳動脈(AICA)という血管の流れが悪くなり、小脳の一部や内耳に影響が出る脳梗塞です。内耳へ向かう細い血管が関係するため、めまいに加えて片側の急な難聴・耳鳴りを伴いやすいのが特徴です。[3]

主な症状: 強い回転性めまい片側の耳鳴り・耳がつまる感じ・難聴ふらつきなど。まれに顔の筋肉が動かしづらいしびれなどが出ることもあります。発症直後は画像で写りにくいことがあるため、症状から疑うことが大切です。

診断と治療: 診察・聴力評価・MRI/MRAなどを組み合わせて判断します。時間帯や重症度によって血栓溶解療法抗血小板薬などを検討します。突然の難聴+めまい脳卒中のサインのことがあるため、早めの受診をお願いいたします。

まとめ:めまい+片側の急な難聴・耳鳴りはAICA領域の脳梗塞のサインの可能性があり、脳卒中対応が必要です。

BPPV(良性発作性頭位めまい)

寝返り・上を向く・下を向くなど体の向きを変えたときに、数秒〜1分の回る感じが出ます。Dix‑Hallpike検査(ベッドで頭の向きを変えて目の動きを見る検査)で確認します。
治療は一般的に耳石を元の場所に戻す体操(整位法)が第一選択です。[8][9] 当院では整位の手技は行っていませんが、必要な方には連携施設をご案内いたします。

診断 Dix‑Hallpike(後半規管)/仰向けで頭を左右に回す検査(水平半規管)で、めまいと目の動きが再現されるかを確認します。[9]
再発 再発することがあります。症状が戻ったときは無理をせず、再度ご相談ください。
まとめ:体の向きで起こる短時間の回転性めまいが特徴で、簡単な検査で診断できます。

前庭神経炎(急性前庭症候群)

耳と脳をつなぐ前庭神経が炎症を起こす病気です。数日続く強いめまい・吐き気・歩くとふらつくなどが出ます。耳の聞こえは保たれることが多いです。必要に応じてMRIで脳の病気を除外します。[5]

急性期 短期間(2〜3日以内)の吐き気止め・めまいを和らげる薬を検討します。[7][10]
回復を早める工夫 症状が落ち着いてきたら、医師の指示のもとで前庭リハビリ(目・頭・体をゆっくり動かす練習)が役立つことがあります。[11]
画像検査 診察で脳の病気が心配な場合はMRIを行います。[5]
まとめ:数日続くめまいで聞こえは保たれやすく、必要に応じてMRIで確認します。

前庭性片頭痛(Vestibular Migraine)

分〜数時間のめまい発作が片頭痛の症状(頭痛、光や音に敏感、きらきらした光が見える など)と時間的に重なって起こる病気です。片頭痛の持病がある方に多くみられます。[12][13]

診断の目安

  1. 片頭痛の既往がある、または片頭痛の特徴と一緒に中等度以上のめまい発作くり返し起こること
  2. 他の病気では説明しにくいこと

治療は片頭痛の予防薬(β遮断薬・カルシウム拮抗薬・抗てんかん薬など)と生活調整(睡眠・食事・ストレス対策)が基本です。[14]

まとめ:めまいが片頭痛の症状と一緒に起こる場合、予防薬+生活調整が有効です。

起立性低血圧

横になった状態から立って3分以内に、血圧が大きく下がってふらつく状態です。脱水・薬の影響・自律神経の病気などが原因になります。[15]

  • まずは生活の工夫:こまめな水分・適切な塩分、弾性ストッキング、寝るときに頭側を少し高くする、ゆっくり立ち上がる練習など[15]
  • お薬:必要に応じてミドドリン/ドロキシドパ/フルドロコルチゾンなどを検討します(医師と相談してください)。[16]
まとめ:立ってすぐの血圧低下が原因です。補水・弾性ストッキング・ゆっくり立つが基本です。

めまいの検査方法(必要に応じて行います)

検査 何が分かるか 行うタイミング
診察・目の動きの観察 耳のトラブルか脳のトラブルかを見分ける手がかりになります。 急に始まって続くめまいでは最優先で行います。[17]
Dix‑Hallpike/ロール検査 BPPV(体の向きで起こるめまい)の確認に役立ちます。 体位で誘発される短時間の回転性めまいのときに行います。[9]
聴力検査(耳鼻科) 突発性難聴や内耳の血流の問題との区別に役立ちます。 必要に応じて耳鼻科をご案内します。[18]
起立試験(血圧) 起立性低血圧かどうかを確認します。 立ち上がり直後のふらつき・気を失いそうになる場合に行います。[15]
MRI/MRA 小脳・脳幹などの脳の異常を確認します。CTで写りにくい病気の確認に有用です。 脳の病気が疑われるときに行います。[1]
まとめ:診察と目の観察が基本で、必要に応じてMRI・聴力・起立試験を追加します。

当院でできること

  • 神経学的診察・頭位検査にもとづく初期評価(耳の病気か脳の病気かの見きわめ)
  • MRI/MRA・採血・心電図などの適切な選択
  • 前庭性片頭痛・起立性低血圧などの内科的管理
  • 耳鼻科での処置や高度な前庭検査が必要な場合は連携施設へ紹介
まとめ:危険な原因を見逃さないようにしつつ、必要なときは耳鼻科と速やかに連携いたします。

【めまい】よくあるご質問(FAQ)

A. 受診判断・救急

救急受診したほうが良いのはどんなときですか?

直ちに救急対応:強いめまいが続いて体がふらつく・複視・ろれつ不良・片側のしびれや力が入りにくいなどがあるとき、片側の急な難聴+めまいがあるとき、強い頭痛・首の痛みを伴うときです。[5]

CTよりMRIが良いのですか?

小脳・脳幹の初期の脳梗塞はCTで写りにくいことがあり、疑う場合はMRIでの確認を優先します。[1][2]

前庭性片頭痛は頭痛の治療と同じですか?

基本は片頭痛の予防薬生活調整です。発作時の対処は症状や体質に合わせて医師と相談して決めます。[14]

▶ 片頭痛(頭痛)のページを見る

起立性低血圧のセルフケアは何がありますか?

水分と塩分を適切にとる弾性ストッキング、寝るときに頭側を少し高くする、ゆっくり立ち上がる練習などが基本です。改善が不十分な場合はお薬を検討します。[15][16]

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この記事の監修者

院長 大﨑 雅央(Masao Osaki)

吉祥寺おおさき内科・脳神経内科
日本神経学会 神経内科専門医/日本内科学会 総合内科専門医

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参考文献

参考資料を開く/閉じる
  1. Hwang DY, et al. Comparative Sensitivity of Computed Tomography vs. MRI for Detecting Acute Posterior Fossa Infarct. Ann Emerg Med. 2012. PubMed
  2. Chalela JA, et al. MRI vs CT for detection of acute stroke. Lancet. 2007;369:293–298. PubMed
  3. Lee H, et al. Sudden Deafness and Vertigo as an early sign of AICA infarction. Stroke. 2009. PubMed
  4. Agarwal K, et al. Acute vertigo: getting the diagnosis right. BMJ. 2022;378:e069850. BMJ
  5. Edlow JA, et al. GRACE‑3: Acute dizziness and vertigo in the emergency department. Acad Emerg Med. 2023;30:442–486. PubMed
  6. Edlow JA, Newman‑Toker DE. A new diagnostic approach to the adult patient with acute dizziness. Ann Emerg Med. 2018. PubMed
  7. Viola P, et al. Pharmacological treatment of Acute Vestibular Syndrome. Life (Basel). 2022;12(10):1521. PMC
  8. Hilton MP, et al. The Epley manoeuvre for posterior canal BPPV. Cochrane Database Syst Rev. 2014;(12):CD003162. PubMed
  9. Bhattacharyya N, et al. AAO‑HNSF Clinical Practice Guideline: BPPV (Update). Otolaryngol Head Neck Surg. 2017;156(3_suppl):S1‑S47. PubMed
  10. Strupp M, et al. Methylprednisolone, Valacyclovir, or the Combination for Vestibular Neuritis. N Engl J Med. 2004;351:354–361. NEJM
  11. Hillier SL, McDonnell M. Vestibular rehabilitation for unilateral peripheral vestibular dysfunction. Cochrane Database Syst Rev. 2015;(1):CD005397. PubMed
  12. Lempert T, et al. Vestibular migraine: Diagnostic criteria (Update). Cephalalgia/J Vestib Res. 2022. PMC
  13. Furman JM, et al. Vestibular migraine: clinical aspects and pathophysiology. Lancet Neurol. 2013;12:706–715. PubMed
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  15. Brignole M, et al. 2018 ESC Guidelines for the diagnosis and management of syncope. Eur Heart J. 2018;39:1883–1948. Eur Heart J
  16. Palma JA, Kaufmann H. Management of orthostatic hypotension. Curr Treat Options Neurol. 2020;22(7):20. PubMed
  17. Kattah JC, et al. HINTS to Diagnose Stroke in the Acute Vestibular Syndrome. Stroke. 2009;40:3504–3510. PubMed
  18. Lopez‑Escamez JA, et al. Diagnostic criteria for Menière’s disease. Journal of Vestibular Research. 2015. PubMed
  19. Staab JP, et al. Diagnostic criteria for Persistent Postural‑Perceptual Dizziness (PPPD). J Vestib Res. 2017;27:191–208. PMC